表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/86

第73部

さらに、1年間が過ぎた。アジア大陸は、残り旧日本国領と、インドネシア周辺の島国のみとなった。だが、アメリカ大陸からは、完全に枢軸国側は撤退していた。

"そして、私達は長官と会合を開いたの"

「枢軸国側はアジア大陸全域を手中に抑えようとしているようだ。しかし、旧日本国の辺りは当面大丈夫だろう」

「何故です、長官」

「なぜならば、ここ最近激しさを増している台風の季節に突入しているからだ。完全に駐留は不可能だろう。今現在、連邦軍第12歩兵師団と第25航空団を旧自衛隊の基地を借りておいている。しかし彼らには自給自足の生活を余儀なくさせている。ただ、羽田空港を経由させてリニアモーターカーを使い、その基地まで届けているのが現状だ。そして君達の船を元にして、特殊兵団を作り上げた。それを全て指示して欲しい。いいな」

「分かりました、長官。御期待に添えるように、全力を尽くします」

"私達は戦場へと足を運ぶ事になったんだけど、派遣場所へ到着するとすぐに戦闘が始まっちゃったんだけど…"

「どうした?」

「もっとすごいのが来る…ううん、正確じゃないね。相手も同じような戦艦を作ったようだね。いま、こっちに向かっている…」

少し放心状態になりながらも過去のステーニュは言った。

「総員第1種戦闘配置、引き続き保て!ベル、そのような船体情報及び本船の被害状況を」

「現在、当該作戦区域より300km本船より東北方向に、証言と一致する未確認船発見、本船の被害状況は、皆無です」

「了解した。本船はこれより本作戦区域外に出る。そして、証言され発見した船を確認する。これより、証言され発見した船を、目標船、我々の船を本船とし、当局より指示された区域を作戦区域、当局より指示されていず目標船が存在する区域を目標区域、それ以外の区域を区域外とする。これより本船は、目標区域に向かい、目標船との戦闘をする。ベル、当局へ最優先通信、

発信:連邦宇宙軍特別部隊総指揮官、

送信:連邦宇宙軍長官、

本文:これより、本船は以下の事を許可されたい。

 作戦区域外においての軍事的行動、

 目標船の発見に関し撃墜若しくは拿捕、

 現部隊の本船のみの行動。

よろしく」

「了解しました。………送信完了」

数分後、長官からの返事が帰ってきた。

「長官より入電。

発信:連邦宇宙軍長官、

送信:連邦宇宙軍特別部隊総司令官、

本文:発信された内容の全てを許可する。

以上です」

「よろしい。これより本船は、部隊と別行動を取り、目標船を拿捕を目的とする行動を取る。なお、本船以外の部隊を編成する船については、作戦区域内での行動とし、本船が作戦区域内に進入せし時は、集結するものとする。以上を特殊部隊全船に送信」

「了解…………送信完了、目標船に向かい発進します」

"そして、この船はその船に向かって進んでいったの。この戦いは後々枢軸国側壊滅の一里塚を築く事になった戦いになるの。でも、このときはそんなに重要な船とは思わず、相手もたくさんこれと同じやつを作っていて、そのうちの一隻を出しているのだろうって考えていたの"


「目標船を発見しました」

「よろしい。本船はこれより、船籍確認後、枢軸国の物と疑われる場所があれば、即刻攻撃を出す」

言い終わった直後、

「目標船、こちらに対して信号を出しています。通信を受信しました。チャンネル開きます」

メインスクリーンに相手の船長の顔が出てくる。

「おやおやこれは、敵方の船のようだね」

「そちらからみればね。あんたは誰だ」

「おお、名乗りが遅れたな。私は、枢軸国第7特別軍作戦執行官兼第3師団団長、勘杯粋麓だ。そっちは誰だ」

「私は、連合国軍第3師団空軍特別部隊部隊長、イフニ・スタディンだ」

名前を言い会っている中でも、着実に戦闘態勢を整えていっていた。

「よろしい。では、我々は敵同士らしいな」

「どうやら。こういう状況でなければ、もっと変っていたかもしれないが」

「そうだといいんだがな」

「交信終了」

完全に途絶えるのを待ってから、

「戦闘準備、防御全開、バリアゾーン最小区域にて展開、全兵器装填準備、戦闘開始!」

言うが早いか、敵からの第一波がバリアに降りかかる。

「こちらの被害は皆無です」

"被害報告はずっと、ベルという名前の、AIがしていたわね"

