第66部
「そういえば、何で自分達も大将まで一気に行ったんだろう」
「ああ、それはね。最上級魔法取得者が、軍に入ると、自動的に中将以上になるシステムなんだ。今回の場合は、自分たちが大将になったからそれにあわせて大将にしたんだろうね。でも、正式に入らない限り、ずっと宙小士のまま」
「そうだったんだ。でも、いつのまに、最上級魔法なんか取ったんだ?」
「とにかく、見えてきたぞ。あれが伊丹駐屯地だ」
白い建物が並んでいた。
「これは?」
「昔の名残だ。たしか、これは自衛隊の寮に使われていたはずだ」
次は、大きい建物が現れた。
「これは?」
「これが、旧日本国陸上自衛隊第3師団及び中部方面総監部所在地。伊丹駐屯地の総監部だ。まあ、これは新しく出来たものらしいがね」
少し行くと、正門が見えてきたので、入って行った。
「すみませんが、身分章を提示してもらえますか?」
「この肩の徽章でかまわないかな?」
「ええ。結構です。では、あの玄関で車を降りてください。なお大将以外の方は、すみませんがお帰りください。今回は全てを極秘にしておきたいらしいので」
「そうか、じゃあ、ここまでだな」
「またすぐ帰ってくるよ」
玄関の軒先で車を降り、そのまま車は帰っていき、大将達は集まっている部屋へ行った。
「おお、来たな今回の作戦の要石。君達が居ないと何も始まらないのだ」
「どうしたのですか?ジャイカ・ギメルガシュ旧日本領自衛隊基地総監殿」
「うむ。少し困った事になっていてな。ここにいる者達は、魔法の訓練自体を受けていないのだ。しかし、君達が偶然にもこの土地に足を踏み入れている事が分かったので、こうして呼び寄せたのだ」
総監自身は幕僚長の徽章を付けていた。なお大将は結構いるが、幕僚長はこの宇宙には、この時点ではわずか10人しかいないのだ。
「わかりました。で、どうされたのかが知りたいのですが」
「ああ、そうだな。作戦はちょうどここから見える山々があるだろう?あれは六甲山系というのだが、そこにあるといわれている、物を取ってきて欲しいのだ」
「どのような?」
「そうだな。大きさは、まあ30cmぐらいの正確な立方体、中身は非常に重く、密度が16.6kg/cm^3もあるのだ」
「ということは、総質量が約500kgですか?」
「まあ、そのぐらいだろう。君がいうのだからな。今回の任務はこの物体についてだ。しかし、これは非常に危険な作業なのだ。よって臨時手当と危険手当が出される」
「場所は?」
「この六甲山系のどこかだ」
「そんな、抽象的な」
「とにかく、それを君達の魔法で探して欲しい。いいか、重力波を検出する装置も、どんな機械でも、その近くまで行くと必ず壊れるという地点がある。その周辺だという事は分かっている。しかし正確な位置までは…」
「今回の私達の任務はその未知なる物体を、回収してここに持ってくる事ですか?」
「いや、その場で破壊してもらいたい。それ自身、特殊な磁場に覆われている上に、相当古いものらしい。いつまで古いかは予想もつかない」
「分かりました。では、発見しだい破壊しましょう」
「たのんだぞ」
「では」
ビシッと敬礼をして部屋から出て行った。
「いいのでしょうか。あの事をいわなくても」
「ああ、それなら彼らはどうにかしてくれるだろう。なにせ周りの物質を…」
スタディンたちはすぐにそれを見つけれたが、周りの物質が質量減少をしている事も同時に分かった。
「これって、どういう事だろう」
「早い話、これはマイクロブラックホールが入っているようだな。しかし、どうやってこれを壊せというんだろうな。これは、壊したとたんに、バッコンて中身が周りに飛び散る事になるぞ」
「でも、ブラックホールならホーキング輻射をしながら、消えていくでしょう。だから、小さな物は瞬時に消滅すると聞いたけど?」
