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第56部

家にはすでに、上で分かれた二人が帰っていた。

「遅かったね。どこに行っていたの?」

「落ちる場所間違えてね。大阪へ」

「エー!あの箱のままで?」

「いやいや、そんな訳無いだろう。あの箱から脱出して、偶然ついたのが、大阪だったんだ」

「ふーん。まあ、いいや。そうそう。スタディンとクシャトルに、また3年前みたいに、政府から手紙が届いているよ。あと、他の人からは、特別自治省からの手紙も入っているよ」

「え?また?」

「え?何で自分達に?」

の、二通りの答えがあった。スタディンたちは、それぞれ届いた手紙を早速開けた。スタディンとクシャトル以外のあの時犯人を捕まえるのに協力した人達は、みんな、感謝状についてだった。

「先日、航宙機ハイジャック版の逮捕についての、感謝状をお渡ししたいので、以下の日付で、ワシントン連邦政府特別自治省ビルに来てください。

 記:新暦370年7月1日午前10時より開始

   旧アメリカ合衆国・ワシントン

   連邦政府特別自治省ビル最上階

以上

連邦政府特別自治省大臣:大垣泰三」

そう書いてあった。

「今日は何年の何日?」

「新暦370年6月14日だよ。あと、17日ぐらいだね」

「スタディンたちは?なんて書いてあったの?」

「本日、決定しましたことを謹んでお伝え致します。新暦370年7月2日に、特別自治省/兵武省/宇宙軍庁/宇宙軍褒章・勲章授与事務局より、褒章が授与される事になりました。以下の場所へご友人、ご家族などを連れてきてください。

 記:新暦370年7月2日午前10時より開始

   旧アメリカ合衆国・ワシントン

   宇宙軍総司令部第1講堂守衛詰所

                    以上

宇宙軍褒章・勲章授与事務局局長:新人康一」

「また、あそこに行くのかよ。しかもこれって、日付だけしか変っていないし」

「それに、あと、17日間何をすればいい?」

「何も無いな。まあ、勉強でもしておいたら?」

「それしかないか」

ハァーと、深いため息をつき、

「自分は、先に戻っておくから」

とだけ言い残して、先に上の部屋へ戻ってしまった。他の人達も、それぞれの部屋に戻って行った。


15日経った。

「もうそろそろ、出発だね。上にいる両親には伝えた?」

「ああ、もう伝えてあるよ」

「よし。スーツと軍服を忘れずに持て行けよ」

「分かってるって」

出発した。


「とりあえずいえるのは、再びここに来る事になるとは思ってもいなかったよ」

「ああ、そうだな」

再び、新ワシントン国際宇宙港に到着した。前と同じように。

「では、また、私達のホテルにお泊まりになられるのですね」

クリルさんがこちらを向きながら言った。

「そう言う事になるでしょう」

達夫さんが言った。

「では、こちらへどうぞ」

全ては、前と変らなかった。空港内では、放送がかかっていた。

「本日は新暦370年6月30日午後3時30分です。日付変更線をお通りになられる方は、日付を1日戻してください。お間違えの無いよう、お願いします…」


「さあ、到着しましたよ。今回は、連邦政府特別自治省ビルと、この前と同じ場所でしたな」

「そうです」

「では、明日の朝、9時にここへ降りてください。そうすれば、間に合いますので」

「分かりました。お願いします」

各自、前と同じ部屋に行った。


その日、夢を見た。しかし、翌朝には忘れていた。


「おはよう。今日が、当日だね」

「そうだな。今、何時だろう」

「今は、7時半だな」

山川さんが答えた。

「もうそろそろ起きとかないと、間に合わないぞ」

ガバッと飛び起きて、みんな着替えた。


「とりあえず、今日はスーツで、明日は、軍服だよ」

「大変だね」

「ほんとだよ。でも、自分の意志で、ここまで来れたんだから、これからもがんばれると思うよ」

「それじゃあ、行こうか」

「ああ」


8時半まで、朝食をゆっくりと食べていた。8時45分にあのリムジンが来て、乗せて行った。


「少し早くつきますね。この分だと」

「それだとありがたいです。ここの地理はよく覚えていないので」

「そうですね。連邦政府特別自治省ビルは、ワシントンの昔、フェデラル・トライアングルと呼ばれていた場所にある、税関の建物をそのまま使っています。なので、新規に建物を作る必要が無くて、とても、安上がりだったと聞いています」