「よろしい。では、バリア、兵器発射につき、0.3秒開放、一斉射撃をかける。全兵器装填」

「了解、バリア解除準備、全兵器装填確認終了、バリア解除、3秒前、2、1、0!」

ほんの一瞬だけ、攻撃するために、開放した瞬間、激しい振動がこの船を襲った。

「こちらの被害は、30階第8ブロック周辺の外壁に亀裂、主用部位の被害は皆無です」

「了解した。亀裂の自動修復開始、バリアは?」

「なんともありません」

「全兵器再装填準備。敵艦の被害は?」

「現在、下部に甚大なる被害あり、ただし死傷者は不明。現在双方のAIにおいて、被害の情報交換中」

「情報交換緊急停止、誰だよそんなプログラム入れたのは、あとで、憶えとけよ」

"誰もが集中しているような状況で、独り言を良く言っていたわね"

「全兵器再装填準備完了、敵方の第2波来ます」

かすかな振動を感じたが、それきりだった。

「再装填開始、バリア開放準備開始。ベル、全ての兵器を、相手のバリア発生装置と、エンジン部分に当てる事は可能か?」

「計算中………可能です。ただし、直撃率0.3%」

「それだけあれば十分だ」

「バリア開放準備終了」

「兵器発射につき再開放。最小単位にて、バリア開放」

「了解、0.04秒間のバリア開放準備開始、3秒前、2、1、0!」

再び激しい振動に駆られた。

「現在被害、30階全域に対し避難警報、外壁亀裂増大。これ以上の兵器発射は、困難と思われます」

「30階全域に対し、亀裂の自動修復開始、バリア分のエネルギーを除く全エネルギーを投入したら、どれだけの時間がかかる?」

「約3分ほど」

「ではしてくれ。それと敵艦の被害は?」

「エンジン部に対し甚大なる被害。バリア発生装置については、稼動停止。現在敵船航行不能」

「船長、再び敵艦の艦長より入電。チャンネル開きます」

メインスクリーンに、再び艦長の顔が現れた。

「すばらしい戦いだったな。敵ながら天晴れ。私の方にはすでに戦闘意欲は喪失しておる。そちらの方に降伏する。これ以後、私はそちらの保護下に入らせてもらいたい」

「いいですよ。勘杯艦長。こちら側で保護しましょう。さて、これより帰りましょうか」

「そうだ。これからは、また新たなる旅立ちが始まるのだ」

メインスクリーンから、顔が消え特殊なケーブルによって、船同士は連結されて動きはじめた。


「作戦区域に再侵入、味方側に送信します」

「そうしてくれ。さて、あなたは一応保護をしているが、法律に従えばに従えば、あなたは亡命扱いとなる」

「なるほど。確かにそうだな」

「君達は全員亡命を申請するのかい?」

「その通りだ。だからこうして降伏した。こちらの法律だと、降伏者でも即刻銃殺だ」

「分かった。では、この書類の方に、あなたの直筆署名を…」

「ああ。分かったよ」

少し落ち着きがないように見えた。しかし、そんな事ないように、すぐに署名をした。

「これで、いいのか?」

「ああ。大丈夫だ。あめでとう。これで君の船全員の亡命処理が終わった。これで君達は連邦国の一員だ。君達については連邦政府が責任を持ってみる事になっている。出来なければ亡命者に与えられる権利に基づいて、連邦政府自体を訴えればいいだろう。なにかあれば相談に乗るから」

「ああ。何から何まで、すまないな」

「どうって事ないよ。さあ、この事を自分の船の方に言っておかないと」

「そうだった」

照れるように笑い、部屋から出て行った。


"私達は味方の部隊の船と合流して、一時撤退を決めたの。そして、母港に戻って検査をする事になったの"


「いや、それにしてもすごいな君達は君達が拿捕したこの船は、敵の新造船でまだこれしかないそうだ。これは褒章ものだ」

「長官、そんな事はないですよ。私達はできる事をしただけですから」

「長官、アジア大陸/東アジア地域/北地方にて、M9.1の地震発生、被害不明、臨時出動要請が出ています」

「君達、行ってくれるか?」

「御命令とあらば」

「では君達には、本司令部の災害用部隊の方に行ってもらいたい。部隊長ではなく部隊の一員として、これまで培ってきたであろう知識と行動を生かしてきてくれ」

「分かりました。しかしながら、我々の船は現在検査中につき、使用ができませんが」

「ああ、そうだったな。すっかり忘れていた。君達は、第10ドックの「サン・データ」に乗ってもらおう」

「分かりました。全力を尽くしてまいります」

「頼んだ」

"私達は、そのままの格好で、その場所に向かって、そのまま部隊に編入されたの"

