第67部
第10章 今度の派遣理由とは
「お久しぶりです。船長、副船長」
「ベルか?」
「そうです。さあ、皆さんお待ちですが、どうしましょうか?」
「さきに、作戦室で、この艦隊の全船長が来る。そして、作戦室の方に連れてきてくれないか?」
「承知しました。では、正式に乗船登録します。では、名前、年齢、あれば魔力を一言ずつ、お願いします」
「エア・アダム、22、魔力333」
「エア・イブ、21、魔力313」
「丹国シュアン、19、魔力298」
「丹国クォウス、18、魔力296」
「丹国ルイ、16、魔力289」
「宮野瑛久郎、19、魔力288」
「宮野愛華、19、魔力169」
「了解、承認しました。では、作戦室へ案内しますので…」
「いや、その必要はないから、別の事に力を注いでくれ」
「分かりました」
静かになった。
「じゃあ、行こうか」
彼らは歩いて行った。
「ここが、作戦室」
「広いね。もっと、雑然とした部屋だと思っていたよ」
「昔は、もう少し狭かったかな?ただ、この船自身もいろいろと手を加えられているみたいだね。でも、部屋の配置は変っていないようだ」
「両隣には何があるの?」
「物置きがあったな。ああ、それをなくしたのかな?」
部屋の真ん中には円形のテーブルがあり、さらにそれを取り囲むように、10脚の椅子が置いてあった。
「この椅子の数って、この艦隊の船の数と同じだね」
「ということは、船長会議もここでできるのか」
「私達はどうすればいいの?」
「君達はこの艦隊の参謀委員となり、この船の指揮関係に関与する事になる。まあ、この船長会議は参謀委員会も兼ねるから、それもあるかな?」
「私達はどこの部屋を使うの?」
「皆で一緒に寝たいのであれば、そんな部屋を作る必要があるけど、そんな事しなくてもいいのならば、別々の部屋を用意するし」
ベルの声が聞こえてきた。
「スタディン船長。他の船長達が来ました」
「そうか、ここに集めてくれ」
「分かりました」
数分後、全員が着席した状態で船長会議が開かれた。
「これより、第一回船長会議を開催する。なお、これ以降、本船長会議を参謀委員会とし、全船長を参謀委員とする。なお、各参謀委員は自己推薦方式により参謀委員を推薦し、本委員会の中に入れる事が出来るものとし、推薦人数の上限はこの作戦室に入るだけとする。まず推薦する人があれば、言って欲しい。私はこの後ろにいる人全てを推薦し、認可して欲しい」
「賛成します。スタディン大将」
全会一致で、無事に全員参謀委員になれた。
「では、次に各自の名前、階級、所属する船の名前、ああ愛称でもかまわない。それと、あれば参謀委員推薦の人数、名前を言って欲しい。では私から時計回りに。イフニ・スタディン、大将、本船「ベル」船長、さっきも言った通り8人。後ろの左から順番に本船の副船長でもあるイフニ・クシャトル、エア・アダム、エア・イブ、丹国シュアン、丹国クォウス、丹国ルイ、宮野瑛久郎、宮野愛華」
「田井御田、少将、「エリザベス」船長、推薦は1人、副船長の田中昇覇」
「大飯和家、中将、「フリーダム」船長、推薦は1人、副船長の大飯家久」
「イフニ・ステーニュ、大佐、「飛魚」船長、推薦は1人、副船長のイラクサ・イアン」
「家元和久、少将、「ターゲット」船長、推薦は1人、副船長であるカヒス・カトール」
「モスカウ・モツキ、中将、「フェムト」船長、推薦は1人、副船長のカクチ・シャンド」
「ガンジス・チェリー、大佐、「大海」船長、推薦は1人、副船長のカイン・ファインド」
「鎌琴雄途、大将、「東沢」船長、推薦は2人、副船長の海丘皆生、神谷橋宵智」
「覇月付会、中将、「メーレブ」船長、推薦は1人、副船長の塊状附界」
「イコ・リコ、大将、「泰平」船長、推薦は1人、副船長のアイ・サン」
「以上、推薦した人は全て認可したいと思う。異議がある場合はこの場で言ってほしい」
スタディンが言ったが誰も反応しなかった。
「よろしい。では、これより参謀委員全員呼集してほしい。そうだな出来るだけはやく。おねがいする」
「了解しました」
扉から出て行って、作戦室は静かになった。
「わざわざ、認可してもらわないといけないんだね」
「そうだ。とにかく規則だからな。さあ、椅子をもう少し増やす必要があるな…」
参謀委員が全員集まる頃には、作戦室の中も変っていて、机が円形からコの形になっており、片方の壁には、プロジェクターが置いてあった。
「お手数をかけますが、座ってください。これより参謀委員が全員集合して、作戦会議を開きます」
スタディンとクシャトルが全員を誘導する。2つ以外の全ての椅子が埋まった。
「では、これより作戦の概要を説明する。本作戦において目標星域はここから約230光年離れている、第1銀河/11腕/第311惑星系に向かう。そこから普通波で緊急信号が送られてきた」
「それがどうしたのですか?普通波だし、230光年も遠かったら、その緊急通信も無駄でしょう」
「考えてみろ、230年前、何があった?そして、その時、この世界はどうだった?」
「今から230年前、新暦141年…あっ、あの年か!」
「そうだ。その時の世界と言うのはなぞに包まれている。そして、その年代からの通信だ。しかし普通波で送られてきたため、すでに向こう側は誰もいない可能性がある。しかし、我々はその発信源を突き止める。それが今回の任務だ。なお発信源に人が生きていたら、その人達も連れて帰る事になっている。では、何か質問は?」
とても静かだった。
「では、各自船に戻り、明日、第4惑星標準時12:00出発だ。それまでに準備を済ませておくように」
