第53部
第6章 元に戻ってから
「みんなおめでとう。第3銀河/35腕/第364惑星系及び周辺の、反政府組織は根絶されたと言う情報が入っている」
「ありがとうございます。第2惑星第3師団司令官殿」
「いやいや、かしこまらなくてもいい。君達の活躍も私の耳に届いているよ。昇格の推薦をさせてもらおう」
「ありがとうございます」
「では、下がっても良い」
「失礼しました」
扉を閉めて、コンティンスタンスさんの家に戻る。
「ただいま〜」
「お、クシャトル。お帰り」
「皆は、もう準備できたの?」
「とっくの昔に。これから久し振りに家に帰るんだから」
「何ヶ月ぶり?」
「えっと、2ヶ月ぐらいかな?」
「準備が出来たなら、出発しなさい。ああ、それと、全員これを持っていなさい」
「これは?」
「上級魔法取得者証明証。これがあれば、魔法協会から、色々な保証が受けれる」
「とりあえず、必要になった時のために、受け取っときましょう」
「それと、軍服には、中級の代わりにこれを張る事になっているから」
「分かりました」
私服に着替えながら、答えた。
「ああ、君達、最後に、到着前日に、確認した最後の魔力は知りたくないか?」
「知りたいですね」
「では、発表するぞ。クシャトルが、342。スタディンが、365。アダムが、333。イブが、313。シュアンが、298。クォウスが、296。ルイが、289。瑛久郎が、288。愛華が、169。まあ、これは、いわゆる、最高値だからな。しかしまあ、すごい伸びようだな。私をゆうに超えている」
「これはこのまま、変らない値なんですか?」
「いや、少しずつ下がっていく。だから、鍛錬は生涯する必要があるんだ」
「わかりました。これからもがんばります。これまで、ありがとうございました」
「ああ、君達も、元気でな」
「それでは、出発〜」
「おー!」
「とりあえず、普通の船を予約しているから、それに乗るからね」
「分かった」
あの細い路地を通っていく。出てきた場所を、左に曲がる。ここへ来た道の逆の順序で、帰って行った。
「よし。ようやく到着だ。この宇宙港に」
「私達が乗る船はどれ?」
「後1時間後に出発する便」
「もうそろそろ、搭乗手続きの時間だね」
「ああ、そういえばそうだな」
そう言っている間に、放送が流れてきた。
「お客様に放送します。あと、1時間で出発する本惑星発、第3惑星ヘシオドス着便に、ご搭乗なされるお客様は、搭乗手続きの時間ですので、第34ゲートへお集まりください。繰り返します……」
「この船に乗る事になっている。さあ、急ごう」
船の搭乗手続きを無事に終わらして、乗船した。
「これから、第3惑星までは、だいたい、1週間ぐらいかかる。まあ、その間はこの船にずっといる事になるんだけどね」
「ここは、第3惑星みたいに衛星がないの?それに、宇宙ステーションもなかったように見えたけど…」
「そうだよ。この惑星は、この太陽系のうち、衛星が無い惑星なんだ。そんな惑星はこの第2惑星を含めた、内側の惑星しかない」
「何で出来なかったの?」
「そもそも衛星がどうやって出来るかは知っているよね」
首を横に振るクォウス。
「まずそこからだね。衛星が出来るまでには、いくつかの条件があって、まず、大体1千万年ぐらいの間に、惑星の核となる大きな小惑星が出来る。他にもそれほど大きくならなかった小惑星がたくさん出来る。そして、その核となる小惑星の作られる時代が終わると次の時点に移る。その小さな小惑星が、大きな小惑星の重力圏に捕まり、引っ付いてゆく。これで、惑星が出来る。つぎに、引っ付き損ねた小惑星が、同じように小さな惑星を形成する。これが今の衛星になるんだ。その小さな惑星が、大きくなった惑星の重力圏に捕まる。だけど、小さな惑星も、なかなかの速さで回っているから、なかなか落ちない。そうこうしている内に、同じ軌道をただひたすら回っているだけの、衛星になるんだ」
長々と説明をする瑛久郎。
「物知りだね」
「いや、君が物事を知らないだけだと思うよ」
