第70部
第12章 最高権力者の過去
「おい。タブリス。起きているのか?」
「ああ、起きているよ。ターン」
"ターンと言うのは、ターン・カイルと言って自分の友人だった人だ。このブラックホールの計画の要になる人物だったんだ。まあ、普通はターンって言われていたな"
「もう朝だからな。先に行ってるぞ」
「おい、ちょっと待ってくれよ」
ばたばたと服を着替えつつ、赤色のスリッパを履いて、ターンを追いかけた。
「お、追いかけてきたか」
「当たり前だろ?俺とお前は友達なんだから」
「友達、か」
「なんだよ。そんな言い方」
「なんでもありませーん。知りたかったら、自分を捕まえてみろや」
ダッと走りだした。
「こら!」
二人とも、誰もいない廊下を走って行った。
「おい、遅刻だぞ」
「す、すいません。大将殿」
「どうした?息が切れているが?」
「いえ、何でもありません」
「そうか、それならいいが。さあ、彼らが来た!本日の研究内容を説明するから、集まってこーい」
"彼は、イフニ・イルーシャ大将と言って、その時、とても有名だった女性なんだ。彼女がこの研究を仕切っていたんだ"
「さて、全員集まったな。今日の研究は、マイクロブラックホールを箱に中に収めるための箱を作って欲しい。それじゃあ、かかれ〜」
彼らは散り散りになり、研究に没頭し時のたつのも忘れていた。
「出来た!」
ターンが叫んだ。
「お。出来たか。どれ、見せてみ」
「駄目だ。これから、実際に封入して確認テストをする必要がある」
大将がつかつかと近寄ってきた。
「出来たなら、先にちゃんと入るかどうか確認しとけよ。それから、ちゃんと出来た事を発表する事」
「分かっていますよ、大将殿」
"彼は封入を開始したんだ。そして、終了直後、事件は起こった"
「よし。大将殿!封入完了しました。無事に機能しています」
「よろしい!よく出来た。軍部を代表して…」
その時、白い光が研究室を包み消えていった。
「なんだなんだ?」
「あれ?箱が二つ…そっくりなものが…」
「え?あ、本当だ。開けてみましょうか?」
「ああ、ゆっくりとしろよ」
"彼は確実にゆっくりと開けたんだ。しかし、中身は君達はもう知っているだろう。それを開けたとたんに…"
「どわ!」
奇声を発してターンは消えた。同時に、彼が作った箱も消えてしまっていた。しかし、他の人達は、何も声が出せなかった。まず、この研究所自体が消滅した。次に箱の中から出てきたマイクロブラックホールにより、研究所の周りの土地が大体直径2kmのすり鉢状になってしまった。彼らは、どこに行ったか、どうなってしまったのか、何も分からない。しかし、その後は…まず、この地域一帯の町が一瞬で消えて行った。その距離は、どんどん広がっていき世界中で同じような現象が見られた。唯一なかったのは、日本国領だけだったのだ。おそらく、最も研究所から遠かったから助かったのだろう…