第69部
第11章 過去へと戻って
「せんちょう…船長、大丈夫ですか、船長」
「ああ、大丈夫だ。ここは?」
「本部についたところですが、すこし、予想外の事が」
「どうした。また時間軸を間違えて帰ってきてしまったのか」
「どうやらその通りで、今回は西暦2160年4月19日、あのクーデター事件のちょうどその時に、来てしまったのです」
「それは、一大事だな。イテッ」
スタディンは頭をおさえた。
「船長、もう少し休んでいたほうが…」
「私が働かなければ、いったい誰がするというのだ…」
医務室のベットからおり、重い足取りで指揮室に向かった。
「こちらは、宇宙軍第1師団長貴縞康熙だ。あなた達は、どこから来た?」
「私達は第1銀河/11腕/第311惑星系から来た。宇宙軍所属ベルジュラック号だ。そちらに降りたい。よろしいか?」
スタディンが部屋に入ったとき、このような会話をしていた。
「今は出来ない。全権を委任している、総軍事本部長兼陸軍幕僚長ポッコロ・マゼンタが、許さないのだ」
その時、横から、顔が出てきて、「いいじゃないか、彼には私の方から言っておくから」と言った。
「分かりました。では、特別に、着陸許可を出そう。フィラデルフィア宇宙軍基地に着陸せよ。なお、場所はそちらのAIに転送する」
「了解しました。では、着陸します」
着陸後、宇宙軍から見えた風景は、荒涼とした、土地ばかりだった。
「どうしたのですか?ここは、とてもにぎわっていたはずなのに」
「ああ、どうやら誰かが、何かやらかしたらしくて、ある日突然町が消えてしまったんだよ。残ったのは、ほれ、あっちの方に見えるあの建物だけ」
酔っ払っている、宇宙軍兵士が言った。
「こらっ、何故酒なぞ飲んでいる!ここへならえ!」
全員が並んだ。
「すいません。少将殿」
彼は少将の徽章を付けていた。
「すいませんが、この船の船長は?」
「わたしだ。イフニ・スタディン大将だ」
「え?イフニ・スタディン?もしかして、2020年、ここに来ましたか?」
「この星には来ていたが、ここではなかったな」
「おい、みんな、あの伝説の人がここにいるぞ」
みんなワーッと寄ってきた。
「なぜここに?」
「え?いや」
「まあ、飲みねぇ。あんさんも、男だろ?」
「いえ、酒にはめっきり弱いから…」
そう言われながらもコップにビールを注がれて、周りの人達と一緒に飲んでいた。
翌日、翌々日と、頭がいたくて起き上がれなかった。
この手痛い歓待から3日後、ようやく痛みが治まったので、外に行った。
「そういえば、あの建物は、何だろう」
独り言を言っていたら、
「あれは、フィラデルフィア大学ですよ。あの建物だけが残ったのです」
見知らぬ人が言ってきた。周りにはこの二人しかいなかった。
「えっと、あなたは?」
「ああ、すみません。私は、今の大統領代行ビス・メディカトリクス・ナトゥラエです」
「大統領代行と言う事は、いまは大統領自体、いないのですね」
「残念な事に、前の大統領は突如としていなくなりまして、現在私が大統領代行を務めているのです。こういう有様でして、選挙も出来ないんです。」
「この土地はどうしたのですか?」
「この土地だけではありません。この惑星のほとんどの土地で起こっています。事の始まりは、1人の科学者の実験中に起こりました。どこかの時空間から来たなぞの物体が送られてきたのです。その時彼は、マイクロブラックホールの研究をしていました。そして、かれはその送られてきた箱と全く同じ物を作っていました。そして、送られてきたものを開けてしまったのです。その瞬間に彼と箱は消え、その中にあったマイクロブラックホールがこの地球上にばら撒かれたのです。そして、そのマイクロブラックホール自体は1時間以内で消えましたが、その影響が今も残っているのです。そして、その時大統領も…」
「亡くなられたとそう言う事ですね」
「ええ。実際にそのような事が国民が知れば危険です。そこで私達はクーデターが起きたようにして、私が大統領代行となったのです。今の人口は、国全体で約350億人ですが、この惑星だけをみたら、2150年が98億人、そして現在は56億人。実に42億人もの尊い命が失われました。なお、彼自身はいまだに見つかっていません」
「そして、この星は滅亡へと突き進んでいく。しかし、その研究所自体は残っているだろう?」
「いや、それは見てもらった方が早いでしょう。それよりも、あなたは伝説となって語り継がれている人です。あなたこそがこの大統領代行と言う職ににふさわしい」
「すみませんが辞退させてもらいます。なぜならば、私は脆い人間。大統領と言う職務を果たせるわけがありません。それに、名は体を現すと言います。あなたのような名前をお持ちの方以上の適任を、私は見出せないでしょう」
