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第32部

「え?君達も?みんなで同じ夢を見ていたんだな。という事は」

インターホンが鳴った。

「はーい。何でしょうか」

「すいません。隣の奥羽ですが、下に行くと言うことを聞いて、お別れを言いに来ました。お気を付けて」

「ありがとうございます。それと、もしかしたら当分帰って来れないかもしれませんよ」

「そうですか、やはりあの夢の通りだったな…」

「え?なんかおっしゃいましたか?」

「いいえ、ではまた会う時まで。楽しみにしていますからね」

音声が切れた。

「もしかして、関係者全員同じような内容の夢を見ていたりしてな」

アダムが独り言のように言った。

「ハハハ、そんな訳ないだろう」

スタディンが返した。


朝ごはんが終わり、帰る支度をし始めた。

「自分達も行く必要がありそうだね」

「そうだね。家にこんなに人が入るのかな」

アダムとイブが心配していた。

「みんな忘れ物はないな。では、出発だ」

家を出て行った。中は何も音がなかった。


「ただいま〜」

スタディンとクシャトルが家に帰ったのは7時半だった。

「おかえり、あら、あなた達も一緒に行くって言うことだったわね」

お母さんがアダムとイブに語りかける。

「とにかくみんな上がってらっしゃい。そこじゃあ話にくいでしょう」

「ありがとうございます」

アダムが、礼を言う。4人とも家の中に入った。

「あ、お姉ちゃんだ〜」

「みんな、ただいま」

「おかえりなさ〜い。あれ、その男の人は誰?」

「この人わね、あなた達のお兄ちゃんよ」

お母さんが言った。

「おにーちゃんだ」

「おにーちゃんがかえって来たぞ」

「わーい、おにーちゃんだ」

3人が3人、違った返事をした。

「とにかく、これから準備をして、下に行かないといけないな」

「少し問題があってね」

お母さんがおずおずと言う。

「どうしたの?何が問題なの?」

「実は…」

横からお父さんが言ってくる。

「実は、予約する人数を昨日まで気づかずに、増やしてしまったようなんだ。ちょうど2人分なんだが、君達も来るかな?」

「ええ、もしもよろしいのなら」

アダムが答える。

「とにかく下の方は、別の人に貸していたんだけど、その人が出て行かないって言っているみたいなんだよ。ただ、その人は悪い人じゃないからきっと大丈夫だよ。まあ、問題はそれぐらいかな」

「いつエレベータは出発するの?」

「今日の午後3時に出発予定。私達はこの家に残る事にしているから。仕事の都合上ね」

「まあ、しょうがないよ。仕事なんだから。準備はどこまで出来ているの?」

「後はあなた達の分だけ。あなた達の部屋はそのままだから、勝手に必要な荷物を持ってゆきなさい。あと、コンティンスタンスって言う人から卒業を楽しみにしている、ちゃんと約束を守るから、っていう事の手紙をもらっているわ。ちゃんと下の方で生活できるよね?大丈夫だよね」

「母さん、今まで、ちゃんと下の方で生活して来たじゃないか、だからこれからも大丈夫だよ」

「そうよね、大丈夫よね」

「うん、大丈夫。とにかく準備してくる。自分達でできるから」

スタディンとクシャトルは、部屋から出て、行くための準備をした。


「え、結婚?あの子達が?あなた達と?」

「そうです、この場を借りて言わせてもらいます」

「別に、娘がいいって言っているんだったら、いいけどな」

「そうよね。私達が決めるより、あの子の問題だから、あの子が決めればいいよね」

「いいって事ですか?」

「あの子さえよければ、と言う条件付でね」

「ありがとうございます!ちゃんと幸せにします!」

居間の方では、アダムがクシャトルをお嫁に受け入れることが決まったが、もう一人いる事を忘れてはいけない。

「あの、私も、スタディンさんと結婚を前提とした、お付き合いをして行きたいと、思っているのですが、よろしいでしょうか」

「こいつの場合も同じだ。あの子自身がいいって言ったならそれはいい。ひとつ、気になったんだが、君達の両親はどう言っているんだ?」

「別にかまわないと言っています。この結婚については本人の了承さえ取れればいいと言っております。なので、このようにこちらに来たのは偶然ですが、この際だから、一思いに言う必要があるだろう、そう思いまして」

「あのさ、ひとつ聞いてもいいかな」

今までずっと黙りっぱなしだった、山川さんが言った。

「この世界の法律については詳しくないが、結婚できる年齢は普通決まっているはずだ。それを調べる必要があるんじゃないかな」

「それも一理ありますね。早速調べて見ましょう」

AIの携帯端末を経由して、議会運営省/憲法審査会/連邦議会両院委員会/法律作成・意見募集局の、ホームページを見に行った。

「ここなら今まで発表されている全てのデータが残っているはずです。ただし、クーデターの前は別になりますが」

「この場合は民法とかに書かれている場合が多いぞ。その場所を調べて見たらどうだ?」

「山川さん。今はそれよりもっとすばらしい検索が出来るのです。今回の場合は、結婚年齢の下限について調べたいのです。その場合は、まず、ホームページを立ち上げます、次に一番上にある、単語から検索のところに、"結婚年齢 下限"と打ち込みます。すると、すぐに出てくるのです。今の法律は、18歳以上になっていますね。ちなみにお酒やタバコも18歳からです。ちょうど法律上の大人の年齢がこの年になっています」

