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第71部

第13章 そして、これからどうするのか


「それが、この穴なのですね?」

「そうだ。そして…」

「そして、私の兄がここに勤めていた」

うしろには、大統領代行がいた。

「え?どういう事ですか?」

「私の兄は、この研究所で研究していた。今は私がそれを引き継いでいる」

「どのような研究だったのですか?」

「時間移動だ」

「時間、移動」

「ああ、そうだ。そして、その研究をするために私の兄はここにいた。しかし、夢半ばにて、不意の事故とは言え、残念だっただろう。そして、私はこの1年間でその研究を完成させた。その被験者となる人も選んである」

「だれですか?」

「それはこの娘さんだ。名前はあの大将の養子だった事もあるので、イフニ・ステ−ニュという名前だ。そして、彼女は西暦2350年に行く事になっている」

「戻ってくる保障は?」

「まったくない。しかしそれでもいいではないか。科学技術のために、その身を任せるのだ。そして、未来の人々がそれによって幸せになるのだ」

「非常に傲慢で身勝手な意見ですね。彼女自体にはもう話しているのですか」

「ああ。彼女はいま5歳。もう大体の話は分かっているだろう」

「ならばいいのですが…」


翌日、実際に関係者のみで、実験がなされたらしい。スタディンたちは、蚊帳の外だったので、まったく話がなかった。


「よし。実際に出発したようだ」

「さて、無事に行っているかな?」

「さあ。我々にはそれを調べる手段がありません。しかし、それを祈っていますよ」


スタディンたちが実験成功の報告を受けたのは、この宇宙軍基地の近くにある、居酒屋の席の事であった。その時、女性陣は、早々に船に帰り、出発準備をしていた。男性陣は、早々に居酒屋に入り、ドンちゃん騒ぎをしていた。

「そういえばさ〜、あの実験って、成功したらしいな〜」

宇宙軍の少佐の徽章を付けた人が言った。

「は〜?何の実験だ〜」

スタディンが、酔いが入りながらも、その人に言う。

「なんだ。大将殿、知らないんですか〜。ほら、時間移動についての実験っすよ〜」

「何だってー!」

勢いよく椅子から立ち上がる。同時に、テーブルが揺れた。

「どうしたんだ?スタディン」

「彼女は船にいる。思い出した。イフニ・ステーニュは船の中にいたはずだ」

「は?なんでよ。ついさっき、時間をいどう…」

アダムとルイと瑛久郎が立ち上がり、

「これ、勘定だ。釣りは要らん」

「まいど〜。またどうぞ〜」

間延びした声で、この店の店主が言う。4人は、慌てた様子で、店から出て行った。


「あれ?もう帰ってきたの?まだ準備が…」

クシャトルが、いらないものを捨てるための袋を片手に、掃除していた。

「おい、クシャトル。イフニ・ステーニュさんは、どこに行った?」

「え?彼女なら、ベルに聞いた方が早いともうよ」

「イフニ・ステーニュさんは、自室、30-16で休んでおいでです。連れて行きましょうか?」

「ああ、よろしく頼む。ベル」


「すいません。失礼します」

部屋に入ると、ステーニュさんの姿はなかった。代わりに手紙が置いてあった。

「私は長い間、この船で暮らしてきました。これからは、私自身の手によって、未来を切り進めていきたいと思います。こんな私を許してください。愛を込めて。イフニ・ステーニュ」

みんな、言葉を失った。クシャトルが、スリッパの音を立てながら、こちらに来ていた。

「ねえ、みんな、イフニ・ステーニュさんは、まだ近くにいると思うよ」

「どうしてそう思う?」

「だって、ベルの入出員記録を調べてみたら、お兄ちゃん達以外は誰もいなかったもの」

それを聞いて、スタディンは、

「ベル、第1級緊急放送。内容:「イフニ・ステーニュさんは、今すぐ、船長室に来る事」以上」

「了解しました」

彼らは、その放送を聴きながら、船長室へ向かった。


ステーニュさんが来るまで、少しの間、この放送の区分をいまさらながら説明しておこう。この船の場合、まず、大まかに分けて3種類放送がある。まず、第1種放送。つまり緊急放送の事。全てにおいて最優先される。この放送は、全ての乗組員に放送する第1級緊急放送、一部のフロアを除く乗組員に放送する第2級緊急放送、特定の乗組員にのみ放送する第3級緊急放送がある。次は、第2種放送。つまり臨時放送の事。この放送は、先ほどと同じ区分で第1級〜第3級まである。第3種放送は一般放送の事で、これは全乗組員に対する第1級一般放送しかない。


