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第4部

この海洋惑星は、太古の昔より海のみしか存在しておらず、「リク」というものを見たことが無い生命体ばかりであった。シャトルで水面上へ降り立つと、すぐに何者かが寄ってきた。そして、ひとつの機械を差し出し、耳に入れるに指示した。イヤコムのようなそれは、この惑星で作られた膨大な機械のひとつであった。耳に入れるとすぐに彼らの話が分かるようになった。

「すいませんでした。このようなことに気づかずに。あなたたちは銀河文明のどの惑星にも立ち寄られたことが無いのですね。私たちは「ソラリア」という種族です。この惑星には、「ジージョ」という名前がついています」

「歓迎をありがとうございました。私たちはここから300光年ほど離れたところにある、太陽系の三惑星連邦宇宙軍の代表です。今まで3つの惑星以外の宇宙を見た事が無かったのでその研究に来ました」

「すると、あなたたちは銀河文明に所属していない人たちということですか?」

「その通りです。私たちはここまでどうにかこうにか来ました。すいませんが銀河文明について少し教えてくれませんか?」

「分かりました。しかし私たちよりもここのコンピューターのほうが詳しいと思いますので、そちらのほうに話をしてください。ほとんどのことは分かるでしょう」

「ありがとうございます」

二人はお礼を言って、この海に入った。この海は地球の海ととてもよく似ている。もちろんこの二人は、酸素ボンベなど必要なものを身に付けて海に入っていった。


海の中はとても澄んでいて、計り知れないほどの遠くまで見渡せた。

「着きました。ここが入り口です」

そういわれて二人が見たその先には海底洞窟が広がっていた。

「ここから入るのですか?」

「そうです。ここ以外に近くに入り口はありませんから」

そういわれて入って行った。洞窟の中は最初見たよりも広かった。後ろを振り返ると、半透明上のドームが閉まっていた。そして水が少なくなっていった。

「安心してください。これは通常の措置です。この半透明のドームはとても固い素材で作られているので大丈夫です」

(そういわれてもここは相当深いはずなので、あまり安心はできないが、とにかく今は前を見るべきだ)

そう思って、兄妹は歩き始めた。


洞窟を歩いてどのくらいの時間がたっただろう。突然とても広くまぶしいところへ出た。今まで洞窟が暗かったし、基本的には相手の姿が見えないような闇の中だったので、よく分からなかったが、この明るさで分かった。かれらは、第3惑星に住んでいた、「イルカ」という種族に良く似ているのだ。

「こちらです」

スタディンの考えは一言で消えた。

(これは第3惑星にいたイルカとは別の生き物だ)

彼についていくととても古そうな機械が前にあった。

「この機械は何年前に作られたのですか?」

「おおよそ3万年ほど前だと聞いています。この機械は銀河大辞典といわれており、今までの歴史の一部が収録されています。ところどころ欠落していたり、不明瞭なところがあったりするのは、ご了承ください。それでは後はこのマイクに言えばなんでも情報を手に入ります。終わりましたら外のものにお伝えください。彼が案内しますので」

それだけ言い残して彼は去っていった。

「始めるか」

「うん!」


そして数時間が過ぎ去っていった。彼らがほしい情報は手に入った。そして、もうひとつの任務をすることになった。


「終わりました」

外に彼の仲間がいたのでそう伝えると、

「分かりました。先ほどから、私たちの王があなた方に会いたいと申しておりますので、そちらに案内させていただきます」

それだけを言って、彼は後ろを向き泳ぎ始めた。彼について行き、半時間が過ぎたときに、

「着きました」

とだけ言った。

目の前には、とても豪華な装飾をされた扉があった。音も無く開いていく。


「よく来てくれたね。銀河文明以外の姿を見るのは久しぶりだからね。少し興味があったんだ」

出会って最初から軽快に話が続いていく。

「君たちはここから300光年ぐらい離れたところに住んでいると言っていたね。どんな惑星系なのかな?もしかしたらそっちのほうにも行くことがあるかもしれないし、こうして会ったから、これを縁と思って外交関係も築き上げていきたいからね」

ここで息がきれて、その隙にスタディンは尋ねた。

「すいませんがあなたの名前を伺えないでしょうか?それに、外交関係を築き上げていきたいのは私たちも同じ気持ちです。惑星連邦代表としての外交官の権利もあります。ここで条約を結び、これからどちらかがいなくなるまで仲良く行きたいのですが…」

「それはいいね!早速準備をするからそこで待っていてくれたまえ」

それだけを言うと、王は去っていった。

「…行っちゃった」

「すごいしゃべりかただったね」

「うん。すごかった」

それから二人は黙り込んでしまった。


「ここでお待ちください。船との連絡はあそこのボタンを押していただくと、この中の誰にも聞かれること無く話せます」

「ありがとう」

それだけ言うと彼は去って行った。兄妹は、ボタンを押して、船との交信を開始した。

「こちら船長だ。宇宙船「ベルジュラック」号よ、応答せよ」

「こちら宇宙船「ベルジュラック」号です。どうぞ」

あまり音質は良くないが、話せるのでそのまま本題に入った。

「本惑星に降り立ってからの行動とその情報をそちらに送る。そちらのほうで保存してくれ。ただし、私が帰らないようだったら、このデータを開けてもいいが、基本は、帰るまで開けるな」

