第8部
「ここは、危険な場所なんだろう?」
「そう書いてありましたね…でも…」
言いかけてやめるパリ。
「ここはそんなに危険じゃなさそう。て、言いんたいんだろう?」
「はい」
「われわれは今は彼らと違う肉体構造を持っている。もしかしたらすごいことになるかもしれない」
「どういうことですか?」
「われわれは今、タキオン粒子になっている」
スタディンは、族長の家に、案内されながら話した。
「タキオン粒子は、光よりも早く動くはずだろう。ということは、我々は今光よりも早く動いているということになる」
「それがどうしたのですか?銀河大辞典にそう書いてありましたが…」
「もしかしたら我々は、時間を旅するかもしれない。しかも過去に向かって」
「そんなことは、出来ないはずですよ」
「もしもの話だ。でも、この話があたっていたならば…。どうなると思う?」
「過去に戻って、私たちが歴史を書きかえれる」
そこではっとしたようになり、
「船長それでは…」
ここで話しは打ち切られた。族長の家に着いたのだ。
族長の家は、江戸時代の武家屋敷みたいな家だった。ただし、大きさが、腰ぐらいまでしかなく、中へ入れなかった。
「ここでしばらく待て」
3分ぐらい待つと、中から、銀色に輝く猫が出てきた。どうやら族長のようなのだが、見たこともない姿だった。
「私が、族長の、アック182世である」
足元で高い声で話し始めた。
「私たちと同盟関係になりたいと申しておるようだな」
「そうです。私たちはあなたたちと同盟を結び、この縮空間上を自由に飛びたいのです。よろしいでしょうか?」
「いいのだが、ひとつ条件がある」
「どのような条件でしょうか?」
「そなたたちと同じような船を35年ぐらい前に見かけたのだが、その船はどういう船なのか。教えてくれ」
「あの船は、我々の先遣隊だったのです。しかし、その船に関する記述が私たちのところになかったので、探しに来たのです」
「そういうことだったのか…」
うんうん、とうなずいて、再び中へ入っていった。
「ではこれから同盟関係を結ぶか協議する。協議する間、船の方に戻っておきたまえ。協議が終了しだい、船長と副船長を呼ぶ。そしたら再びここに戻りたまえ」
それだけ言うと、あちこちから猫がこの家に集まってきた。
「船に戻りましょう」
「そうだな」
船に戻るとすぐに船長は会議を招集し、今後の対応を話した。
「もしもこの、同盟が成立しなければ、我々はどうするべきかな?」
船長が問題提起をした。すると、コミワギが手を挙げた。
「即座に逃げるべきだと思います」
「それも確かにひとつの選択肢だが、どこに逃げる?彼らの方が良く知っているのだから、逃げてもしょうがないと思うが?」
「では、戦うのですか?」
「それも確かに選択肢だ。しかし我々には、戦闘は似合わないと思う」
「ではどうしろと言うのですか」
「「マタタビ」を使う」
「マタタビ?何ですかそれは?」
「昔のヒトが猫を手なずける時に使用した薬品の名称だ。彼らも猫だから、使えると踏んでいる」
「良く分かりましたが、どんな薬品なんですか?危険はなさそうですが…」
「ヒトで言うお酒に当たるものだな。ヒトがお酒を飲むのと同じような効果が得られると聞いている」
「ではそれでいきましょう」
「では解散」
誰もいなくなった船長室で一人考え込んでいる、
(自分はどうなったんだ?不思議な夢を見るようになった。しかもこの世界にはいってから意識を失うようにもなった。これは元の世界に戻れば直るのか?それにほかのヒトにはおきないのか?何故自分のみに起こるのか?この空間はなぞが多い。そもそもこの空間自体がなぞではないか。何故このような空間であのような種族が住める?ここは危険だというのに…何故?)
そこで船内放送が響いた。
「協議が終わったようです」
どう結果が出たか分からないが、すでに、賽は振られてしまったのだ。がんばるしかない。