第9部
再び族長の家の前で、族長とであった。
「我々の協議の結果を発表する。我々の協議の結果は…」
船長はこれまでなかったような緊張に襲われていた。
「結果は、「同盟を結ぶ」という結果になった」
「ありがとうございます。どのように結べば良いのでしょうか?」
船長が族長に尋ねると、族長は、
「この紋章を船の一番目立つところにつけなさい」
といい、ひとつの金属製と思われる板を持ってきた。重さはちょうど1?ぐらいであり、正三角形のちょうど重心点に小さな点が書かれているような感じの紋章だった。
「これは、何の紋章ですか?」
「これは我々の紋章だ。この正三角形は、銀河文明の3種族を示しており、重心点にある点は、我々を示しておる。この紋章をつけている限り、全種族から攻撃を受けることはないだろう」
「なぜ、同盟を結ぶことにしたのですか?」
「それは、秘密だ」
それだけ言うと、族長は家の中へ入っていった。
「入ってしまった」
「銀河文明の種族は、みんなこんな風なのかな?」
「う〜ん。まだ2種族しか会っていないから分からないけれども、そうかもしれないね」
兄妹は、船に戻り、この紋章を船首の所に着けた。
「これでいいんだろうな」
「多分」
船は出発した。
その後この船は、縮空間のLv.10まで、到達した。
「一応ここまで来ましたよ。どうするのですか船長」
そう言って、シアトスが船長席を振り向くと、スタディンは、安らかな寝息を立てて寝ていた。
(やっぱり、子供だね)
シアトスは考えて、毛布を掛けた。
(空を飛んでいる?)
スタディンは夢の中で考えていた。
(でもありえない。空を飛んでいるなんて)
ふと、下を見ると、地面が見えた。どこまでも広がる草原。
(どこかで見たことがあるな…どこだっけ?まあ、いいや。いずれ下に降りられるだろう)
下では何かの行進があった。2列になって、どこからか現れて、どこかへ消えてゆくのだった。
(彼らは何をしているのだろうか?)
スタディンは子供特有の好奇心で彼らのことが知りたくなった。すっと、彼の体が重くなった。そして速度を上げながら地面へ向かって落ち始めた。
(わ!どうしたんだろう?急に落ち始めた)
その時、彼らはスタディンに気づいた。しきりにこちらを見上げている。スタディンは、自分のこととは思わないで、自分の体を半回転させて、上を見上げた。太陽がゆっくりと遠ざかってゆく。地面がすばやく近づいてくる。彼らはスタディンが地面に激突するのを防ぐために、あわてて、何かを作り始めた。それは次第に大きさを増し始めて、ついには、半径1km位のトランポリンになった。
(あそこに落ちろと言うことだな。よし!)
スタディンは気合をいれて、そこに行こうとした。しかし、速い速度で、進んでいる上に、なかなか変わらないのであった。そこでスタディンは思い出した。
(これは夢なんだ。夢ならばその人は何でも思い通りになるといっていた)
スタディンは、勢いよい自分の体を急に止めるように強く念じてみた。すると、反動が激しかったが、体は止まった。
(よし、体は止まった。次はあのトランポリンみたいなところへ行くだけだ)
そして、スタディンは、トランポリンの上に行くように体を動かそうとした。無事に動いて、とまった。
(あとは、野となれ山となれ!)
そう考えて、トランポリンの上に無事に着地した。
(無事に着地できた〜。よかった〜)
安堵したのもつかの間、彼らが尋ねた。
「あなたは、イフニ・スタディンですね」
「はい。そうですけれど?」
何故自分の名前を知っているか分からないが、とりあえず正直に答えておこうと思った。
「あなたを長い間待っていました。我々の行く先にいらっしゃるお方とぜひ会ってください」
急な要望だった。
「いいですよ。ただし、私が会うお方はどなたなのでしょうか?よければ多少お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
と、スタディンが訊くと、相手は、
「確かにあなたは会ったことがないですね。我々が今からお伺いさせていただきますのは、「夢の王」です。夢の王は、この宇宙中のすべての夢をつかさどっておられ、すべての生命がお世話になっていながら、我々の前には数回だけしか現れないと言うお方です」
「夢の王ですって?ならばここはやはり夢の中だったのですか?」
「そうです。基本的には、この世界の者達以外はお会いになられませんが、今回は、我々が見つかってしまったので、特別にお会いしてもよいとのことです」
スタディンは、これから会うお方がここの国王であり、自分の夢の中にそのお方が出ることはとても名誉なことだと思った。
「後どれくらいで着きますか?」
「あと、1〜2分ぐらいで見えてきますよ」
そう言って相手は黙々と歩き始めた。すると、地平線から、ゆっくりと、塔のような物が現れた。それは次第に大きくなってゆき、ついには、ニューヨークの摩天楼のような町が現れた。しかし、その中でも最も目立つ建物が、その町の中の真ん中にあった。
「着きましたよ。ここがわれらの王である夢の王の城です」
目の前に広がるのは、純白のシルクのようなやわらかい質感の壁に、整った窓が、一列にそろっているとても大きな城であった。この城は、10階はあり、横幅は端が霞んでしまうほど長かった。
「ここですか?」
「そうです。ここです」
それだけ言うと、彼は中へ入っていった。スタディンは、遅れてはいけないと思い、入っていった。
なかには、見たこともない量の金や銀がふんだんに使われており、今まで見てきたものがごみ同然に思えてくるような感じだった。
「こちらです」
彼に案内されるままに、スタディンはついていった。
「そういえば、あなた方の正式な種族の名前はなんと言うのですか?」
相手は口をつぐんだまま話そうとしない。不意にこちらを向いたと思うと、
「夢の国の住民です」
とだけ言って、案内を続けた。
(恐らく王に会えば教えてくれるだろう)
そんな風に考えていたスタディンだった。