「そうか、君達があの有名なイフニ大将殿ですか」

「そうだが、そんなにかしこまる必要はない。なにせ、私達はまだこの年代ではうまれていないんだから」

「しかしながら、2020年の旧日本領における退避作戦。2160年のクーデター騒ぎにおける作戦。そして、今の特殊部隊による敵戦艦の拿捕。どれを取ってもすばらしい功績ばかりじゃないですか」

「大半は偶然性もあるがな。それに、旧日本領の退避作戦には参加していないが…」

「しかしですよ。運も実力の内というじゃないですか。ここにいる大半の人は、貴方にあこがれて入軍したという人達ですからね」

「いや、それを言われても困るな」

「とりあえず部隊長、出発をしないと…」

「ああ、そうだった」

きびすを返し、部隊長は旗船に乗り込んだ。

「ああ、あなた達が乗る船は、あの船です」

「わかった。ありがとう」

「いえいえ。早く乗り込んでくださいね」

それだけいうと、部隊長は船に乗り込んだ。

「私達も行こうか」

「そうだね」

"私達は船の方に歩いていくにつれて、この船が私達の船を元にして作られている事が分かったの"

「っしかし、ま〜。この船、ベルに良く似ているわね」

「っていうか、それをモデルにして作られていると思うよ」

「この船の名前、何だっけ」

「サン・データだったよ。とりあえず、中に入ろう」

「そうだね。ここにいたって、寒いだけだし」

"私達が中に入ると、ますますそっくりだったの"

「しかし、これほどまでの精確さで、良く船を作ったね」

「ただ、多少違う点もあちこちにあるけどね」

「例えば?」

「例えば、この壁。ベルはモルタルに近い材質だったけど、この船は強化プラスチックにガラスに良く似た物質をいれて、それを着色しているね。ほかにも、今入ってきた玄関や、この電球の色、形、明るさ。全部違う」

「という事は、外見と内部構造はまねしたけど、内装については個性を出させたという事?」

「まあ、そういう事だね。とにかくこの船が私達の船になるんだな」

"上の方から、なじみのある声が聞こえてきたの。最初は空耳かと思ったんだけど…"

「その声は、ベル?」

「そうです。長官のご好意により、この船のAIをする事になりました」

「では、元々の、この船のAIはどうしたんだ?」

「私をお呼びでしょうか?」

「男の声か」

「私がこの船の主任AIである「サン」です。彼女とともにこの船のAIとなります。これからもよろしくお願いします」

「ああ、こちらこそよろしく頼むよ。とりあえず、艦橋の方に行こうか。案内をしてくれないか?」

「はい」

"同時に言った瞬間、少し間があったのは今でも分からないけど、きっとAI同士のけんかでもしていたんでしょうね"

「では、私が案内しましょう」

ベルの声が聞こえた。

「艦橋はこの船のちょうど最前部、最上階になります」

「では、そこに行こう」

"なぜか、構造が違っていたの、みんな、同じなのは玄関の場所だけかって言っていたのを憶えているわ"

「ここが、艦橋か」

自動で扉が開く。

「船長、やっぱりあなたでしたか」

「あれ?シアトス、コミワギ、それに他のみんな、どうして、ここに?」

「船が修理中で、何もやる事がなかったときに、ここに配属されたんですよ。それよりも、船長も、ご無事で何よりです」

「いや、あの時は、皆も活躍してくれたからな」

「船長、旗艦より入電。これより出発するそうです」

「では、こちらも動くか。みんな、また新たにこの船で旅立ちだ。気を引き締めて行けよ〜」

「了解!」


"私が、18歳になったとき、再び枢軸国側が動いて、連邦国側との休戦を破棄したの。そして、私達もその戦いに参加する事になったの。当時はまだ災害部隊に所属していたから、そこから戦時用部隊に異動してまた戦争へと駆り出されたの"


「今度はどこに行けばいいんだ?」

"私達は修理が終わって以来、ずっとベルに乗り込んでいたわ"