「了解しました。船長」
全員退室しこの部屋には、静寂だけが座っていた。
船長および副船長が帰った後、スタディンとクシャトルがアダムたちを船の中の見学に連れ出していた。
「ここが、機関室。この船の要になるところ。機関室長は、つい先月引退したから、まだ決まっていないんだよな」
「この船の規則では?」
「選挙方式を取っている。今回の場合だとこの機関室の職員中から、機関室長になりたい人が立候補して、その人の信任投票をする事になっている。まあ、だいたい1人だけしか出ないんだがな」
「そうか」
「では、次に行こうか」
「次は、この船の指揮室だ。調子はどう?シアトス」
「ばっちりですよ。船長。それに他の皆さんも」
「シアトスはこの船の操縦手だ。とても重要な役で、この役がないと船はただ直進するだけになってしまう」
「ああ、船長。もういらしていたのですか。ちゃんと、健康診断は受けてくださいね。病気になったって知りませんよ。他の皆さんもお願いしますね」
「ああ、分かってるよ。フラッシュ。彼はこの船の医療長で全員の健康管理をしきっている。ちなみに、自分
はこの船でいつも医務室で寝ていた」
「それって、いいんかな?」
「大丈夫だ。ちゃんと、生きて帰って来れたんだから。では、次の部屋に行こう」
「ここは、仮想空間実験室。重苦しい名前だけど、バーチャルリアリティーのための部屋だ。何だって出来る」
「どんな事も?」
「そう。ただ、この部屋は基本的に新たなる薬品とかの実験に使われる。だから、仮想空間実験室という名前がついているんだ」
「ほへ〜。そんな意味だったんだ」
「って、副船長が知らなくてどうする。もういい。次行くぞ」
「次は、大広間だ」
「ああここ。なつかし〜。そんな名前だったんだ」
「え?シュアン。全員懐かしいって、どう言う事?」
「実は、この船に入って最初に来た部屋がここなんだ。いや、まだ覚えていたとは、さすがだね」
「まあね。とりあえず。ここには、この船の全乗組員が入るんでしょ?」
「全員ではないけど、99%は入るね」
「でも、そんなに広くなさそうだけど…」
「縦幅200m、横幅150m、高さ30m。これで、全員立った状態で整列したら、どうにか全員はいるんだけどね」
「じゃあ、次の部屋行ってみよー」
「ここは、見ての通り食堂となっている」
「ああ、船長でしたか。どうしたんですか?なにかいるんでしたら、作りますが」
「いや、それには及ばないよ。いま、彼らをこの船の案内をしているところだから」
「そうでしたか、皆さん。この食堂の料理長、韃靼綿誄です。よろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそ。まだ、この船に不慣れですが、暖かいご指導、お願いします」
「ささ、次行ってみようか。ここには、必ず来るからね」
「で、ここは栽培農園となっている。各乗組員が縦横5畝の畑を借りて、野菜とかを育てる事が出来る。自分は、この場所だ。君達は、この部屋の端っこの方に立て札がある。その場所が君達それぞれの畑となる。なお、この柵は、各畑を分けるために必要なものだから、抜かないように」
「了解」
「では、次の部屋に行こう」
「この部屋は、休息部屋だ。この扉は、開放厳禁。つまり、開けっ放しにはするなと言う事。そして、この中は、仮眠を取るための部屋になっているから。取る必要がない事を祈ってるけどね。では、次に行こう」
こうして、彼らは、全ての部屋を見た。
「そして、君達は、全員一緒に寝るのがいいらしいから、みんなで部屋を一つ、用意したから。部屋の番号は、3452ね。網膜と手の全ての指の指紋と手の平の静脈と動脈を見せないと、部屋には入れないから。そして全て登録されて、部屋を間違えると部屋の扉の上にあるスピーカーから、間違えていると言う旨のアナウンスがある。しかし、全て登録されていないと上と下から同時に鉄格子が来る。そして、船内放送でその場所を言う事になっている。その間、その人はクロロホルムで気を失っている。その間に警備班が現場に急行して、逮捕する。と言う事になっているから。さて、その部屋に行って見ようか、ああそれよりも先に登録の必要があるね。じゃあ、まず指揮室に行こう」
手続きは指揮室の船長の席からしか出来ないようになっていた。そして、船長はもう一箇所どこかにあるらしい事を言っていた。しかしそれは教えてくれなかった。
「じゃあ、まず、ベル。これより、網膜照合用データの登録を要請する」
「受理します。では、指定の場所に座って下さい。では、登録を開始します。名前を」
「エア・アダム…」
全員、網膜のデータが取れた。
「これで、以上ですか?」
「網膜照合用データ登録を終了する。引き続き、指紋照合用データの登録を要請する」
「受理します…」
さっきと同様に、行われた。しかし、指紋は、瑛久郎と愛華だけ取れなかった。
「以上でしょうか」
「瑛久郎、愛華両氏にかんして、再登録を要請する」
「受理します」…
同様にしても、駄目だった。
「以上でしょうか」
「指紋照合用データ登録を終了する。引き続き、手の動脈及び静脈照合用データの登録を要請する」
「受理します…」
これは、全員取れた。
「以上でしょうか」
「手の動脈及び静脈照合用データの登録を終了する」
「了解。なお、愛華、瑛久郎両氏に関しては、音声認識を指紋照合の代理として、使用を許可します」
「了解した。以上で全データの登録を終了する」
ベルは静かになった。
「さて、これから、どうしようか」