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第59部

「いいものだな。家族と言うのは」

「磯柿殿は、家族がいないのですか?」

「ああ、昔、別れた女房がいたけどな。それっきりだ。まったく、自分は女縁はまったくない」

「実は、私は男運が無いのです」

「ほう。それはいい。歳は、いくつだ?」

「今年で、27になります」

「27か…自分は、59だからな。結婚は無理か…」

「そんな事ありませんよ。昔は、20歳の若者が、70代の人と結婚したという話があります」

「それは、結婚の翌日が葬式だよ」

「そんな失礼を言ってはいけません。若者の方が、交通事故で先に葬式になるかもしれません」

「いや、それも失礼に当たると思うが…」

「とりあえずだ。3年たって、二人とも、まだ誰ともつきあっていなければ、どうだ?そのときはつきあってみないか?」

「それは、いいですが、法律的には問題は無いのですか?」

「大丈夫だ。なにせ、結婚の自由は、保障されておる」

「そうでしたっけ」

「そうだぞ」

「私はかまいませんよ。なにせ、あなたが62歳になる頃は、色々と変わっていると思いますからね」

「そうだろう?」

「とりあえずは、戦争になったときでも、生き抜いて、一緒になりましょう。ただし、3年後までに、誰とも付き合っていないと言う条件ですが」

「ああ、いい。そうしよう」

車は、快調に進み、空港に着いた。

「あれ?宇宙エレベータではないのですね」

「ああ、今回はスペースブレーンを使う」

「スペースブレーンとは、どんなものですか?」

「何!君は、ここまで送り届けたのに、そんな事も知らんのか」

「すいません」

「まあ、いいじゃないですか。知らないものはこれから学べばいいんですよ」

「そうだな。スペースブレーンと言うのは、航空機並みの手軽さで、地上と高度数百kmの地球低軌道の間を往復する、輸送システムの事だ。これが出た、2030年、とても、騒ぎになったと聞いておる」

「そんな物があったんですね。私、これまでずっとこの惑星の勤務でしたから、良く知らないのです」

「だったら、これから、詳しく知ればいい。それが、重要だ」

「はい!がんばります!」

「お着きになられましたね。ようこそ。この軍用飛行場、K-109-I、通称オーストラリアの中心部へ」

たしかに、ここは、このオーストラリア大陸の中心に近い場所だった。

「こちらへどうぞ」

その人が招いていく先には、通常の飛行機がずらりと並んでいた。

「我々が乗るのはどれだ?」

「これでございます」

彼が指差した先には、他の物とは明らかに違う飛行機があった。

「これは、親子ガメ方式と呼ばれておりまして、旧日本国の航空宇宙技術研究所が2020年の崩壊まで取り組んでおりました。その後は、アジア大陸/東アジア地域/西地方が引き継ぎまして、現在のように完成させたのであります」

ジェット機が一台あり、その上にロケットを乗せた飛行機だった。

「このジェット機の中にお客様がお乗りいただきまして、空中で分離して、そのまま宇宙空間まで出ます。普通ならば、そのままこの惑星の中へ降りますが、今回は、直接、第3銀河/35腕/第364惑星系軍の、総司令官の場所へ行きます。およそ、5時間ほどでつくと思われます」

「そうか、では、乗り込もうか」

「はい」

タラップが降りてきて、みんな、さっさと登って行った。


中には、軍の用品ばかりあった。

(まあ、しょうがないか)

スタディンは思った。

「では、急激なGの増加が感じるはずです。みなさん。トイレを済ますなら、後3分でしてください。分かりましたね」

操縦席にさっきの人が乗り込んだ。


「3分たちました。これより出発します。では、着席、及びシートベルトをしてください。そうしないと、死ぬ可能性があります」

全員、慌てて、シートベルトをした。

「では、出発します」

動きはじめた。すべるように、滑走路へ出て、一気に加速した。


これ以後、断片的にしか意識が無かった。


まず、最初の急激なGの変化により、頭に血が昇った。そして、気を失った。


次に覚ましたときは、ぼんやりと周りが回っていた。一瞬Gの加速が止まり、そして、逆に急にGが減少しはじめた。再び意識が無くなった。


最後に目を覚ましたときは、ちゃんと、到着していた。

「今回の最高重力は、約35.7を観測しました。これは、これまでで最高値ですね」

「あなたは大丈夫なんですか?」

「私は、訓練を受けておりますから、大丈夫です。それよりも、到着しましたから、お降り下さい」

振り向くと、誰もいなかった。

(自分は、ベルの船長だったときから、こんな事には弱いみたいだな)