「ええと、日本の大阪と言う場所になっていますね」

「ああ、あそこか、今まで何度行った事があったな」

「そうですね。しかし今は急ぎましょう。敵国側は散発的とは言え、いまだ強力な軍艦を保有していますから」

「目標地域に向け全速力だ。伊丹にある旧自衛隊の基地が空いているらしいからそこに止まる」

「了解しました」

すぐにそこへ向かって船は動いて行った。


メインスクリーンに、旧自衛隊基地現連邦陸軍兼空軍基地の、隊長から電信が入った。

「何者だ!船籍と名前、軍人コードを述べよ」

「船籍:連邦国、

船長:イフニ・スタディン、

軍人コード:25242555254b/2539」

「確認せよ。………確認完了。先ほどの非を詫びさせて頂きます。どうぞ、お入りください」

"私達は、そのまま基地に入り、現状報告を受けたの"

「現在、枢軸国の敵兵、約1000人が大阪市内の随所に隠れている模様。現在、日本在住の国民、全員に対し、避難命令、全て避難完了しています」

「よろしい。という事はいくら戦場となっても、困る人はいないわけだな」

「そうなりますが、どうなさる気ですか?」

「ここの兵力は?」

「約1万4千人です」

「では、その人員のうち半数の7千人を連れて行きたい。ただし、この人員は練度が非常に高く、都市型ゲリラの訓練を受けているものが好ましい」

「分かりました。用意しましょう。他には何かありますか?」

「あとは、私達の分の防弾チョッキだな。計11人分」

「分かりました。少しお待ちいただけますか?すぐに戻って来ますので」

「分かった」

"彼は、すぐに戻ってきたの。本当にすぐにだったわね"

「おませしました。防弾チョッキ11人分と7千人分のリストです。彼らの指示はこれからは私ではなく、あなた達から直接出してもらいます。そのほうがいいでしょうから」

「分かった。で、彼らはどこにいる?」

「いまは、部屋に戻らせていますが、すぐに召集できます。10分以内でここに来ると思いますよ」

「では、早速してもらいたい。すぐにでも出発したいから」

「了解しました。集合場所まで案内しますので、こちらへどうぞ」

彼はボタンを押し、そして扉から出て行った。

"私達も、彼について行ったの"


「これで、全員ですか」

「そうだ」

"運動場みたいなところで、数十列にわたって整列していたの"

「圧巻だね」

「では、ここでお願いします」

マイクが束ねてあった。

「私は、幕僚長のイフニ・スタディンだ」

"この運動場中に、スタディンの話が響いていったの。でも、わずかながら反響もしていたわね"

「これから、君達は、戦場へと出かける事になる。君達の一人ひとりが重要だ。敵を発見次第、足を狙え。無理ならば肩だ。そして、生きて捕らえて来い。出来るだけだ。作戦名は「GET RETURN」。これより、現在並んでる列を基準として小隊を編成し、4桁番号をランダムに振り分ける。その番号が各小隊の番号となる。そして、その番号を元にして、各地域に振り分けて大阪中に散らばる。もし、敵を捕虜にしたときは、無線機で中央司令部の方に報告をする事。友軍が来るまでその場を動かない事。以上だ。では、小隊を決める。2列一組となり前より6人で1つの小隊を組む。その小隊で隊長・副隊長・補佐官を決め、隊長は前に集合し隊員の名前、副隊長・補佐官の名前を、報告する事。その際に小隊番号を振り分ける事になる。では、はじめ」

"静かだったのがいきなりやかましくなったわね。1分以内には小隊が決まったみたいで、すぐに報告しに来たわね。その時は、0000から9999のどれかの番号が渡されていたわ。それに、無線機は共通の一つしかないし。だけど、その時に、暗号文を渡していたのを今も憶えているわ"

「さて、これより出陣する。私達のうち半分が戦場に出向く事になる。しかし、幕僚長自らが戦場に赴く事なんて、ほとんどないだろうな」

「いいんですか?こんな事で」

「大丈夫だ。私はこれまでその場に運を任せてきている。それで生き抜いて来たんだから。これからも大丈夫だろう」

"私達の中からは、イフニ・クシャトル、エア・アダム、丹国シュアン、丹国ルイ、それと、過去の私と未来の私。この6人が出る事になったの。本当は全員行きたかったんだけどね、協議を重ねるごとにとりあえず半分はここに残るべきだ、という意見になってね。とりあえず、この他の人達は、司令部に残って、無線機とにらめっこしていたらしいわ"