「いつの話ですか?」

「ワシントンが、連邦政府の首都に定められたときですから、約350年前ですね。それまでは、どこに首都があったか分かりますか?」

「東京」

「正解です。元々東京にあった首都が、あのテロによって、放棄されたんですね。いまも、まだ放射能が多い地域があると聞いていますよ」

「それは、大変でしょうね」


30分ぐらい取りとめの無い話をしている内に、その建物が見えてきた。

「さあ、ここが、連邦政府特別自治省ビルです。どうぞ、お降りください」

扉が、少しきしみながら開き、降り立った。中へ入ると、外の熱気が伝わっていないかのように、とても、寒く感じられた。

「今日の外気温は、いったい何度なんだ?」

「天気予報によると、42.4℃だって言っていたよ。このぶんだと、この中は、25〜28℃だね」

受付があったので、そこへ行き、内容を言うと、

「それを証明するものはありますか?無ければ、この場で、お帰りください」

と言われた。すぐに、あの手紙が出てきて、

「これがその証明書です」

といい、全員分を提出した。

「分かりました。これが本物かを確かめさせていただきます」

突然紙を、ある溶液の中へいれた。紙は変質もせずにその中にあった。再び引き上げられて、

「これは、本物ですね。では、あそこのエレベータを使って、最上階から1階下に行ってください」

言われるがままに、その通りにした。


その階には、人がいた。

「ようこそいらっしゃいました。宮野瑛久郎様、丹国クォウス様、イフニ・スタディン様、イフニ・クシャトル様、エア・アダム様。お呼び致しますので、あちらの部屋でお待ちください」