「それを覆す事が目の前で起きているけどな。まあ、とりあえず、これ別の宇宙に送ろうか。そうしたら、大丈夫だよね」
「まあ、多分ね」
「では、5m以上はなれて。いくよ。3、2、1、0!」
バシッと消えた。ただ光も出なかった。
「どこに行ったの?」
「さあ、良く分からないけど、とにかくこの時空間からはなくなったのは確かだと思うよ」
「引き上げて、報告しよう」
「そうだな」
みんな、山から降りて、戻って行った。
「幕僚長殿。ただいま戻りました」
「おお、で、どうだった?」
「首尾よく行きました」
「よろしい。では、君達に次の任務を与える。今度は、艦隊を指揮しある所にいってもらいたい。説明は、マザーコンピューターを見ときなさい」
「どこの艦隊でしょうか」
にやりとして、幕僚長が言った。
「それはじゃな…」
「で、ここがその艦隊があるところね」
「久しぶりだ〜」
「でも、どこにそんなものが?」
ここは第4惑星の軍事衛星である、第4惑星/第3軍用衛星/第423ドックだ。この惑星には複数の衛星があり、その全てに人が居住している。しかし、天然に存在していたもの以外、全てが軍事衛星なのだ。そして、この衛星自身いつ作られたか分かっていないほど古いのだが、そこかしこに「MADE IN JAPAN」の、文字があった。
「この衛星って、ほとんどの部品が日本製みたいだね。でも、おかしいな」
「何がおかしいの?」
「この衛星自体は日本製が多い。ということは日本が消える前に部品が作られたと言う事なんだ。そして、その間に作られた部品なんて、今から見ればたかがしれている量しかない。なのに、この衛星は日本製が非常に多く使われている。そこが不思議で…」
「えっと、スタディン大将でしょうか」
「そうだが、君は誰だ?」
目の前に、茶色の巻き毛でスタディンより少し低いぐらいの若者がたっていた。
「すいません。申し遅れました。私、1ヶ月前に、少将に昇格した田井御田といいます、実はあなた方の艦隊の船長をしています。これから、あなた方を、第300ドックの方へお送りするように、仰せつかっておりますので、どうぞ、こちらの方に…」
すたすたと、誰もいない廊下を歩いていく。右、左、直進。そして、エレベータを上がり、到着した。
「ここが、あなた達が指揮をするこの宇宙中でここにしかない特殊作戦用艦隊です。ちなみに、私の船は、この船たちの中で一番小さな船です。ほら、あの右側にある…」
「ああ、あの白い船体の?」
「基本的にどの船も白いのですがね。とりあえず、言えるのはこの船たちは、あなたの指示で自在に動きます。そして、あなた達が船長として乗り込むのは、あの愛称「ベル」と呼ばれている船です」
「ああ、あの船の事なら良く覚えているとも。自分がまだ大佐だったとき、軍に入ってすぐに指揮をした船だ」
「ええ。そのときのままで、人も変えていません」
「そうか、じゃあ、みんなとまた一緒になれるのか。それはうれしい限りだな」
にこやかになるスタディンとクシャトルだが、その一方で、この宇宙史上初めてとなるチーム指揮制を導入する事になりその実験も兼ねている、とても重要な船でもあるのだ。そして、他の人達はこのような艦隊の行動自体やった事がないと言う人もいるのだ。
「とにかく、あのベルが旗艦としよう。そして最初に全船長を集めてくれ。御田少将」
「わかりました。では、あのベルの作戦室ですか?」
「そうだ、頼んだぞ。自分達は、一足先に乗り込んでおこう」
タッタッタと走って人がいるところへ行った。そして、御田さんの放送を聞きながらスタディンたちは、ベルに乗り込んだ。
「中身、どこも変わってないね」
「いや、自分達は分からないんだけど」
「それはそうだよね。でも、私達はここに3ヶ月と少しの間、いたからこの船の構造は覚えているよ」
合成音声が聞こえてきた。
「お帰りなさい。船長」
「ああ、ただいま」