スタディンたちが、いくら待ってもステーニュがくる気配がなかった。

「やはりこの船には、彼女は乗っていないようだ」

「どうしようか」

「ここは、一つ…」


「え?イフニ・ステーニュ?彼女が、この船に乗っていた?」

「そうです、大統領代行。しかし、これまで失念しておりまして…」

「人間であるならば、そう言う事もあるだろう。しかし、彼女は…そうか、無事に生き延びていたか」

「そうです。しかし、どこに行ってしまったかが分からなくなっておりまして」

「ならば、いい方法がある」

「なんでしょうか?」


「これならば、早く見つかるだろうよ」

「まあ、それはそうですけど、1民間人を捜索するために、宇宙軍の偵察部隊を投入する事は…」

「大丈夫だ。彼らの方には、要人が暗殺の危機に陥ったと勘違いしてどこかへ行ってしまった。と言うふうに説明してあるから」

「それは、いいですが…」

そのとき、大統領執務室に誰かが入ってきた。

「大統領代行。見つかりました」

「おお、ほら、ちゃんと見つかっただろう?で、どこにいた」

「はい。少し問題がある場所でして…」

「どうでもよい。彼女は、政府要人だ。さ、場所を言ってくれ」

「はい、分かりました。発見場所は旧日本国領の沖ノ鳥島です」

「うげ。あんなところに…」

「どうした?沖ノ鳥島とはどこだ?」

「日本国領の南限に当たる島です。北緯20°25'、東経136°04'です。周りには島は無く、コンクリートで護岸工事をして、どうにか島としての体裁を保っています。あそこはまだ沈んでいなかったんですね」

「え?どういう事ですか?まだ沈んでいないって、京都議定書や他の議定書によって、2100年より二酸化炭素の量は99%減りました。その結果、地球温暖化と言う言葉は今や歴史の一部分に過ぎません」

「そうですか。いや失礼しました。出発したときには、もう沈むとか、まだ沈まないとかの議論をしていましたから」

「そうか。まあ、詳しいのは良い。とにかく、彼女を探しに行こう」

「了解しました」

彼らは空軍がまわしてきた飛行機に乗り、その場所に一番近い飛行場へ向かった。


「では、着陸します」

何の衝撃も無いまま、静かに着陸した。窓の外には、すぐに広い広い海が広がっていた。

「ようこそおいでになりました。この、浮上軍用都市「スターフェイス」へ」

周りには何も無い海のど真ん中に、一つだけ浮かんでいる、軍事施設だった。

「ここは、現在北緯21°08'、東経135°90'にいます。ほら、あそこに見えるのが沖ノ鳥島ですよ」

スタディンは細目で見ようとしたが、太陽が輝いている上、波が激しく波しぶきを立ててここにぶつかっているのでまったく見えなかった。

「まあ、とにかく中へお入りください。その島へは海軍の船が向かう事になっています」

「わかった」

一言だけ言って、中へ入って行った。


すぐに、出港準備ができた事を告げるアナウンスが流れて、スタディンたちはこの都市から出港した。


その間、スタディンは未来にいる自分達は、どうしているのかを考えていたりしていた。


「到着しました。ここが沖ノ鳥島です」

ただ、コンクリートで護岸工事をしただけの島。そのちょうど真ん中に女性が立っていた。

「イフニ・ステーニュさん、ですね」

「そうです。あなた達は大統領代行と、スタディンたちね。お久しぶりですね。それに、私を未来におくった張本人まで」

「覚えているのか?」

「ええ、あなたの顔は忘れませんよ。なにせ宇宙で初めての時間旅行者となったのですから。しかし、その分、この時間で得られたはずの幸せを全て失いましたが」

「何かして欲しい事があるならば、何でも言ってくれ。出来る限りの事はしよう」

「ならば私の事はほっといてください。そして、彼らを残して明日、来て下さい。それまでの間に決心はつくでしょう」

「わかった。では引き上げるぞ」

大統領代行と隠居した科学者は帰って行き、スタディンたちがこの島に残された。

「で、何故自分達を残したのですか?」

「私の事を教えたくて。ここにいる人達だけにしか教えない秘密…」

「なにか、あるのですか?」

「私も元は錬金術が使えていたの」

みんな、唖然とした。

「え?錬金術が使えていたって?時間軸を進む前ですか?」

「そう。この時間上で私は錬金術が使えたの。ただ、この事は誰にも話さないって約束して。それが出来ないと、先には進めない」

「分かりました。この軍人としての名誉に賭け、ここにいる人達以外には誰にも話さないと約束しましょう」

「ありがとう。では、話しましょう。私、イフニ・ステーニュの話を…」

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