第63部
「ここで待て。これより、現国家元首兼最高評議会議長であられる、ヒゥーズ・ジルダビ様と謁見する」
兼欄豪華な衣装を見にまとい、この世の全ての贅を極めたような、宮殿だった。
「この者達は国家反逆罪に問えるような重罪です。これより、裁きを…」
「いや、その前に少し顔を見させろ」
「はっ、しかし…」
スタディンを捕まえている衛兵が、ヒゥーズ国家元首に対して敬礼しながら口ごもった。
「見せろと言うのがわからんのか」
「仰せの通り」
スタディンの襟首を捕まえて、ずるずると引きずって行った。
「こやつです」
顔を、近づける。
「今だ!」
一瞬で白い光に包まれた。光が収まると、スタディンとクシャトルが光輝剣を取り出し、ジルダビの首に突きつけているところだった。さらに、他の人達は閣僚と言われていた人達に対して武器を向けて威嚇していた。そして、スタディンが宣言した。
「これより、私がこの国を治める。異存がある奴は今すぐ出て来い!即刻処刑に処す」
誰も出て行かない。
「現時点を持って、ヒゥーズ・ジルダビは国家元首より追放処分とする。これより、全ての権限は我々にある。先ほど、異存があるかどうか聞いたので全権は私に依存するものとする。以上だ。では、私はこれより、全宇宙にこの事を宣言しなければならないので。それに、先の革命によりこの惑星以外の文化は、潰えたのと同じ。と、するならば、どこかから復興資金を供給してもらうしかない。そしてこの近隣でそれほどの財政力がある国は」
さっきまでスタディンを捕まえていた衛兵が、手のひらを返したように懐っこく近寄ってきた。
「陛下、しかし、それでは…」
その衛兵に対して、非情な目を向けるスタディン。
「異存はないんだろう?」
「そうですが…」
「だったら何も言うな。では、全宇宙に対して、これより声明を発表する。準備を頼む。それまで私は、あのバルコニーより国民を総覧してこよう」
こうしてこの国の革命は終わった。
1年後、この国はスタディンたちの主導によって全てが一新された。基本理念は、専守防衛。旧日本国憲法を基にして、よく似た平和憲法を作った。日本国憲法についてはシュアン達の知識を使った。
「これで、この国はよりよい物になるだろう」
「民も喜んでおります。陛下」
「私はこの職を降りるよ。他の皆も同じ意見だ。これからは、この憲法によって新たなる平和を享受するんだ。そして、自らの手でいずれ新たなる世代が憲法を制定するだろう。私はそれでもかまわないと思う。次の総選挙を見守ってから、私は降りるよ」
「だとすれば誰がその職を継ぐのですか?」
「それは、内閣総理大臣となる。そして、それが誰であれ、きつい事になるだろう。ただ、私は下地を作っただけだ。この真っ白な下地にどんな色を塗り、この国の個性を出すか。それは、これからこの国の全員で決める事だ。私は、元の国に戻るよ。久し振りに会いたい家族もいるし」
「そうですか、ならばお達者で…」
「ああ、そうだな」
総選挙は何事もなく行われた。選挙速報ではいろいろな政党が、あちこちの惑星政府を抑えていた。しかし、その中でもこの首都がある中央政府を抑えるものは、一つの政党しかなかった。
「あなたがなったか。この国に来て初めて自分達と出会ったあなたが」
「そうです。陛下。総選挙を経た最初の閣僚として、私がなりました」
「君ならば、この国を皆が求める方向に持っていけるだろう。さて、私はこの椅子に長く座りすぎた。占めて1年と3ヶ月か。私も年を取った。向こうは、どうなっているだろうか」
「では、陛下…」
「そうだな。これより式を開始する。まず、私は現時点を持って、辞職する。他の憲法制定委員会の面々も同様だ。そして、これより憲法制定委員会改め、中央政府内閣、総理大臣ハツキ・ヒナに行政権を全て委譲する。さて、私もつかれた。これより元の国に戻る」
「また来てください。この国はあなたがいなかったら、これほどまで成長出来なかったでしょう」
「そうかもしれないし、そうではないかもしれない。では、さらば」
最後は、潔く椅子からはなれた。