スタディンは考えながら、船を降りた。


皆はすでに、船の外で待っていた。

「ああ、ようやく起きた?」

「結局、何分寝ていたんだ?」

「だいたい、到着してから、10分もたっていないと思うよ」

「はいはい。とりあえずは、これ飲んでね」

この軍用飛行場の係員の人に渡されたのは、ホットミルクだった。

「これで気持ちが落ち着くから」

「すみません」

「いいって、皆も飲んでいるからね。飲み終わったら呼んで。ここの司令官の部屋に行く必要があるからね」

「すみません」

「じゃあ、自分はあっちにいるからね」

さっさと歩いて行ってしまった。

「あの人は誰?」

「ここの飛行場の最高責任者」

「なんか、気さくな人だね」

「そうだね」

スタディンとクシャトルは、3時間と少しぶりに話し合った。その時、同じテーブルにいた、丙洋さんと和恵さんは、別の事を話し合っていた。しかも、誰にも聞かれないような小声で。

「そうか、すでに革命の準備が…」

「ええ。隣国ですでに革命が起こったと言う情報も…」

「我々は、この体制を維持する必要がある。これからも…」

「そうですね。出来るだけ早く…」

ちびちびと、ホットミルクを飲んでいた。

「あれ〜、二人ともまだ飲み終わらないんですか〜」

さっきの係員の人がこっちに向かっていた。

「もう、あの兄妹は飲み終わりましたよ〜」

「ああ、もうすぐだ。ちょっと待ってくれないか?」

「へいへい。了解しましたよ」

兄妹の方にあるいていった。くるりとこちらを向き、

「でも、後2分以内に飲み終わってくださいよ。そうしないと、間に合いませんので」

と言って、再び歩き出した。

「とりあえずは、この国を守りぬく事だ。そうしないと、この軍の存在自体が揺らぎかねない」

「そうですね。とにかく、それを第一目標にしましょう。彼らには可哀そうだが…」

「とにかく、行動を起こしましょう。それからです」

「むかし、この近くの飛行場にいた受付の奴を、私の部下にしている。そいつを呼び寄せて…」

「では、早速手配を…」

二人とも、軽く乾杯をして、一気に飲み干した。そのホットミルクは、二人にとって、とても重要な意味があった。


「ああ、ようやく終わりましたか、長かったですね」

「いや、実は、猫舌でな。熱いのは苦手なんだ」

「そうでしたか、まあ、こちらへ来てください。これからこの車に乗って、司令官の方へ…」

全員乗り込むと、運転手がいないのに、勝手に動きはじめた。

「この車は、規定人数になると自動的にプログラムされた動きをするようになっているのです」

「そのプログラムはどうやって変えれるんだ?」

「変更は不可能です。全てのプログラムは、作られたときに、入れられます。変えれるのは、規定人数ぐらいですね。それも、必ず、2人以上5人以下にする事が絶対らしいですが」

「この車はどこで売っているんだ?」

「これは、特注生産ですよ。軍が、この車を作る会社の方に発注して、作らせるんです。その時にプログラムする内容も決めておくみたいですがね」

車は、建物の前で止まった。

「さあ、到着です。ここが、現在のこの惑星の総司令官がいる、四軍統合庁舎です」

純白の壁面に、金色の統合の象徴である大統領章があった。

「すごいですな。ここの司令官は、なんて名前なんだ?」

「はい。現在の総司令官は、雨宮龍保です」

「そうか、まだあの人のままだたんだな」

「スタディン、知り合いか?」

「ええ、まあ、ちょっとね」

「とりあえず入りましょう。ここで立ちっぱなしと言うのもなんですので」

「そうだな」

一行は、この建物の中へ入って行った。

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