「分かっていますよ。船長。交信終了」

「終了」

交信は終わった。その後、兄妹はこの情報を確認していた。

「ねぇ、お兄ちゃん」

「なんだ?」

「この情報は本物だと思う?これは、三惑星連邦では考えられない情報だよ?」

「でもこれを信頼するしか今は無いからな。とりあえずこの情報は正しいと思っていよう」

実際はこの情報のすべては真実であるが、これは、有史以来初めて人類が、銀河文明と実際に接触した初めてのケースであったので、正しいかどうか分からなかったのだ。

「そうだね」

そこで、扉が開いて、先ほどの彼が言った。

「準備ができました」


再び同じ場所まで彼についていった。しかし今度は彼も中へ入って来た。

「お客様はこちらに座ることになっております」

そうやって案内された椅子は、とてもゆったりとしていて、座りやすかった。

「フカフカですね」

「はい。毎回同じお客様がいらっしゃるとは限らないのでその時々にあわせて作るのです」

「材料はどうしているのですか?」

「機械が作り出します。なので材料は必要ありません」

それだけ言うと、目の前に机がどこからとも無く現れた。

「この机もお客様の体格に合わせて作っているのです」

兄妹は、ここまで高度な文明保有者にあったことと、これから何が起こるかわからないので、少し緊張していた。しかし二人ともそのことを表に出さないようにしていた。そして、奥から王が現れた。とても豪華な服を身にまとい、とても高そうな冠を頭にかぶせ、そして、ゆっくりとこちらへ向かって歩いていた。

「お待たせしてすまなかったな。この服を着るのに手間取ってしまってな。さて、これから条約批准の手続きをしたいと思う。条約の原文はこちらとそちらの両方が作ったやつをあわせて作ってある。だがその前に一目見て確認してくれ。それがこの星のしきたりなんだ」

そこまで言って、一冊の本が差し出され、兄弟は時間を掛けて確認をした。

「ハイ。これで結構です。早速手続きのほうを始めましょうか」

「そうだな…。始めよう!」

そういうと机の上が、きれいになり、真新しい水色の布が柔らかくかぶせられ、後ろには、両方の旗が掛けられて、会見場のような状況になった。

「さて、ここに署名をして下さい」

急にやわらかい話しかたになった。

「出来ました」

後で知ったことなのだが、この放送は、全宇宙に流れており、宇宙中の種族が見ていたのだ。

「ありがとうございます」

ここまで言って、スタディンは王に耳打ちをした。

「実は後で内々にお話したいことが」

「分かった。お前の部屋で待っていろ。この服の着替えが済んだらすぐに行く」

王も小声で言った。


王はすぐに来た。しかし服装はすごかった。イルカに似ていると前にも言ったことがあるが、さすがに、パンツしかはいていない状態で来るイルカは見たことがないだろう。だが、ここの服装は基本無く、みんな通路を泳いで移動しているのだ。服は基本的に必要ではないのだが、儀式的な行為の際には必要のようだ。

「きたぞ。スタディンよ。して、内々の話とは何だ?」

先ほどまでの王とは別人のように静かに話している。

「実は私たち、新たなる種族とコンタクトをとる以外に、別の任務がありまして…」

「どのような任務だ?」

「私たち友人を探しているんです」

クシャトルが話し出す。

「友人?」

「はい。友人です。名前も、体格も、何も分からないんですけど、友人だったということだけははっきりしているんです」

「…分かった、調べてみよう。だがほかの人達にはもう言ったのかね?」

「いいえ。まだです。彼らには余計な心配を掛けたくなくて…」

「分かった。ここあたりの私の類族のほうに聞いてみよう」

「ありがとうございます。本当に感謝しています」

「私達だって感謝しているよ。今まで私達と条約を結んだ種族や国は無かったからね」

「なぜです?」

「銀河文明の中でも、私達はまだまだ小さいほうだからね。詳しくは君達が取った情報にあると思うからそっちを見るといい」

「分かりました。そちらも分かりましたら本船の方に伝えてください」

「分かった。ただこの惑星を去る前にこれを渡しておきたい。船につけておきたまえ」

「これは何ですか?」

「自動翻訳機だ。全宇宙のあらゆる言語に対応している。自動的に相手の話していることを翻訳してくれるし、自動的に文章を君達の言語に訳してくれる。相手も持っていると思っても良いだろう」

「重ね重ね、ありがとうございます」

そして、この惑星を後にした。

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