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第57部

第7章 そして、戦争が始まった


「ああ、やっときた〜。遅かったじゃないの」

イブが、スタディンの元へかけていく。

「何していたの?」

「いや、ちょっとね」

「まあ、いいじゃないか。ちゃんと来れたんだからさ」

アダムが、イブをスタディンから離す。

「え〜、どうして〜」

「もう、帰るぞ。ホテルに。そんなに、引っ付いていたら、いつまでたっても歩けないだろう?」

「そうだね」

残念そうに離れていくイブ。

「どうしたの?なんか急に…」

「少し噂があってね。もう聞いたかもしれないけど、ここ最近、周りの国が、革命の危機があるらしい」

「ああ、それ、さっき聞いた。で、それを防ぐために、この国から軍事力を提供する恐れがある、と言う事だろう?」

リムジンがこちらに向かっている。

「さすがだね。これは、あくまで、うわさだから、信頼性は乏しいと聞いた。でも、現実になれば、いったいこの国も含めて、この宇宙とリンクしている並行宇宙はどうなってしまうんだろうな。多種多様な生態系を育んできたこの星は?」

「すべては、革命が起こるかどうかにかかっている。もし起こったら、自分は召集されるだろうな。なにせ、中将になったんだから」

「ああ、責任重大な立場に立たされる事になるな。でも、君はこの道に入った事を後悔する事は無いんだろう?」

「半ば、無理やりいれられても、この道に入ったおかげで、いろいろな方面に詳しくなったしね。後悔どころか、感謝しているよ」

リムジンがスタディンたちの前に止まる。

「お待たせしました。さあ、ご乗車ください」

この頃は、戦前の最も平和なときとして、歴史に刻まれる事になる。


家に帰り、ゆっくりしていると、電話がかかってきた。

「はいはい。宮野ですが」

由井さんが出る。

「え?スタディンですか?おりますが…はい。分かりました。しばらくお待ちください」

電話の送話口を手で押さえて、

「スタディン?電話よ」

「え?自分に?なんだろう」

とりあえず、電話に出た。

「はい。お電話代わりました」

「ああ、スタディン中将か。これは、テレビ電話じゃあないんだな」

「残念ながら。すいませんが、どなたでしょうか」

「私は、四軍統合長の磯柿丙洋だ。君とクシャトルに用がある。これから、すまんが私の所へ来てくれんか?」

「いいですが、場所は?」

「場所はな、清見町中央公民館の横にあるマンションの307号室だ」

「わかりました。行きましょう。しかし、犬も連れて行ってよろしいでしょうか」

「いいが、何故だ?」

「散歩ついでに」

電話を置き、服を着替えた。

「あれ?スタディンとクシャトル、どこへ行くの?」

コロが足元でこちらを見上げている。頭を軽くなでながら、

「軍の出頭命令だ。これから、四軍統合長の家に行ってくる」

「いいけど、どこにあるの?」

「公民館横のマンション」

「あんなところにいるの?」

「ああ、コロの散歩もかねて行くから。まあ、大丈夫だって、すぐに帰ってくるから」

家を出て行った。コロは、リードを付けて、元気に走って行った。


「公民館横の、マンションの、307号室」

「でも、どこのマンション?」

「公民館横で、3階以上のマンションは、1棟しか無いだろ?」

「ああ、清見町ハイランド・マンション」

「そう。そこだけ。でもこいつ、元気ありすぎるぞ」

どこまでも、走り続けていそうな走り方だった。時々止まっては、そこかしこのにおいをかいでいた。

「ああ、あそこだ」

コロのリードを引っ張ると、止まった。そして、四軍統合町の家へ行った。


このマンションは、レンガ造りで、直方体の形をしていた。玄関は、防弾ガラスがあり、玄関扉は、電子錠付だった。

「どうやって入るの?」

クシャトルが聞いた。足元では、コロがだれていた。

「ほら、あそこに機械があるだろう?」

スタディンが指差した方向には、四角い機械が置かれていた。一番上面は、斜め45度になっており、ボタンが押しやすいようになっていた。

「ここにある、ボタンで部屋番号を押して、中の人と話すんだ。そして、中から扉が開くようになっている。言うよりも産むが易し。実際にやってみよう」

