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第6部

「船長、この機械は?」

誰もがしそうな質問をしたのは、シアトスであった。

「この機械は、この船に搭載されている、通信機だ。リチャード・カオスが特別に組み立ててくれた。この機械を利用すれば、Lv.10の縮空間でも、それ以上でもいけるはずなんだ。この船自体を、タキオン粒子にして、その上で、行動をしようと考えている」

「それはとても妥当だと思います」

そういったのは、パリティ・チャートだった。

「君がこの席で発言するのはあまりないことだな。だが、私もそう思う」

「実行しますか?船長」

一応、みんなの前では「お兄ちゃん」なんていわない副船長のクシャトルが言った。

「そのつもりだ。ひとつ聞きたいのだが、この近くで縮空間へ移動できる穴はどこにある?」

「ここから、約30分ぐらいのところにひとつあります」

「そこへ行こう」

こうして、上級士官会議は終わった。


「着きました、船長」

航行士のシアトスが言った。

「今すぐ入れるか?」

「十分に入れます」

「では行こう」

その際、その機械を発動し、実際にタキオン粒子に自分の体がなっていくのを船の全員が感じていた。何か不思議な感覚だった。体の中から光があふれ出るような感覚が走り、それが唐突に終わったのだ。(体の中で電流が走っているみたいだな)船長はそう考えた。この実験の結果は当初の予想よりも相当良いものとなった。宇宙で初めて、公式に認められている船により、船全体をタキオン粒子化する事に成功したのだ。このことは次の寄港地で銀河大辞典に書き加えられることになった。そして、彼らの種族のことを辞典に書き加えられることになる。


「Lv.5まではなんにもありませんでしたね」

「しかし、次は油断できないぞ。これまでの銀河文明では入ったことがない世界だからな。みんな気を締めていけよ!」

「了解!」

みんなの元気な声がとてもうれしい船長だった。


さて、三惑星連邦第3惑星連邦本部に送られてきた最後の伝送文に対して驚いていた。

「ベルジュラックからの最後の伝送文にはわれわれ一同驚いています」

最初にこの会議の沈黙を破ったのは、宇宙関係総合省大臣であった。

「このような船の記録を探しましたが、まったくありませんでした」

「封印された船の伝説…」

次に口を開いたのは、特別参加の民族伝承家であった。

「惑星連邦に伝わる古い伝説を皆さんはご存知ですか?」

「どんな伝説だ?聞かしてくれ」

特別自治省大臣が言った。

「今からおよそ、100年前。この世とは違い、錬金術や魔法の類がない世界がある。その世界に行ってしまった、宇宙船のお話ですよ」

「その宇宙船はどうなったのだ?」

連邦大統領が尋ねた。

「二度と戻ってこなかったそうです。しかし、その後、われわれのところに届いたひとつの電信文のみを除いては。その電信文にはこう書いてあったそうです」

すでにみんなは黙っている。

「「われわれはこちらの世界を楽しんでいる。ここは「ニホン」と呼ばれる国だそうだ。もしもそちらに戻れたらこの国のことを話そう」と」

「それで終わりか?続きとかはないのか?」

「はい。それだけです。しかしそのことが示すとおり、この船の乗組員全員、もしかしたら戻らないのかも…」

この発言で、一同の気持ちはふさぎこんでしまった。会議は一時解散した。


「ただいまから、Lv.6のほうへ行きます。皆さん、何らかの衝撃がある恐れがありますから注意してください」

船内アナウンスをするのは船長の妹のクシャトル本人である。彼女は一回だけアナウンスをすると、自分の席に戻り、衝撃に備えた。その姿は、不時着する飛行機の乗客であった。

「行きますよ!皆さん!」

シアトスが叫ぶ。そのとき、体の中で何かがはじけるような感覚があった。そして再び意識がなくなった。


「…せんちょう、船長!」

頭がまだ混乱している中で、懐かしいにおいがした。

(ここは、どこだ?自分は、どうなった?)

首を左に向けると、点滴用のチューブが腕に刺さっていた。

(自分は、病院にいるのか?でも、ここは船の中だ。こんな設備はないはずだし、自分は、病院に行ったことがない)

だんだん眠くなってきた。船長はここでまた意識をなくした。


次に出てきたのは、草原であった。何もない草原。足元には、猫草のようなものが一面に生えている。自分が立っているところだけが生えていない。

(つぎは、草原か。いまや、第3惑星上にはない風景だな)

物音がしたので右を向いてみると、何もいなかった。試しに下を向いてみても何もいない。

(気のせいか…)

自分の意識がなくなってから、何かおかしいと思うようになっていた。

(自分はこの世界に来た事がない。なのに、なぜか懐かしいような感じがする。何故?)

左を向くと、生き物が立っていた。見覚えがあった。

(この生き物は、辞書でしか見たことがないな。確か「お地蔵様」とか言うんだっけな)

よく見てみようと一歩足を出すと、草がわれて、道を作った。

(面白い世界だな)

お地蔵様はなかなか近づいてくれない。むしろ遠くへいっているような感覚があった。

(なぜだ。なぜ、お地蔵様は近づかない。いや、もしかしたら自分が遠ざかっているのか?)

そう思って、足を止めてみると、お地蔵様は少し遅れてとまった。

(少し遅れてとまったということは、お地蔵様も動いてるということだ。なんか、疲れてきたな…)

再び眠くなってきた。草はもう動かなかった。スタディンは横になり、寝た。

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