第60部
「そうか、君達がここに来たか」
「はい。そうです」
「じゃあ、えっと、磯柿殿、あなたは、私の直接の上司です。この地域については、あなたが優位になります。どうか、私にご命令を」
「とにかく、命令というのもない。この惑星は、非常に重要な地点に存在している。ここを手放すと、我々の軍は非常に厄介な事になる。ここを、最後の一兵になっても、守りぬけ。それが私から下す命令だ」
「わかりました。で、イフニ兄妹も、ここに異動になったんだね」
「そうですよ。何でかは分かりませんがね」
「まあ、異動って言うのはそんなものだよ。とりあえず君達には、この惑星系の最も外側にある、第9惑星の方に向かってもらいたい。あそこは、軍用惑星として、名高い星だ。そして、この3年間、1ヶ月以上同じ司令官であったためしがない。昨日も辞めてしまったし。そこで、君達を現時点を持って、その第9惑星方面隊総司令官に任命する。がんばってくれたまえ」
「分かりました。誠心誠意がんばります」
「そして、最後まで残った、君の名前は」
「はい。私は、辰野和恵と言います。これから、精進に勤めますので、よろしくお願いします」
「期待しているよ。さて、君の任務は…」
ちらっと、丙洋さんの方を向く。
「この司令官の補佐役になって欲しい。よろしく頼むよ」
「はい。分かりました」
「では、全員解散」
静かに言った。全員、部屋から出て行った。
「とりあえずは、自分達とここでお別れですね」
「また、合うときを楽しみにしているよ」
がしっと、固い握手をした。二人は、この第3銀河/35腕の、総司令部に向かい。そして、残りの二人は、第9惑星に向かった。
そのころ、他国では、静かに革命の準備が整っていた。そして、新暦370年8月15日。奇しくも第2次世界大戦終戦日に、新たなる戦いが始まった。
そのときは、まだ知らせが届いていなかった。スタディンとクシャトルは、常に全ての兵に目を配るようにしていた。
「この世界は、弱肉強食の世界だ。弱き者は、必ず死ぬ。強き者は、生き残る。そのような世界だ。いつ、どのような理由であれ、出兵するとき、君達は、恐れずに、この国のために尽くせるか?」
現在の年齢は、わずか、19歳。しかしながら、立派に司令官としての役目を果たしていた。
翌日、急の電報が届いた。
「のちのなもいにくちつにもちすな」
と書かれていた。
「これはどう言う意味でしょうか」
スタディンは、緊急招集をかけた。この惑星全員が集まった。最も大きいホールで、集合した。中に入りきらなかったり、この場所に来れない者のために、この惑星全土で、30箇所同時中継をしえいた。スタディンが、中央の舞台に立つ。
「まず、みんなに、近くで戦争が起こった事を示す暗号文書がきた事を言わなければならない。その内容は…」
みんな、息を殺して次の言葉を待っていた。
「革命始まる。すでに、中央には、伝えてある。まもなく我々も出動命令が下るだろう。それまでは、臨時戦時体制を取る事とする。これより、部長級会合を開くので、部長以上の者は明日までにこの場に来るように。では、解散」
ばらばらと帰って行った。すでに、この場にいる部長以上の役職の者は、残る事にした。
この間にこの惑星の部隊編成について教えておこう。これは、極秘事項になっている。誰にも話すなという厳命である。まず、この、第3銀河/35腕/第364惑星系は、前述してある通り、非常に重要な場所になっている。そのうちの第9惑星は、この惑星系の最も外側にあり、全土を軍が保有している軍事惑星である。
現在、総司令官イフニ・スタディン。
副司令官イフニ・クシャトル。
宇宙軍航空隊部部長セピア・ジャオウ。
宇宙軍武器関係部及び特殊装備部部長上川三里。
惑星防衛部部長(陸軍)揣摩和男。
通信部部長橘飛将。
他にも色々と部が存在しているのだが、我々の情報網はこれで精一杯だ。
宇宙軍兵力1,396,586。陸軍兵力47,298。
(秘)宇宙軍所有兵器一覧表、航宙機、AI-016型機389機。AT-970型機100機。RE-W18型機1,562機。EK-987型機9機。計2,060機。
兵器、通常レーザー型兵器390丁。非常時核兵器30,000個。開発中武器370種類。全種合計380種類。
(秘)陸軍所有兵器一覧表、対空型爆薬390t。滞空型魚雷38,976個。ライフル1丁/人。対宙型特殊爆薬3000t。全種合計395種類。
なお、この中には、未確認の武器も含まれる。
翌日になった。部長級の会合が始まった。議長は、スタディンが務めた。
「これより、臨時部長級会合を開始します。議題は、革命の余波を食い止める方法について、です。なにか、意見がある方は?ただ、言っておくが、実際に派遣する場合は、連邦議会の議決が必要になる。さて、いつ届くか…」
扉をたたく音がした。
「どうぞ」
中へ入ってきて、みんなに聞こえるような声で話した。
「報告します。本惑星標準時12:48に、中央政府より入電。第一級暗号通信です」
「内容は?」
「とちのなすちきちかにすなきちからからのな」
「つまりは?」
スタディンに目が集まる。
「進軍命令です。これより、わが軍は、革命の余波を防ぐために、進軍を開始する」
「分かりました。司令官殿」
「ついては、自分用の船を一隻使えぬか?」
「お二人だけで行かれるのですか」
「そのつもりだ。他の者達は、上級司令官に通達。「にとちきにんらのなかにすらな」と、送ってくれ」
「意味は何ですか?」
「送れば、返信が帰ってくる。それを見て考えろ」
スタディンとクシャトルは、戦場となる場所へ向かった。
同日、太陽系第3惑星の家にて、臨時ニュースが流れた。
「本日、第3銀河系全域に対して、非常事態宣言の通知が出されました。これを持って、第3銀河系にいる全ての一般人は別の銀河系に行く事になります。そして、先遣隊として、第3銀河系/35腕/364惑星系/第9惑星宇宙軍基地総司令官、イフニ・スタディンに進軍命令が出されました…」
「ちょっと、お母さん!これ見て!」
食器を洗っていた手を休め、
「なによ、騒々しいわね」
テレビを見て、唖然とした。
「スタディンに進軍命令。これって…もしかして…」
「第3次宇宙戦争だ。自分達も行く必要がある」
ばっと、立ち上がり、準備をして、一気にかけだした。
「ちょっと、どうしたのよ」
由井さんが、あとを追いかける。
「スタディンとクシャトルだけだったら、絶対にいけない。自分達も含めて、ようやく完成する物がある」
「何よ、それは」
他の子達も勢いよく由井さんの横を通り抜けて行く。
「ちゃんと、帰ってくるのよー!」
実際は、声が届いているかどうかすら分からなかった。