「そうか、ならば仕方がない。では、大統領代行としてここに命令する。私の補佐をしてくれ」
「補佐、ですか」
「そうだ。補佐をしてもらいたい」
「命令とあらば」
「では、よろしく頼むよ。スタディン大将」
「了解しました。閣下」
スタディンは船に戻った。そして、大統領代行はある所へ行った。
大統領代行は道を歩いていた。突然、クレーターのようにすり鉢状の穴が開いていた。
「ああ、帰ってきたよ。兄さん」
「と、言う事で当分ここでとどまる事になった。今からならば、歴史を変える事になってしまう。しかし、ここではそれもやむをえない状況であると私は思う」
「でも船長、私達は一刻も早く戻る義務があるのですよ。それを無視する気ですか?」
「状況が状況だ。いまや、仕方ないだろうと私は判断した。その上、私には大統領代行の補佐をするという命令書も受け取っている。これは、軍の職務規定によれば、大統領の命令はたとえ代行であるとも絶対であると書かれている。そう言う事なので、これより全員に一時待機命令を出す。何か自分からの直接指示があるまでこの船から出ないように」
「了解しました、船長」
「ああ、そうだ。今残っている全参謀委員は私についてくる事」
「了解」
大統領代行の元へ、全員が歩いて行った。
「また来るから…」
大統領代行は、宇宙軍基地に戻って行った。
「で、君達で私の補佐をすると?」
「そう言う事です。で、何をすればよろしいのでしょうか」
「ああ、最初はまったく被害がなかった。唯一の国である、アジア大陸/東アジア地域/西地方へ飛んで欲しい。そして、旧日本国領を特別解放する」
「しかし、あそこは放射能汚染があると…」
「ああ、結局テロはおこらなかったんだよ。しかし、全員避難が完了していたし、なぞの光も観測されたから、結局起こったと言う事になってね。でも真実味を持たせるために、放射能測定器を持って行きたまえ。そして、四軍を動員してもかまわないから君達が中心となってやってきてくれ。もう現地の人達に話してある」
「分かりました。では」
そして、大統領専用機に乗ってこの宇宙軍基地を後にした。
「さて、彼らは元々大佐だったはずだ。そして、何故大佐だったのかは分からない。しかし、私は重要だとおもうな」
「しかし彼ら自身だがその事の重要性に気づいているかどうかだな。もしかしたら、これがきっかけで特殊なる能力に目覚めるときが来たのかもしれない」
「さて、この教書に乗っている通りか?」
「そのとおりだ。これより、彼らを監視せよ。以上だ」
そして、旧日本領に到着した。
「ここがそうか。約150年前と約150年後、ここに来るんだね」
「ああ、そうだ。しかし私達、どうやればいいんだろう」
到着してまず最初にした事は、難民をグループ分けにして一時避難だと言う事を徹底的に教え込ました事、陸海空軍を駆使してピストン輸送した事、宇宙軍を利用して上空からの避難状況を把握した事だった。各方面の総指揮は、スタディンとクシャトルがした。食料関係は、アダムとイブ。陸軍は、シュアン。空軍は、クォウス。海軍は、ルイ、そして雑用は、瑛久郎と愛華がやる事になった。
1年はあっという間に過ぎて行った。
「監視はうまい事行っているようだ。そして、彼らは未来から来た事、過去の事を知っている事、そして、我々からみて、知るべき事を知っている事が分かった。さて、どうしようか」
「ならば、ここに連れてきてその事を問いただせばいいだろう」
「なるほど。あれから1年がたって、一段落つく頃だしな」
「え?緊急召集?総指揮と各指揮長に?」
「そうです。大統領代行よりのご命令です。一刻も早く、大統領代行の元へ来て欲しいとの事です」
「わかった。行くしかないだろうな」
彼らは大統領代行の所へ来たが、部屋にはいなかった。全員部屋の中に入ったその時、扉が閉められて鍵がかけられた。
「お、おい。だれだ、鍵を閉めたのは」
「私だ!」
どこからか声が聞こえる。
「どこだ!」
「目の前にいるのが見えんのか」
すっと姿が現れてくる。
「私はタブリス・イロウル。この国自体を指揮している。いわゆる、影の最高権力者みたいな雰囲気なやつだと思ってくれ。さて、わたしは君達に頼みたい事がある」
「それは、何ですか?」
「この国でみた事、聞いた事、話した事。全て忘れてくれ。しかし、何故このようになった事だけは、憶えておいてくれ」
「分かりました。では話してください」
「ああ、大雑把な話だけは大統領代行ビス・メディカトリクス・ナトゥラエから聞いていると思う。だが、詳細な話になると、別だ。ああ、何かに、記憶したいならば、後で同じ内容の文章を渡しておく。それを見てもらいたい。それと、私は、途中で話の腰を折られるのが嫌いでな、その事も含めておく。さてと、何故このような大事件になったかと言うと…」