表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/86

第33部

エレベータについたのは、2時50分だった。

「大体45分ぐらいかかったね」

「そうだな。もっと早くつく予定だったんだがな」

エレベータの前には3つぐらい部屋があった。それぞれの部屋に入り、簡単な、身体測定をする必要があるらしい。

「私達が上がってきた時には、こんな事はなかったね」

「そうだな。あれから何年もたっているからな。変ってくるのも当然だと思うよ」

スタディンとクシャトルは、昔を懐かしがっていた。

「すいません。予約をしていたイフニなんですが、大丈夫でしょうか?」

「ええ、後10分ぐらいありますので、それまでこの建物から出ないで下さい。お手洗いは、ちょうどこの横の部屋になります」

受付の人がお母さんに言った。

「さあ、皆トイレに行きたかったら今のうちだよ。これから大体1時間から2時間はトイレに行けないからね」

皆トイレに行った。

「あの子達は?」

「ここにいるよ」

スタディンとクシャトルと三つ子は、同じ場所に立っていた。

「あなた達は大丈夫なの?」

「まあ、大丈夫だと思うよ」

事務室の扉が開き、男の人の顔が出てきた。

「誰か来たのか?あれ、お前達は…」

「あー!あなたは、あのときの所長さん」

「え?知り合い?」

「知り合いも何も、私達がここに来たときに乗せてくれた人だよ」

「それはどうも、私達の娘と息子がお世話になりまして、何も起こりませんでしたか?」

「ええ、何も起こらずに無事に行きました」

「それを聞いて安心しました。この子達がきたときの事を何にも話さなかったので、どうやって来たか分からなかったのです」

皆トイレから出てきた。入れ替わりにスタディンとクシャトルがトイレに向かう。

「後は3時を待つばかりだね」

「そうだね。ところで今何時だろう」

「今は、3時5分前ですよ」

すぐにスタディンとクシャトルが帰ってきた。

「終わったよ。身体検査だけでも先に受けようかな」

「それは出来ない決まりなんですね、とにかく30分前から身体検査を受けていただきます。しかし、それまではここで待ってください」

受付の人が言った。

「とにかくそれまで待つ必要があるし、自分も検査を受ける必要があるんだ」

「どうしてです?」

「自分も下に降りるからな。それに、自分はもう所長じゃないんだ」

「どうしてです?まさか、左遷されたとか?」

「そんな事はない。昇格したんだよ。今は全てのエレベータの運転管理者だ。このエレベータにいるのは、今回の検査が偶然にもこのエレベータだったからで、お前達の成長を確認しようという事はないからな」

「そうですか」

そのとき時報がなった。

「3時です、3時です」

「時間だ、始めよう」

皆一斉に立ちあがった。

「私達はここまでだからね」

お母さんが言った。

「時にはこちらに来て顔も見せろよ」

お父さんが言った。

「分かった」

クシャトルとスタディンが同時に言った。部屋の中に吸い込まれていった。


まず比較的大きめの部屋があった。

「ここで身長と体重を測らせてもらいます。女性はあちらに、男性はこちらにどうぞ」

言われるままに列を作り、測った。

「あなた、身長169cmありますね。体重は、52.8?ですね」

横からの声は聞こえないようになっていた。それが終わると、チェックシートが渡された。

「これを持って、あの扉を通って、次の部屋に行ってください」

指差された方向には、普通の扉があった。スタディンはその扉を通って、次の部屋に行った。


次の部屋は、あまり明かりがなかった。

「ここでは、無重力時の反応を見ます」

急に体重が感じられなくなった。

「ただいまから30秒間この部屋の重力を消します。30秒後、この部屋全体が3秒間明るくなった後、再び暗くなりながら重力を戻します」

足が地面から浮き、体が宙を泳いでいる。少しずつ、慣れてきた途端に、部屋全体が明るくなった。すぐに暗くなり始めて、体重が戻ってきた。

「これで終わりです。チェックシートを、このまままっすぐ進んだところの机に提出して、そこにある扉を進んでください」

言われたので、言う通りにしたと思った。

「そちらは逆です」

注意された。ちゃんと扉があり、横に学校で使うような机がおいてあった。スタディンは、そこにチェックシートを出し、扉を通って行った。


次の部屋は、平衡感覚が失われるような部屋だった。

「ここでは、平衡感覚の確認だけをします。直接この廊下を歩いて行って下さい。廊下の突き当たりに、あなたのチェックシートがあるので、それを持って次の部屋に行ってください」

スタディンは10回ぐらい壁に当たりながら、どうにか廊下のつき辺りまで来た。チェックシートが机の上に置いてあった。それを拾って、隣の部屋に入った。


次の部屋は待合室のようだった。

「ここで、チェックシートを提出してください」

平衡感覚が微妙なまま、歩いた。少しずつ戻ってきた。チェックシートを提出して、近くの椅子に座った。自分が最初だった。次に来たのは、所長さんだった。

「君が一番か。ここの検査は毎度ながら疲れるからな。とにかく他の人はどの経路を通ってくることか」

「何本か通路があるんですか?」

「ああ、人によって順番が違うんだ。まあ、詳しくは自分も知らないがな」

時計を見ると、3時5分だった。それから10分以内に皆帰ってこれた。

「これから5分間の休憩をした後に、エレベータに乗ってもらいます」

スタディンとクシャトルと、所長さんは、乗った事があるからよかったけれど、他の人は乗った事すらない人達だった。さらに、降下はスタディンとクシャトルも記憶上、初めてだった。

