第86部
第30章 最後に残った物は
目を覚ますと、神の社に行く翌日の朝だった。
「あ、戻ってきたんだ…」
そして、いつものように始まる世界。結局、最後まで、残ったのは、人としての気持ちだった。
「ただいま〜」
「お帰り!おじいちゃん!」
家の玄関を入ってきたとたんに、孫に体当たりされた。
「ハハハ。元気だな。元気な事はいい事だ」
スタディンはうなずきながら家の中に入った。そして、一家団欒の時間を楽しんだ。
さらに、数年の時が流れた。スタディンは、死の淵に立っていた。
「そうか…もうすぐ自分は死ぬ…おそらく、妹も同時だろう」
「おじいちゃん、死なないで!」
「それは無理だな…人は必ず死ぬものだ。そして、再び生き返る。長い輪廻の輪の中で、必ずや、再び会えるだろう…」
その時、病室の扉が開き、誰かが入ってきた。
「スタディン…神の世界に行くんだな?」
「ああ、もしかしたら、神になるかも知れない。あの中で一番魔力が高かった、自分だからな」
「クシャトルは…?」
「ああ、クシャトルも、もうすぐらしい」
「そうか…」
そして、新暦421年4月6日午後6時31分。スタディンとクシャトルは同時に息を引き取った。
第31章 神としての生きる道
死んだ後、スタディンとクシャトルは神の社にいた。
「あの…自分達に、何の用なんでしょうか?」
"きわめて単純な事。御主らに神になってもらいたい"
「神、ですか」
"そうだ"
[我々で、エネルギー支配をするには少し危うい部分が出てきた。なにせ、エネルギー流出をしてしまった。元々あり、分離していた場所に]
`その空間とこちらの空間は、合わさってはいけない`
{神として、永遠の命を与えられ、エネルギーの全てを支配するか、それとも、一般人として、我が体に魂を浄化してもらうか}
'2つにひとつ。どちらを選ぶ?'
「自分は、神になりたいです。そして、願わくば我が妹と共に」
「え?私も?神に…」
クシャトルは、決意を固めたようだ。
「はい。私も、お兄ちゃんと一緒に神になります」
"良くぞ言った。では、おぬし達に、少し寝てもらう……"
そして、スタディン達は、瞬間的に眠りに落ちた
起きたのは、体が若返っているのを感じてからだった。
「…あれ?体が軽い」
「動きやすいし、もしかして、もう神になっちゃったのかな?」
"その通りだ。おぬし達には最初の課題を与える。第8宇宙空間と言うところがある。そこは、元々、こちら側からエネルギーのあふれた分がそのままいっていた場所。そことこちらを完全に遮断してもらいたい"
「……分かりました。しかし、先輩神のお力も借りれたら、恐らくはうまくいくと思います」
"どうするのだ?"
「魔法の扉を作ります。その扉は、こちら側とあちら側を結ぶ扉で、神々の力により封印します。そして、鍵を作ります。その鍵によってのみ扉が開きます。複数の鍵を作り、同時に発動させる事により、扉を開閉します」
"なるほど。では、その扉はどこに作るのだ?"
「太陽系第3惑星です。そこにつくり、永久に見つからないようにすれば、悪用もされないでしょう。さらに、体をこちらにおくように仕向ける事が出来れば、意識のみであちら側に行く事が出来ます」
"よろしい!すぐに取りかかりなさい"
「分かりました」
鍵は、完全なるフラクスタル図形、つまり、無限に同じ模様が続いていく図形で作られており、純金で作られ、長さは5cmであった。扉は、人が3人ほど横になって出られるような形で、高さは2m30あった。
「これで完成だ。後は、この鍵に魔力を込め、発動条件を決めるだけ…扉にも込めないといけないな」
そして、指令から1週間後、無事に、1対の扉と1対の鍵が出来た。そして、神々が力を込めた宝玉を、第8宇宙空間の大統領や国王に渡し、鍵を、砂漠の町のデズンタという町の誰かに渡す事になった。その役目は、扉が閉められてから、第8宇宙空間にいるスタディンがする事になった。
第32章 鍵守
「うひー、あつー」
砂漠の真ん中、デズンタにいたスタディンは、町を見て驚いた。
「疫病か…じゃあ、誰でもいいや、とりあえず、元気な人…あれ?あの酒場だけ開いてるな」
スタディンが、その酒場に入ると、カウンターにいた女性のみしかいなかった。
「いらっしゃい、珍しいね。今、疫病がはやってて、誰も来ないって言うのに」
スタディンは、カウンターに座り、
「今日来たのは、偶然だ」
と言った。
「そうだ、ブランデーの氷割り、頼むよ」
「ハイハイ」
封を切っていないブランデーを開け、氷が一杯入ったコップに並々と注いだ。
「はい、どうぞ」
「どうもな」
一杯飲み干すと、スタディンは、その人に言った。
「なあ、自分が、神様だと言っても、信じるか?」
「あなたが、神様だって?」
「そうだ」
彼女は、しばし考えてから言った。
「今なら、信じるかもしれないわね。なにせ、この疫病の中で、あなたと私だけが、生きていられるもの。神様のおかげだって、そう考えていたぐらいよ」
「なら、話は早い、実は少し頼みたい事がある」
「なに?自称神様」
「自称じゃない、本当の神だ。頼みたい事はな、この鍵を持っていてもらいたい」
「この、鍵?」
「そうだ。この鍵は、特別な鍵でな、必ず、死なずにずっと、どんな事があったとしても手放さないような人がいいんだ。そして、扉のそばの町の人が」
「ちょっとまってよ、扉って何?この鍵って、一体なんなのよ」
「頼まれてくれ。金なら、あるから」
「金の問題じゃ…まあいいわ。引き受けてあげましょう」
「本当か?」
「でも、お願いがあるんだけど」
「何でもどうぞ」
「この町の疫病をなおして、それと、私に子供を産まして」
「ああ、いいとも。じゃあ」
店から出る直前、スタディンは彼女に聞いた。
「最後になったが、君の名前は?」
「私の名前?私の名前はね、カンドール・フィラよ」
そして、スタディンは、宝玉の中に戻った。
世界は、これで安定を誇っていた。いずれ崩壊するかもしれなかったが、今の所、見た目は安定していた。
ようやく終わった…
現在、この作品の続編を執筆中です。
そのときは、またお願いします。