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決着、シュタイアーマルク防衛戦

 シュタイアーマルクの騎士団は、森林での奇襲を成功させ、戦いの舞台を平野へと移していた。


「おい、ナタニエル!さっきの火柱はなんだ!?」


 敵味方が入り乱れる中、ブルノはその体型から想像できないほど俊敏に動き、敵のアルムシュヴァリエの攻撃を縫うように回避しつつ、敵の懐に入り込み翻弄する。


「わからん!今は目の前の敵に集中しろ!!」


 ナタニエルは向かい合う騎士を斬り伏せ、身を翻し振り向きざまにもう1人の敵の首を落とす。

 天才肌のナタニエルは戦闘の技量も高く、士官学校時代にも現役の騎士を何度も打ち負かしており、戦闘面においてもその才能を発揮する。


「ブルノ、道具の残数は?」


 敵の1人が剣を振り上げるが、踏み込んだナタニエルにその両手を武器ごと切り落とされる。


「補給分も使い切った、あとは手持ちでやっていくしかねぇ、そっちは?」


 ブルノはアルムシュヴァリエの攻撃を回避しつつ、機体の背後へと駆け上がると、騎乗口の隙間にショートソードを差し込み中をこじ開けると、爆薬を放り込むと同時に飛び降りる。


「こっちも魔法は使えてあと数回ってとこですかね」


 水の精霊ウンディーネの加護をもつナタニエルは、味方と交戦中のアルムシュヴァリエを、死角からウォーターカッターの魔法を放って水圧で真っ二つに斬り裂く。


「どうする?街に様子を見に行った連中も戻らん、俺としてはそっちも気になる」


 アルムシュヴァリエから飛び降りたブルノは、近くにいた居た敵兵にナイフを投擲し、頭部を突き刺す。


「私が敵をひきつける、その隙に貴方は街へと戻り、マリアンヌ様を回収してオスマルクに逃げてください」


 背中合わせになった2人は魔法で敵を牽制する。


「すまん」


 他に案もなく、ブルノはナタニエルの提案に乗る。


「今から魔法を使い道を開けます、その隙に」


 ブルノが無言で頷くと、ナタニエルは魔法を使うために魔力を集中させる。


「ナタニエル様!ブルノさん!北の方向から味方です!!」


 しかし、1人の兵士の声がその行動を制止する。


「「なにっ!?」」


 北の方角から向かってくるる騎士達の先頭を走る者を見て、その場にいるシュタイアーマルクの者達が安堵する。

 先頭を走る騎士は、背中に背負った2本のロングソードを引き抜き、あっという間に3体のアルムシュヴァリエを達磨にする。


「どこだブルノ!もうくたばったか!?」


 戦友の派手な登場にブルノは口角を上げる。


「ハッ!もう老眼かフェリクス!俺ならピンピンしてるぞ!!」


 ブルノはナイフを投擲し、フェリクスの横を掠めて後ろの敵兵の喉に突き刺さる。


「おい、今のちょっと髪の毛剃ったぞ!」


 戦場に乱入したフェリクスは、向かってくる敵を片っ端から屠る。


「悪いな、一瞬敵かと思って手元が狂った!」


 ブルノは悪びれる様子もなくフェリクスに謝る。


「そっちが老眼じゃねぇか!」


 戦場でくだらない言い合いをする2人の後ろから、更に1人の老人が加勢する。


「それだけ元気ならまだまだいけそうだなブルノ、それと、ナタニエルよく耐えたな」


 シュタイアーマルクの主の帰還に、その場にいた皆の顔が一瞬だが緩む。

 だが、先程までふざけていたブルノが再び険しい顔になる。


「じじい、街で何か起こった、そっちにも兵を送ってくれ」


 レオポルドはツーハンデッドソードに炎を纏い、敵のアルムシュヴァリエを両断する。


「大丈夫だ、ギュスターブ殿下より借り受けた兵の半分は既に街に向かってる」


 その言葉にブルノとナタニエルは胸をなでおろす。


「おい、なんだアレは!!」


 どちらの兵が先に叫んだか、1人の兵士が空を指差す。

 その声に幾人かが反応して上空を見上げるよりも早く、炎の塊が空中を爆発しながら戦場に落ちてくる。

 炎の塊は着地と同時にアルムシュヴァリエを貫き爆散し、爆風と共に炎が渦巻く。


 ーーーゴクッ


 突如として戦場の中心に舞い立つ見知らぬ美女に、敵も味方も生唾を飲み込む。


