第65部
「まず、どこ行く?」
「大阪市内はどうなっているか気になるんだけど」
「大阪市、えっとどうやって行くのかな?」
「あそこにある高速に入るでしょう…そうそうここ、それであとはバーっと進んでいくだけ」
「どこかで降りないのか?」
「おりはしないけど天保山と言うところで、大阪市内と言う看板の方に行く必要があるね」
「そう言って、言葉で説明するよりも、これに頼った方が良くない?」
「ああ、カーナビがあったか」
「こんなバスにも、運転席の横にはカーナビゲーション」
「最先端だね」
「とにかくだ。こんなものは最先端でもないぞ。2000年にはもうあったんだから」
「ひぇ〜。そんなに昔からあったんだ」
「だがな、伝説に過ぎないからな」
「ああ、そう言えば、大阪に行ってどうするの?」
「私達の家がどうなっているかみて見たいの。私達がここにいなくなってから、300年以上経っているからね。どうなっているか…」
「わかった。じゃあ、その時の思い出を話しながら、そこへ行って見ようか」
「そうしよう」
彼らはアダムが運転する小型バスに乗り、何も邪魔な物がない高速道路を突っ走っていた。
「ここかな?」
「そう。この家だね」
バスのドアを開け、家の中へ入っていく。
「うわー。いろいろすごい事になってるね」
「明らかに誰か住んでいた形跡があるが、しかもその人はここ最近1ヶ月以内に転居したらしいな。しかし、その人が居たのは、恐らくとても短い間だな」
「何で分かるの?」
「勘だな。早い話」
「勘って…駄目じゃないですか」
「いいんだ。とにかく言えるのは、この家、何かおかしい感じしないか?」
その言葉を受け、この家にいた事がある人達は周りを見渡していた。
「そう言えば…違和感がある…」
「でも、この家に間違いないんだね」
「そうだ。しかし…これは…元々なかったものだが…」
一枚だけ、部屋の真ん中にござが敷いてあった。めくってみると、下に穴が開いていて、その中に見たことがない機械が置いてあった。
「これは、なんだろう?」
「さあ、この周りにも同じようなものが落ちていないかな」
探してみたら、いろいろな場所に、いろいろな形の機械が置いてあった。しかし、置いてあったのは、機械だけではなかった。
「ギャ――――――!」
「どうした!」
「ひ、ひとが、ひとが、ここで…」
「どうした、誰か居たのか!」
声がした方に行くと、イブと愛華がある方向を指差して、目を見開いて腰を抜かしていた。
「あ、ああ、あそこ…」
「え?」
その方向に振り向くと、白骨化した死体があった。
「なにが、ここで起きたんだ…」
「さあ、今となっては時効が成立していると思うよ」
「って、言うか、何でこんなところに骨が?」
「そうだよな、家の中で誰か居た感じがする。そして、そのひとは荷物も何もない事を考えると、これをみて腰を抜かして逃げ出した?」
「考えないようにしよう。とにかく、この人を埋めておかないと」
「そうだな。でも、どこに埋める?この辺りには墓場がなさそうだし、空き地もなかったし」
「とりあえず、箱か何かに…」
「そうしようか」
近くに、陶器の瓶があったので、その中に骨を入れた。
「どうか、安らかに…」
「さあ、次、どこ行く?」
近くのとても小さな空き地に簡単な墓標を作り、そこに埋めた。「名も知らぬ者、ここに眠る」墓標にはそう書き、一行は簡単な墓を後にした。
「さて、どうしようか」
「この近くに、いろいろと昔の建物があるんだ。そっちの方に行ってみたら?」
「そうだね。えっと、この近くには四天王寺とかがあるね」
備え付けられている地図を見ながらアダムが言った。
「じゃあ、そこに行ってみようか」
「さんせー」
「この建物は、世界最古の木造建造物だって。聖徳太子が建立した…」
「それって、歴史で習った。無論、私達がここに来る前の事だけど」
クォウスが言った。
「まあ、面白かったね」
「では次どこに行く?」
「なんか、眠くなってきた…」
「じゃあ、ホテルのほうに行こうか。でも、この近くにどんなホテルがある?」
「大阪駅の方に行ったら、ちょうど一年前に、再オープンしたホテルとかいろいろあるはずだし」
「では、とりあえず、大阪駅の駅前に行ってみようか。どこに行くかはそれからと言う事で…」
「そうしよう。そうしよう」
そして、大阪駅前駐車場の小型バスの所にバスを止め、泊まる場所を探す事になった。
「とりあえず、ここに泊まろう」
「そうだね。この近くには他に宿泊できる場所なんてなさそうだからね」
「では、このホテルに…」
大阪駅前にある、とあるホテルにスタディンたちは泊まった。