「え〜?そんな事無いよ〜」
「これからは、色々な事を知っておかないといけない時代だからな。とりあえず、部屋に向かうよ」
「へーい」
「気が無いね」
「はいはい」
「とにかく、乗るぞ」
全員が、船に乗り込んだ。出発30分前だった。
「ここが、私達の部屋。見失わないようにしないといけない。何せこの船は、客室が130もあるからね」
「それって、多いのか少ないのか分からないよ」
「多いほうだね。とりあえずは」
「全部同じような客室なの?」
「そうだね。基本的には同じタイプの客室だね」
「とりあえず、廊下に突っ立っているのは迷惑になるから、中へ入ろう」
「賛成」
すっと、横に扉が動き、中へ入った。
中は、なかなかよかった。
「大体の客船って、みんなこんなふうに、落ち着いた内装を取るよね」
「そうだよ。長い間、派手な内装を見ていると、精神的に不安になるんだ。それで、基本的には落ち着いている内装をしているんだよ」
「そうなんだ〜」
部屋は全部で7つあった。まず扉を開けて、中へ入ったところがリビング。そこを中心として、平面的に広がりを見せている。入って、右側の部屋が、廊下側から、トイレ。お風呂。押入れ。左側の部屋が、3部屋とも、寝室となっていた。寝室は、中にも扉があって、自由に行き来できるようになっている。
「これで、夜中も安心だね」
「まあ、誰か入ってきたら、一箇所に固まれるし、逃げる事も出来るしね」
部屋から、出て、あちこち歩き回った。
船が発射する1分前に部屋に入り、リビングに置いてあるソファーに全員座った。
「さあ、これから、家に戻るぞー!」
「おー!」
みんな、意気込んだ。
自動音声が流れてくる。
「本船はあと、30秒で出発します。みなさま、部屋に戻れらて、リビングのソファーについている、シートベルトを締めて、落ち着いて、お座りください」
少し間が空き、
「10秒前、9、8、7、6、5、4、3、2、1、発射します」
すっと、軽く衝撃が走り、重力がかかっている事が分かった。体が、すぐにソファーに押し込まれた。
「現在、第3惑星標準重力対比5.6G。高度第2惑星表面上より56km。本日は、ご乗船いただきまして、まことにありがとうございます。現在、第3惑星に向けて、推進中でございます。しばらくの間、過重力がかかりますが、御了承下さい。残り時間を言います。あと、18秒…15…10、…5秒前、4、3、2、1、現在、第3惑星標準重力対比3.5G。高度第2惑星表面上より534km。現在、第2惑星重力圏を通過中です。座席から御立ちになられるのは大変危険ですので、今しばらく、そのままの姿勢でお待ちください」
1分ぐらいしてから、同じ声が天井から降ってきた。
「現在、第3惑星標準重力対比1.0G。高度第2惑星表面上より980km。本船は、第2惑星重力圏を通過しました。なお、これよりしばらくして、無重量状態になります。その際は再び放送します。みなさま、本日は、エア航宙社を、お選びいただきまして、まことにありがとうございます。なお、これより、ご自由に行動してください」
放送が終わった。
「もう、立っていいっていう事?」
クシャトルがアダムに聞いた。
「そう言うことだと思うよ」
シートベルトを外し、ソファーから立ち上がる。
「これから、まあ、大体だけど、何事も無ければ、1週間で着く。ここ最近はね」
「え?それって、どういう事?」
アダムの発言に、スタディンが聞いた。
「ちょうど、今頃は、最接近になるんだ。この、第2惑星と、第3惑星がね」
「ああ、だから、短くなるんだ」
「そういう事。昔は、星間旅行なんて、出来なかったけど、観測には絶好のときだったからね。それが今は、絶好の旅行シーズンになっているんだ。燃料も節約できるし、早く行ける。いまは、すごく、お客が多い時期でもあるんだ」
「ああ、だから、ここ最近なんだね」
「そういう事。さて、この1週間は、何して過ごそうか」
彼らは、ほとんど、遊んで過ごした。しかし、魔力の鍛錬は忘れていなかった。