「各隊長に配布した地図に基づいて、各隊、展開してくれ。では、作戦開始」

"現場総司令官のクシャトルが全ての指示を出していたわね。過去と未来の私達は、二人で単独行動する事を認められたの。で、周りを警戒しながら、ずっと話していたわけ。その時向かっていたのが、丹国家族が住んでいた家だったの。偶然だけどね"

「この家の中には?」

「いないようだね」

"何軒もいって、ずっと誰もいなかったの"

「この家に…」

「何か見えた?」

一気に声のトーンを下げる。

「うん。この家に誰かいるね」

ゆっくりと家の中に入っていく。床には何か機械が散らばっていた。

「これには触れないで。何か怪しそうだから」

「うん」

"不思議と、その時は恐怖心がなかったわね。でも、これはどこかで間違えていると言う感じはしていたわ"

奥で、誰かが話をしている声がここまで聞こえる。

「…だから、この家には…」

「いや、…そうじゃなくて…」

「連邦軍だ!武器を捨てて投降しなさい!」

"未来の私が勢いよくその部屋に踏み込んだの。その時私は少し遅れて踏み込んで、相手が銃を構えようとしていたから、何発も撃ったの。そして、硝煙の煙が消えた時…"

「総司令官に報告、敵兵2名と交戦、うち1名死亡、1名重傷、味方側にも肩を撃ち抜かれました」

無線機の向こう側から、声が聞こえる。

「了解した。そこに私達の中から誰か送るから、その場所を教えて」

「おそらく、丹国さんの家かと思います」

「そうか、そこなら分かる。この無線機は切らないように」

「了解」

無線機を、そこらへんに放り出した。偶然機械に当たり、吸い込まれた。

「え?吸い込まれた?」

敵の死体を台所に立てかけながら言った。

「この機械は中に微小ブラックホールが入っていて、それを何か当たったたびに、中へ吸い込まれる構造にしたんだ。ただし、1回当たると、周りから崩壊を起こし、ついには」

ぱっと、白く光り、消えていた。

「消えてしまう。詳しい事は良く分からんが、どうやら何かエネルギーを出しているらしいな」

「詳しいのね」

「まあね。こうして、両足を撃ち抜かれていても、研究していた分野だけはすぐに出てくる」

「あなたが研究していたの?」

「私が開発していて、それを報告したとたんに、転用されて国が全ての権利を奪ってしまったんだ」

「あらまあ、大変ね」

「ああ、大変だった。そして、わざわざここに設置するように指示されたんだからな。まあ、こいつ自身も中のブラックホールが蒸発して、使用不能になるんだがな。いつになるかは未知数だ。この50年以内だと思うがな」

「へえ、さすがね。そういえば、報告して国に持っていかれなかったら、これをどうするつもりだったの?」

「自分の夢はな、この研究を生かしてここからエネルギーを取り出し、それを利用して人類が生きていけるようにするんだ。はは、笑っちゃうよな。向こう側では国に縛られているだけなのにな。君達なら、なんかすぐに話してしまう」

「それはね。ここ最近で、一番安心しているからよ」

「安心している?どういう事だ?」

「それはね…」

「それはお前が、この女性に対して、恋心を抱いているという事だ」

"何時のまに来たのか、びっくりしたわ。スタディンと思う人がいたんだから"

「え?」

「敵兵だからといって、恋をしてはいけないと言う条項はどこにもないが、戦時中はさすがに抑えるべきだろうな。あ〜あ、こんなに汚して。ウィオウスさんや紗希さんにいったら、怒られるぞ」

「そういったって、すでに未来を見てきたんだから」

「とにかく、私をどうするつもりなんだ?」

「どうするといってもな、さて君にはいくつかの選択肢があるが、この国に亡命すると言うのも手だぞ。そうすると、枢軸国側から連邦国側へ国籍が移り、この人と結婚も夢ではない」

「少し考えさせてもらえるか?どこか、別の場所で」

「ああ。いいとも。彼はどうするんだ?」

「彼自身はこれで本望だと思う。なにせ、彼は戦場で死にたいといつも言っていたから」

「そうか、ならば、ここに置いておこう」

"実は、この人は枢軸国側の最重要人物で、この人のおかげで、この戦争に勝てるんだけど、まだこのときは知らなかったの。なにせ、この司令部で亡命申請をして、無事に受理されて、さらに未来の私と結婚するんですもの。そのあと、最初の質問の時にいったんですもの"