ペポパという、間抜けな音がして、

「はいはい」

声が聞こえてきた。

「すいませんが、磯柿さんのお宅でしょうか」

「そうだ。君達は?」

「自分達は、イフニ兄妹と犬一匹です。ここを、開けてもらえないでしょうか」

「ああ、私が呼んだんだからな」

空気が漏れるような音がして、扉が開いた。彼らは、中へ入って行った。


中は、まあまあだった。

「こんな近くに、自分達の上官が住んでいたんだね」

「ああ、それは驚きだけど、どこに住んでいてもおかしくないからな。今の時代。国境が無くなり、何もかも失われた時代を経て、今がある」

歩いて、上がって、またあるいた。307号室までとうとう来た。

「ここだね。307号室」

「ああ、来てしまったな」

インターホンを押し、中から人が出てくる。

「おお、君達か、待っていたぞ。さあ、中へ入りたまえ」

招かれるままに、中へ入っていた。


中の部屋は、外と同じように、平凡な構造だった。

「で、私達を呼んだ理由を教えてください」

「まあ、それより、座りたまえ」

「失礼します」

椅子が2脚、部屋の真ん中に置かれていた。その前には、コ型の机と、椅子が置いてあった。そのすに深々と腰掛け、タバコを奨めた。

「いいえ。自分達は、未成年なので」

丙洋さんは、タバコをくゆらしながら、こう切り出した。

「実は、この国以外の国が、極めて危険な状態らしい」

「と、いいますと?」

スタディンが、聞いた。

「革命が起きるようなのだ。我々は、それが本国に飛び火するのを防がなければならない。君達に教えたのは、この家の近くで、各軍の将補以上の階級を持つものがいないからなんだ。そこで、君達に頼みたい。いずれ皆にも辞令が発布され、国民が知る事になるだろうが、君達を先遣隊として派遣したいのだ。すでに、連邦政府及び連邦議会からは、私の方に先遣隊派遣の件については一任されている。さあ、行ってくれるか」

こちらをみつめた。数秒かはたまた数時間か、長く短い時間が流れ、

「わかりました。で、どのような作戦になるのですか?」

クシャトルが言った。

「よろしい。作戦については、まずわが国の領域についての再考をする必要がある。これより、我らの新中立国家共同体について、本国。作戦を遂行する部隊を本国部隊。他の国については、他国として話を進める。さて、本国は現在、その周りにある球状星団も含めて、4つの銀河系を領域として治めている、そして、他国と領域係争中の銀河が3つある。その全てを本国の領域として、これより行動をする。これが本国の基本領域となる。それ以外の本宇宙空間上にある国は、2つの集団に分けられる。まず、本国を中心とした集団。そして、前の新暦363年宇宙戦争時において敵方となった集団。そこで、今回重要視されるのは、そのような集団ではなく、他国だ。なお、本国については、革命の機運はなきにしろあらず、しかし、他国との戦争状態になると、そのような革命の機運もしばらく収まるだろう。それを狙う。さて、長くなってしまったが、君達の任務は、まず、戦争になる前に、敵の戦力を測ってきて欲しい。そして、その情報を教えて欲しい。なお、敵も同じようなスパイを送り込んできているようだ。ちなみに今は、まだ休戦中になっている。もうすぐ、そんな話もどこかへ飛ぶだろうな。ということで、君達には、第3銀河/35腕/第364惑星系軍部に、行ってもらう。あそこが我が軍の基地の中で、最も他国に近いんだ。詳細は、現地に送っておく。以上だ。辞令は、明日交付される事になっている」

「分かりました。最善を尽くしてきます」

「頼んだぞ。この国の未来は君達の肩にかかっているんだ」

彼らは、外へ出て行った。


コロは、話している間、ずっと、おとなしかった。

「どうする?あんな安請け合いして」

「言っちゃった物はしょうがないでしょう?あの部屋の中でも言った事だけど、最善を尽くすほか無いと思うな」


家に帰ってきた。

「お帰り。どうだった?」

「明日になったら分かると思うよ。とりあえず、今日は寝る」

「そう?ま、明日を楽しみにしておくよ」

スタディンとクシャトルは、ベットに倒れこみ、そのまま夢も見ずに寝た。

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