「エレベータってどういう感じなの?」

シュアンが聞いてきた。

「私達は、昇った事しかないからね。それにその時はまだエレベータとかに興味が無かったしね。所長さんに聞いたら分かるんじゃないかな?」

クシャトルが答える。

「ふーん。やっぱり分からない事ってあるんだね」

そういって、シュアンは所長さんのところに聞きに行った。

「とにかく久し振りに行くわけだね。でも、誰かに貸した上に、そのまま出て行かない人って、大丈夫なのかな?」

「大丈夫じゃないかな。とりあえずは会ってみないと何にも言えないけど」

瞬く間に5分が過ぎた。

「時間だ。乗り込むぞ」

シュアンの質問攻めにあっていた所長さんが、立ち上がり皆に呼びかけた。

「これから約1000?の間の内、大体5分の4ぐらいが、無重力状態だ。みんな気分が悪くなっても、どこにもトイレは無いからな。準備はもう良いか?」

皆うなずいた。

「よし、では出発だ」

みんなエレベータの中に入った。扉がゆっくりと閉まった。


「本エレベータは、30秒後に出発します」

自動音声が流れてくる。

「なお、出発して100?ほどたちますと、無重力状態になります。その際は放送がかかります。そうしましたら、シートベルトを外してもらってもかまいません。減速をはじめる30秒前と10秒前からの秒読みがありましたら、速やかに指定の席に戻り、シートベルトを締めて下さい。皆様のご理解とご協力を、お願いします。10秒前、9、8、7、6、5、4、3、2、1、出発します」

がくんとエレベータが離れていく。一瞬だけ宇宙空間に出された後、地球側の方と連結する。そして、3分ぐらいしたら、再び音声が聞こえてきた。

「100?です。体が浮くようでしたらこれから1時間、無重力状態をお楽しみください。なお、ごくまれに、体が浮かないお客様もいらっしゃいますが、それはその人自身の個性ですので、あきらめて座ってください」

その直後、全員が体が浮きはじめた。

「これから1時間は無重力状態か」

誰かがつぶやいた。

「だがな、こんなに早くよく出来たな」

山川さんがシートベルトを外しながら話す。

「それはですね、真空状態と関係しているのですよ」

所長さんが答える。

「真空状態?超真空でも作る事に成功したのか?」

「その通りです」

「でも相当資金がかかったでしょう」

「その辺りは、連邦政府からもらいました。だいたい、10^-17atmぐらいです」

まわりに、子供達が回っている。クシャトルが、また水の実験をしている。

「ほら、これを見ていてね。さーん、にー、いーち、それ!」

水はここに備え付けられている物だった。

「すごーい。何で丸くなるの?」

三つ子は純粋な目でこちらを見てくる。

「水はね、丸くなろうとする癖があるの、その癖がこんなときによく出て来るんだよ」

「へ〜。すごいね」

「普通でも出来るの?」

「やっぱりこんな状態じゃないと駄目?えっと…無重力状態とか何とか言う状態」

「そうだね。普通でも少しだけ見れるんだけど、こんな状態のときはその癖を一番発揮できるんだ」

クシャトルはお守りをしているようだった。スタディンは、他の3人兄妹と、エア兄妹と話をしていた。

「え?という事は、その連邦大統領のAIって言うのがこの端末から話せるの」

「その通り。そう言えば、君達の年齢を知らないね。もしよかったら、一緒に高校行かない?ここ最近は高校進学率が下がっているからちょうどいいんだよね」

「でも、この時代の教育水準が分からないから、私達の頭は実は小学校並だった、と言うこともありえるし」

「大丈夫だよ。英語いけるんでしょ?」

「いや、欠点ぎりぎりだった。まあ、中学校には落第の制度がなかったけどね」

「高校からはあるからね、がんばらないといけないよ」

「その通りだよ」

「うん。ところで年は私は15だよ」

「他の二人は?」

「この子が、13で、一番下が12。あなた達は?」

「自分が、15。妹が14。イフニ兄妹も同じだよ」

「まだまだ若いんだね」

「何歳に見えたの?」

「君達は、まあ20歳以下だろうと思っていたけど、彼らは、船長と副船長だったし、それで30ぐらいかなって、でも若いしな〜って感じだったの」

「そうか、自分ってそんな感じに見られていたのか。そうだったんだな〜」

一人すねるスタディン。

「いや、そうでもないよ。だって自分達は、幼馴染じゃないか」

「自分の両親は知らなかったけどね」

「まあ、それはそれだよ」

時間は過ぎてゆく…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