「男女ともか?」

「そうですね、男女ともに18歳に成人します。それがどうしました?」

「昔は違っていたからな。まあ、今の法律がどうなっているかなんて、新暦20年目の俺達から見れば、無知なのと同じだからな」

「まあ、そう言うことですが、今の法律は、そういう事になっています。とにかく後最低でも、1年はまたないといけないのです。ただ、彼らからすると、4年になるのかもしれませんが、とにかくそれまで婚姻届は出しませんよ」

「それを聞いて安心したよ」

その時、ちょうどクシャトルとスタディンが帰ってきた。

「終わった〜」

「ちょっとあんた達、結婚するんだってね。この子達と」

「え、うんそのつもりだけど、駄目かな?」

「駄目なわけないじゃないか!どうして早く言ってくれなかったんだ!エア一族は、とてつもない大金持ちとして、金津グループと共に、全宇宙中に名が知れ渡っているぐらいの有名人なんだぞ!」

お父さんはまくし立てた。

「時価総額が、大体100兆GACもあるんだ。しかも毎月、8727万4882GACも稼ぐんだ。俺達を見てみろ、王族保護省からと、俺が働いて稼いだ金、合わせても、一年間に732万193GACしか稼げないんだぞ。それなのに……とにかくだ、結婚は一生の問題だからな、母さんとずっと前に話していたんだ。お前達がもしも結婚するような事があるなら、それは個人の自由だろうって。そう言うことだから、お前達が結婚するのは、法律で認められた年齢である、18になるまでだ。まあ、こちらの時間ということだがな」

「いいの?」

「もちろんだ。種の保存と繁栄は、全ての生命に入っている本能だからな」

「ありがとう!父さん!」

スタディンとクシャトルを父親に抱きついた。

「とにかく準備は出来たのか?」

離れてからたずねた。

「うん。もう大丈夫。ただ、このままあの部屋を残しておいて欲しいな」

「このまま残す事は出来ないけど、この子達が大きくなったときに下にいるか、上にいるかによって変ってくるね」

「きっと下にいるね」

「うん。自分もそう思う」


2時になるまで家の中で宇宙ステーションの最後の時間を楽しんだ。

「もうすぐ2時だよ。みんな出発だよ」

お母さんがみんなに声をかける。

「私達は、エレベータに入るまで見に行くけど、それ以降は行かないからね」

「荷物は、航宙便で送ってきてよ」

「はいはい。分かっているわよ。何年間あなた達の母親やっていると思っているの」

「大体14年間ぐらい?」

「そりゃあなた達にとってはね。でもこちらの世界にずっといる人にとっては、17年間にもなるの」

「やっぱり17年間って長いね」

「とにかく他の人達も起こすの手伝いなさい」

「はーい。ほら、みんな起きろー」

みんなの肩をゆすりながら起こしてゆく。

「え?今何時?」

眠い目を越すりながら、スタディンが聞いた。

「もう2時だよ。今出発しないと間に合わないんだよ」

「もうそんな時間か?」

アダムが聞く。

「そんな感じだな。では、みんな起きたらすぐ出発しよう」

「後は三つ子だけだね。私が起こしてくる」

イブとクシャトルが呼びに行った。

「みんなトイレは大丈夫だよな。これから2時間は最低でも出来ないからな」

お父さんがみんなに呼びかけた。

「そんなに長いの?」

シュアンがたずねる。

「そうだな、大体3時までに行かないといろいろややこしい事になるし、もしも、いけなかったら、大変多くの損害賠償請求をされかねないからね」

「呼んできたよ〜」

「もうこんな時間?」

「トイレ行く暇ある?」

「すぐに出発しようよ」

三つ子は意見がばらばらだった。

「まだトイレに行く暇はあるが後10分以内に出発する必要があるな、とにかく急げよ」

「はーい」

三つ子は、そのままトイレに走って行った。

「大変だね。こちらの準備は大丈夫?」

「ああ、後はみんな連れて行くだけだ」

「どうやって行くの?」

「とりあえず、近くにモノレールがあるから、それに乗っていく事になるな。この家からエレベータまで、大体30分はかかるから、余裕を取った方がいいと思ってね」

お父さんが言った。三つ子が帰ってきた。

「ただいま。終わったからいけるよ」

「うん、そうだよ早く行かないと間に合わないよ」

「そうだよ、だから早く行こうよ」

言い方はばらばらだが、意見が一致している。クシャトルはそれが面白かった。

「そうだな、行こうか。忘れ物はないよな」

「大丈夫だよ」

「じゃあ、行こうか」

戸締りをして、みんな家を出た。

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