「私は、元いた国の国家機密を握っている。君達に話そう。あそこの国では、私が開発した微小ブラックホール爆弾を大量に作り、ばら撒いている。その量はこの国の人間よりも多い。しかし、それを無力化する事も私は開発し、報告していた。その方法は、特殊な水をかける事だ。そうすると、周りの殻を浸透し、中のブラックホールのみを消す事が出来る。ただ、今までのと同じ型だったらの話だがな」

「どんな水なの?」

「それは、水銀とフッ化水素酸によってとけたプラスチック、それと日本式で作られた紙だ。紙の中は特殊な加工をして、その中に水銀とプラスチックを1:3の割合で溶かした物を入れるんだ。そして、機械に向かってそれを破る。すると、殻の中にしみこみ水銀がブラックホールをつなぎとめている金属と融合して、その金属が吸い込まれる。すると、ブラックホールは私には良く分からない作用によって消滅する。そのときのエネルギーをフッ化水素酸とプラスチックで、防護する。周りに破片は飛び散らないし中は無害化される」

「早速実験をして見よう」

"私達は丹国の家にいって、そこに置いてあった全ての機械に対して実験をしたの"

「全て成功ですね。これでこのような機械が出てきたら、対抗できますね」

「そうだな」

「早速量産をしましょう。ところで、このフッ化水素酸とプラスチックの混合液はどうなるのですか?」

「そのまま機械の中に吸い込まれて、永久に外に出てこない。そのまま固化されて振っても押しても中の液は出てこなくなる。ただ、叩き割れば話は別だがね」

「誰もしませんって」

笑い飛ばすみんな。

「そこの遺体はどうしますか?」

前にも聞いた質問。繰り返される言葉。

「彼は、ここで眠らしましょう。誰かが動かすときが来るまで」

「分かりました。では、いきましょう」

"その後、私達はこの戦争に勝利して、再び連邦国へ統一されたの。枢軸国側の大総統は戦争終結した日に、自殺したわ。彼の残された家族は、連邦国の保護下にあったわ"

「もう行くかい?未来になら、自分達も戻るのに」

「ううん。いいの。私だって、夢を追いかけているもの。この時間航行機は私がここに来たとき乗ってきたものと同じようなもの。そのときの事はあまり憶えていないけど、あの時も大丈夫だったから、今度も大丈夫」

「では、イフニ・ステーニュさん。行きますよ」

「はい。お願いします」

"あなた達は、心配そうに見ていたわね。そして再び時間軸を移動したの。今度の場所は2360年。あなた達は生まれる少し前、私はあなた達のお母さんとお父さんの家に来たの。そのときは、まだこの惑星上にいたわ"


「着いた。今度はいつだろう」

家の扉が前にある。扉が開き、中から人が出てくる。

「おい、何事だ。突然振動が伝わってきたが」

他の家も同じような状況だった。

「分かりません。私あの揺れでこけてしまって…」

「救急車を呼びましょうか?」

「いいえ、いいんです。しかし申し訳ありませんが、あなた方の家に泊めてもらえないでしょうか。私、少しイザコザにまきこまれてしまっていて…」

「まあ、とりあえず家に上がりなさい」

「すいません」

"こうして、私はこの家に上がりこんだの。そして、数年後、あなた達が産まれた。そのときは、とても喜んだわね。しかしその後しばらくして、お父さんとお母さんは宇宙ステーションの方に行ってしまった。私はあなた達を世話をしていたんだけど、私にもまた軍の方から出頭命令が出て、あなた達の事を家のAIに任せる事にしたの。そうして、私は三度、連邦軍に行く事になった。今でもいるけど"

「イフニ・ステーニュ出頭しました」

"当時の連邦宇宙軍の、最高幕僚長、今の長官の事ね、という役職にいた、ライズ・ニバルが、私を呼び寄せたのね"

「ああ、君を待っていたんだ。実は、宇宙文明に新たなる物質が見つかったと言う噂が流れているんだ。君は、船を一つ用意するからそれを使い、その物質が何か突き止めて欲しいんだ。この分の手当はちゃんと支給される。以上だ」

「何時から作戦を開始するのですか?」

「今日の12時だ。それまでに本基地第4駐留所にある「アファール」号に乗り込んどいてくれ。では、帰ってもよろしい」

"私は、それに乗るべきかどうか悩んだの。結局乗り込んだんだけど、途中で事故にあって、私だけ緊急脱出できたの。その後の事は…"

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