「アンスバッハよ!今すぐこの地より去りなさい!」


 あまりの非現実的な状況とその美しさに戦闘が途切れるが、1人の声がそれを遮る。


「断る!」


 指揮官機と思わしきアルムシュヴァリエが、戦場の後方に陣取ったアンスバッハの陣営から現れる。


「貴方が指揮官かしら?」


 現れた美女は指揮官の方に視線を向ける。


「いかにも、私はアンスバッハ王国の西方侵攻軍の指揮官であるブライアン・ボヌールである」


 アンスバッハで伯爵の位につくボヌールは、30代と脂の乗った年齢でこの軍の指揮を託されていた。


「そう....ならば力づくでも排除させてもらうわ」


 美女は手に持ったハルバードをボヌール卿に向ける。


「いいだろう.....ところで美しいお嬢さん、貴女の名前を伺っても?」


 ボヌールは余裕を見せ、相手のペースを崩す。


「あら?戦場で女性を口説くとは随分余裕なのね」


 美女はふざけるなと微笑みを返す。


「たとえ戦場であっても、貴女のような美しい人に名前を聞かぬのは騎士の恥というものでしょう」


 ボヌール卿は、器用にもアルムシュヴァリエの腕を胸元におく貴族の礼を示す。


「.....いいわ、私はシュタイアーマルク領主代行マリアンヌ!実力をもって貴方達を排除させていただきます!!」


 この言葉に、レオポルド達4人は目を見開き動揺する。


「おい!ブルノ!!あれはなんだ!どういうことだ!!」


 フェリクスが声を荒げる。


「知るか、俺が知るわけねえだろ!!」


 怒鳴り返すブルノの隣から、ナタニエルが口を挟む。


「あの人がマリアンヌ様かどうかはおいといて、敵ではないようですし今は戦に集中しましょう、レオポルド様も今はいいですね?」


 ハッと我に帰ったレオポルドが頷く。


「あぁ、そうだな、詳しい話は後だ、まずは目の前の敵に集中するぞ!」


 4人は武器を持つ手に力を入れ、再度意識を戦いへと集中させた。







 戦闘が再開され周囲を敵に囲まれる。

 私は、ハルバードの持ち手の長さを伸ばし、斧の部分を巨大な鎌へと変化させ炎を纏わせる。

 敵の魔法を空中移動で回避すると、同時にその巨大な鎌で周囲のアルムシュヴァリエの頭部を立て続けに刈り取る。

 着地と同時に振り回した鎌を遠心力で放り投げると、回転した大鎌は地面をえぐりながら敵を蹂躙する。


「武器を手放した!今がチャンスだ!!」


 その言葉に敵の数人が反応するが、即座に周囲に氷の刃を展開させて迫り来る敵を1人残らず突き刺す。

 その間に右手を横にかざし、投げたハルバードを手元に呼び戻す。

 再び炎を纏わせ投擲し、直線上にいた数体のアルムシュヴァリエを貫通させて無力化させる。


「それ以上、貴女の好きにはさせませんぞ」


 私の上空より巨大な石が降り注ぐ。

 後ろに跳躍しそれを回避すると同時に、再び右手にハルバードを呼び戻す。


「ボヌール卿、指揮官である貴方の首、取らせていただきます」


 私はハルバードの持ち手を短くして、ショートアックスのような形状に変化させる。


「できれば貴女とは戦場ではなく舞踏会で出会いたかったものだ」


 ボヌール卿はアルムシュヴァリエの持つ剣に魔力を込めると、シンプルに上から振り下ろした。

 私は、振り下ろされた剣をショートアックスで叩き折ると、武器を戦斧に変化させてその場で跳躍してボヌール卿が騎乗するアルムシュヴァリエ上から真っ二つに分断する。


「シュタイアーマルクが領主代行マリアンヌ!アンスバッハ王国、西方侵攻軍が指揮官ブライアン・ボヌール卿ここに討ち取ったり!!」


 私は勝鬨を上げると同時に、周囲に4本の炎の柱を立ち上らせて、圧倒的な力量差を敵に見せつける。

 それを見て、大半は膝をつき両手をあげて降伏を体現するものと、逃げ出すものにわかれる。

 数人は抵抗をみせるも味方の騎士達によって制圧されていく。


 私が覚えているのはここまでだ。


 私の魔力は枯渇し、その場で意識を手放した。

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