一つの部屋の扉が、音も無く開いた。その部屋の中へ入ると、再び自動的に閉まり、鍵もかかった。

「鍵までかけるなんて、要人暗殺未遂が続いているから、意識しているのかな?」

「そうだと思うよ。まあ、あと、45分間もあるから、のんびり待たせてもらおう」

それから、40分後、扉が再び開き、

「お待たせしました。あの階段をお使いになられて、一階上に行ってください」

と言われた。


階段は、普通の階段だった。トテトテと上がっていくと、扉があり、それを開けると、AK-70を持った人が、こちらを向いた。

「なんで、ここ最近見る銃が、全部カラシニコフなんだろう」

「偶然じゃない?」

「少し早いな」

銃口が向こう側を向く。

「すまんね。こんな出迎え方で。ここ最近、暗殺未遂が増えてきているから、それを防ぐために必要なんだ」

「はあ、分かりました。で、10時には早いですが…」

「そうだな。もう渡してあげよう。さて、ここに立って」

指示された場所にみんな並んで立ち、ひとりずつに感謝状が手渡しされた。

「これからも、いろいろな事が起こると思うけど、その際も、協力をお願いするよ」

「はい!喜んで!」

そして、彼らは、帰って行った。


「あれ?早いお帰りですね。今が10時ですよ」

「先に終わらしてくれて、それで――」

「なるほどね。さて、これから、ホテルのほうに帰りましょうか。それから、また、この町を観光でもしてくださいよ。色々と変った場所がありますからね」

「ありがとう」

ホテルに帰り、観光をして、今日は終わった。


翌日、

「起きろー!」

「ぅわー!」

山川さんが、次々と起こしていく。

「時間だぞー!早く着替えて、授賞式に行くように準備しろー!」

起きた人から次々と、着替えはじめる。10分後には、全員出発できるようになっていた。

「よし。では、朝食は、リムジンの中で取ってくれ。もう、遅刻するかどうかぎりぎりなんだ」

「げ、今何時なの」

下に降りながら聞いた。

「いま、9時だ。授賞式は?」

「10時から」

「ここから、前は何分かかった?」

「…忘れた」

「だろ?だから、あせっているんだ」

ロビーにはみんな集まっていた。

「来ましたね。では急ぎましょう」


その後、道路を30km/hほど、速度超過したが、誰も捕まえに来なかった。その頃、車内では、

「すいません。昨日早く寝たんですが…」

「本当か?本当に早く寝たんか?」

「はい。天地神明に誓って本当です」

「クリルさん。あなたの息子さんでしょう?なぜもっと、叱らないのですか?」

達夫さんが聞く。

「私は、あまり、叱ると言うのは嫌なのでね」

「どうして?時には叱る事も重要ですよ」

「いつも、叱ってばかりだと、行動する=叱られる、という等式が生まれて、行動が出来なくなると思うのです。だから、私は、あまり叱らずに、今まできました」

「これからは?これからもこうしていくと、いずれどこかで、終わる事になるぞ」

「それまでの間、私は、ずっと続けようと思います。それが、私の信念ですから」

「信念か…」

「みなさん。着きましたよ。宇宙軍総司令部第1講堂守衛詰所に」

目の前には、見覚えのある建物があった。

「久しぶりだな。ここに来るのも」

中から人が出てきて、

「ああ、あなた達ですか。さあ、急いでください。あと、15分で始まりますから」

「ヒェ〜。もうそんな時間なの?」

「急ごう。ここから、2kmもある」

みんなは、ばたばたと走り、到着した。

「ああ、お待ちしていましたよ。スタディン宇宙軍将補殿、クシャトル宇宙軍将補殿。さ、こちらの出入り口からお入りください」

すっと開けられた扉の中へ、みんな吸い込まれて行った。


式は、何事も無く行われた。先の反政府組織掃討作戦によって、スタディンとクシャトルは少将相当官からまた1.5段階特進し、宇宙軍中将となった。同じ階級の人は、みんな、40歳を超えていた。しかし彼らは、まだ19と18だった。


「これらからどうするの?」

式が終わり、最後の講演は聞かずに外へ出て行った。そこで、一人の人に呼びとめられた。

「ああ、そこにいたか、イフニ兄妹君」

その声の方向に体ごと動かし、

「あっ、あなたは、雨宮龍保さん」

「ああ、君達のおかげで、自分も、昇格したんだ。しかし、君達もすごい。私と同じ階級なんだからな」

「え?ということは、あなたも…」

「宇宙軍中将だよ。これからはね」

「へー、そうだったんですか」

「それはそうと、ひとつ、まだ未確認なんだがね、もうすぐ君達にも話がいくと思うから、先に話したい事があるんだ。少しいいかな?」

「ええ、もちろんです。しかし、どこで話しましょうか」

「少し離れているが、誰もいなくて、誰も見張っていない場所がある。そこで」

「分かりました。では、そこで話しましょう」


3分ぐらい歩くと、その場所が出てきた。

「ここは、昔は、薬草園として出来た場所なんだ。いまは、全ての薬草が別の場所に移されていて、ここには、見ての通り何も無い」

「それよりも、話っていうのは何ですか?」

「ああ、そうだな。実は、この国以外の国に、革命の機運が高まっているらしいんだ。もしかしたら、この国も危ないかもしれん。そして、この国はそれを防ぐために、軍を派遣する可能性があるんだ。今はあくまで、可能性に過ぎないが、恐らく実際に起きるだろう。そして、そのときは、真っ先に、宇宙軍が派遣される。君達も、辞めるのならば、今しか無いぞ。それに、君達の昇格の速さは尋常じゃない。裏で何かがあるように思えて仕方が無い。ああ、それと、もし、私の所へ来るように辞令が届いたら、大歓迎で受け入れるからな。では、また会う時に。もしかしたら、次は戦場かもな」

「そうならない事を、願っていますよ」

彼らは別れた。

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