もうすでに、夜も遅くなった頃。スタディンたちは、夢を見た。
「ああ、やっときたか。遅かったぞ」
「え?コンティンスタンスさんですか?」
「そうだ。とにかく、みんな座りたまえ」
椅子がたくさん置いてあった。周りは誰もいない。
「今回は、遅くなったが、皆が大将まで登りつめた事に対する、ささやかな祝杯の日じゃ。それで全員招集をかけたんじゃ」
「すみません。心遣い、感謝します」
「よいよい。おお、他の弟子達も来たようじゃな。ま、みんな同期だからかたくならんでもいいじゃろう」
「おお、コンティンスタンスか、今日はお前の弟子達に、ささやかながらの祝杯を挙げると聞いて、全員呼んだんだぞ。さあ、他の3人は?」
「あそこじゃよ。ピチタスオ」
振り返ると、別々の道から3人の会長達が弟子を引き連れて、こっちに向かっていた。
「そうか、全員そろったか。じゃあ準備をしようか」
「ああ、そうだな。とりあえず、どうする?…」
彼らが来る頃には全て整っていた。
「ああ、先に言っておくが、これは魔法で作り出した空間の故、食べてもこの場では満腹感は永久に得られない」
「では、乾杯の音頭を取りたいと思います、スタディン君。お願いします」
勝手に司会をはじめる、イールドさん。
「えー。では、これから、前途有望な全員に対して、かんぱーい!」
「かんぱ――い!」
こうして、夢の世界は更けて行った。
はっとして、起きたらもう朝だった。
(なんだろ、体がだるいな)
スタディンは、他の人を起こさないようにして、ベットから出て行った。
「おはようございます」
「ああ、スタディン、おはよう」
リビングには、すでに何人か集まっていた。
「とりあえず、いま、日本のニュースやっているよ。それとも新聞読む?」
「新聞を貸してもらえますか?」
「ああ、いいよ」
ここも、電子紙だった。その記事にはこんなものが載っていた。
「日本はこれからどうなるのか!
〜連邦中央銀行日本支店長の談話〜」
「世界は変化している…
史上最大のミステリー、乞うご期待」
「日本の夜明けは近い。
約350年前日本閉鎖より語り継がれた伝説とは」
などなど…。
広告のページもあった。
「お腹を守るお薬です」
「ラッパの…」
「いもたれなどには、コノクスリ」
とにかく、それらを全て読んで行った。
「この350年前から語り継がれている伝説って?」
いつの間に起きたのか、イブがスタディンの右肩から覗き込むようにして、新聞を見ていた。
「ああ、これは、もともと、この島自体を実験場にするという、計画があったんだ。ま、出来なかったみたいだけどね」
「どうして?」
「そのときの大統領がその計画自体を消滅させた。そう言う噂だよ。だけどあのクーデターによって、その間の情報自体がなくなっているから、結局分からないんだけどね」
「だから伝説になるんだね」
「そうだ」
次々と起きてきた。スタディンが起きてから1時間以内に、全員起きてきた。その時、ドアのしたから手紙が差し込まれた。
「あれ?手紙が来たよ」
「誰宛?」
「えっと、この紋章は国からだね。あて先は、スタディン、クシャトル、アダム、イブ、シュアン、クォウス、ルイ、瑛久郎、愛華だね」
「え?手紙は一通なのに?」
「宛名欄にたくさん書いてあるよ。ほら」
手紙を、投げ渡した。パシッと、愛華が取った。そして、そのまま開けて、中身を読み上げはじめた。
「大将各位に通達します。現在の休暇は、取り止めとなりました。つきましては、計8名。別紙の場所へ来てください。なお、服装は、正装でお願いします」
封筒をみて見ると、確かに別の紙が入ってあった。それを取り出して、同じような感じで読みはじめた。
「別紙。集合場所、旧日本国陸上自衛隊第3師団及び中部方面総監部所在地。伊丹駐屯地」
「どこ?」
「ここから、1時間ぐらいでいけるね。まあ道が変ってない限り」
「はあ、もっと休みたかったな」
「あきらめるんだな。そして、この急な仕事が終わってから休暇の続きを取ろう」
「そうだね」
「私の服はどこ?」
「そういえば、持ってきてなかったね」
「どうするの?」
「まあ、落ち着いて。家の鍵、どうした?貸してくれるか」
「どうするの?」
スタディンが立ち上がった。
「魔法でひとっ飛びしてくる。みんな、5m以内に入らないで」
クシャトルがカウントダウンを始める。
「3、2、1、0!」
バシッと白い光が出てきた。そして風が勢いよく一瞬だけ吹いた。1分後、再び白い光が現れて、風がさっきとは逆向きに吹いた。
「ただいま。ほら、全員の分」
「わー。ありがとー」
すぐに、着替えて出発した。