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第45部

10時になり、トランペットの音が鳴り響いた。スタディンが期待した遅刻者はいなかった。

「大統領閣下が、こちらにいらっしゃいます。皆様、盛大な拍手をお願いします」

自分達が入ってきた扉が開き、周りに黒いスーツを着てサングラスをかけた人達に守られながら、大統領が来た。軍関係者は例外なく立ち上がって敬礼をした。

「続いて、各大臣です。みなさま、盛大な拍手をお願いします」

そのままの格好で、観覧席の人達が、拍手をした。軍関係者は、敬礼をしたままだった。

「みなさま、ご着席ください」

今度は出席者全員が座った。

「これより新暦366年、宇宙軍褒章授与式並びに特別昇進関係式典を開始します。国歌斉唱」

全員立ち上がり、国家を歌った。

「皆様、ご着席ください。では、先の宇宙大戦における、功労賞等の授与式を開始します」

次々と名前を呼ばれ、返事をしてゆく。みんな前には出ずに、その場に座ったまま返事をしていた。

「イフニ・クシャトル」

「はい!」

元気よく返事をする。

「イフニ・スタディン」

「はい!」

妹に負けず劣らず、元気な返事をする。そのまま式は流れていった。

「これを持ちまして、功労賞の授与式を終わります。なお、現品は、各家庭に送付いたします。続きまして、先の宇宙大戦において、特進を受ける者の辞令の発布」

再び名前が読み上げられてゆく。今回は、名前の後ろに少し言葉が続いた。そして、誰も返事をしなかった。

「イフニ・クシャトル。あなたを、2階級特進とする」

「イフニ・スタディン。あなたを、2階級特進とする」

これもまた、最後まで言った。

「これを持ちまして、特進の辞令の発布を終了します。なお、階級証については、功労賞と同時に送付します。以上を持ちまして、宇宙軍褒章授与式並びに特別昇進関係式典を閉会します。みなさま、お忙しいところありがとうございました。引き続き、現兵部省大臣八継太一郎によります、特別講演がございます。お時間がよろしかったら、この講演も聞いてくださいますように、お願いします」

いきなり、全員が立ち上がり、講堂の外へ行った。なかには、何人かが残っていた。だが、その中には、クシャトルやスタディンたちの姿は無かった。


守衛詰所には、みんな集まっていた。

「おお、遅かったな。これからどこかで昼ご飯にしようと思ってるが、どうする?」

クリルさんが、スタディンとクシャトルに聞く。

「とりあえず、この服を着替えないと」

「ああ、そうだったな。じゃあ、とりあえずホテルに戻ろうか」

「そうですね。あのリムジンは?」

「ああ、もうこちらに向かってるはずだ」

「そうですか、じゃあ、もう少し待ちましょう」

後ろから、声がかかった。

「あれ?船長ですか?」

「え?」

スタディンが振り返ると、見覚えのある顔があった。

「忘れましたか?ベルに乗船していた、シアトスです。ほら、あの操縦手だった」

「ああ、覚えているとも」

「懐かしいですね。実は、私も昇格したんですよ」

「そうか、それはおめでとう」

本当にうれしそうに話すスタディン。

「ありがとうございます。あなたも昇格したじゃありませんか。すごいことですよ、20歳未満で宇宙軍将補まで来る人は、この連邦政府が発足してから、誰も成し得なかった偉業なんですから」

「そうなのか?ああ、そう言えばな、何で自分達は大佐から始まったのかがいまだに分からないのだが」

「ああ、それはですね。宇宙船の船長になるには、大佐以上の階級じゃないといけないからなんです。何故船長にしたかったのかは分かりませんが、そういう事なんです」

通路から色々な人が出てくる中で、見覚えがある人がこちらに近寄ってきた。

「あれ〜?船長ですか?」

「ああ、ルミテイスと、マテリアルか」

「ひどいですね。一番出演回数の多い自分は忘れておいて、一番出演回数の少ない人達は覚えてるのですか」

「いやいやいや、ちゃんと覚えていたとも。ただ、すぐに出てこなかっただけだ」

「それを忘れてるって言うんです。まあ、いいですけど。君達も特進かい?」

「そうです。まあ、自分達は、これで大佐になれたんですが」

「ほう?そうか、だが私の方が上だな」

「え?シアトスは、どの階級なんですか?」

「私は、宙佐長だから、君達よりもひとつ上だな」

「ということは、船長以外の全乗組員が、1つ特進ですか」

「ま、そう言うことだな」

「すごいね。みんな昇進したんだ」

「そうですよ。船長」

「あれ?みんな集まって何しているの?」

「ああ、やっときたか。中の特別講演はどんな感じだった?」

「聞ける代物じゃないな。まあ、あの人は、元からこういう風な講演には向いていない性格なんだ。自分だけならいいが、他の人が居るととたんに緊張して、何を言ってるか分からなくなる」

スタディンがみると、フラッシュとコミワギがいた。

「ああ、君達も特進したんだな」

「そうです。まあ、あの時乗り込んでいた人は、みんな1つ特進みたいですよ。ただ、あなた達は、特別視されているみたいですがね」

「そういえば、何故自分達が選ばれたんだろう。君達の方がいいと思うのに」

「それは、階級変更の決定権を持つ人に聞いて見てください」

「誰か呼んだか?」

みんなが、詰め所を見た。そこには、宇宙軍幕僚長と特別自治省大臣がこちらに向かって歩いていた。皆は敬礼をした。

「ああ、固くならんでもいい。リラックスして」

「幕僚長殿。なかの特別講演はいかが致しましたか?」

「ああ、あいつは、こういう事には向かんようだな。まったく何言ってるかが分からん」

「幕僚長殿。ひとつお尋ねしたい事があるのですが…」

「ああ、なんだね。えっと、君の名前は?」

「はっ。私の名前は、イフニ・スタディンです」

「ああ、そうか、イフニ・スタディン君か。君を何故大佐にしたか。それはだな、君の中にある魔力に頼ろうとした面はある。だが、それ以外にも理由があったはずなんだが、忘れてしまったな」

「忘れてしまったのですか。では仕方がありませんね」

「おーい。そこで話しているスタディンとクシャトル。リムジンが来たぞ」

「ああ、分かった。すぐ行くよ。では」

「ああ、行ってこい」

「では。大臣閣下。幕僚長殿。あと、乗組員一団」

「その言い方はひどいですよ。船長」

にこやかに見送る人達がいた。にこやかに見送られる人達がいた。彼らは近い将来、出会うことを約束された。そして、それぞれに道へと歩いていった。

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