第29部
4人はその直後出て行った。そして、いわれた通り、魔法協会の方に出向き、書類を提出した。
「この人から頼まれたのですが」
と言って、名刺を見せると、相手の職員は血相を変えて急に働き出した。
「この人は有名なんだね。こんなに急に働きはじめるもの」
その話を偶然聞いた暇そうな人が、名刺を見たがった。
「いいですよ。ただ、すぐに返してくださいね」
すぐに借りてすぐに返してきた。
「この人を知らぬものはこの魔法協会にいないぞ。お前達は、新参者じゃな」
「ええ、つい1時間前に検査を受けさせてもらいました。それが?」
「このお方は、魔法最高評議会の5会長の内の一人、そして、錬金術師協会の会長でもある、ジャン・スクーム・イルードじゃ。このものからの頼みと言うことは、お前達、この人に出会ったんだね」
「ええ、まあ」
「どこにおる?」
「すいませんが教えれないのですよ。本人から口止めされていまして」
「なぜなんだ?何故私をおいてまたどこかへ消える!」
「お知り合いかなんかですか?」
「知り合いも何も、私は昔、高校時代一緒だった。高校のときはよく遊んで、婚約までしたんじゃ。その時の証明書は今も持っておる。じゃが、あいつは、そのまま蒸発したんじゃ。だが、わしはあきらめんかった。こうしてここにいるように、いつの日かやつの名刺を持ったやつがこうしてここに来るだろうと待ち構えておったんじゃ。今日お前さん達がここ20年間で最初だがな。他のやつらもたくさんおったわ、だが、他のやつらはたいした事はなかった。しかしもうよい、やつはどうじゃった?」
「どうだったって、元気でしたけど?ただ、自分の妹が、彼女の作ったトマトジュースに当たりましたが、それだけですね」
「それだけ!それだけか!もっと毒みたいなものを造ったり、やばそうな実験とかも無しか」
「そうですね。何もしてませんでした」
「そうか、そうか、だから…ああ、どうもな。少年少女らよ。また私は旅に出よう」
「ちゃんと生きて帰ってきてくださいよ」
「分かっているわい。ちゃんと生きて帰ってきてやるよ。それまでお前達も待っとれよ」
玄関にまで向かうと、彼は歩いて去って行った。
「すいません。あの〜」
彼と話している間に処理が終わったようだ。
「一応手続きは終わりました。あと、この書類に今回、2人の署名が必要になります。今回の費用はこの名詞の方に請求すればよろしいのでしょうか」
「ああ、よろしく頼む」
無事に処理が終わった。後は家に戻り、ハードディスクの中の情報を確認するだけである。彼らは家まで歩いて帰る事にした。その間、いろいろなところで4人で買い物をした。そして、家に帰るまでにはたくさん買っていた。
「ふ〜。無事に帰って来れたね。楽しかったね」
「あれも欲しい、これも欲しいと言って、あちこち買いまくった上に、自分だけは荷物を持たず、男連中にまかせっきりだったのはどこの誰でしたっけ?」
「あれ〜?そんな事もありましたっけ〜?」
「起こっとる!現に今!」
スタディンとイブが、コント的な事をしている横で、アダムとクシャトルは仲良く荷物を持っていた。
「ちょっと〜、二人とも大人げないぞ。ホールのところまで持っていかないと、何も動けないんだからね。ほーら早く」
「分かっているよ。よっこいしょっと」
掛け声と一緒に、荷物を動かす。その時、イブがスタディンにたずねた。
「ところで、ハードディスクって、どんなもの?今は量子コンピューターしかないせいで、らよく分からないんだけど」
「ハードディスクって言うのはね、磁気体をアルミニウムの円盤に塗りつけて高速回転させてデータを記録したり読み出したりする装置の事、ゴミやホコリにとても弱いから、普通は完全密閉されていて、熱を持つから、いつも冷却する必要があるの」
クシャトルが答える。
「物知りだな。いつの間にそんなに詳しくなった?」
スタディンが荷物をホールの端っこに置きながら聞く。
「ん〜、過去に戻ったときにちょっと、教えてもらったの」
「そうか、ところで、この形式のハードディスクをこの家で動かせれるか?」
「ちょっと見せて?」
軽く渡す。
「それを落とすなよ。この手のやつは1m上から落としても大丈夫だけど、それで壊れても換えがないんだからな。注意して取り扱ってくれよ」
「分かってるよ。大丈夫だから」
割れ物みたいに扱うアダム。
「このタイプは我が家にはないけど、お隣さんなら持っているかもしれない。でも、この規格は見た事がないな」
「とにかくお隣さんに行ってみよう」
みんなは家の中に荷物をいれ終わると、お隣へ歩いて行った。
「すいませーん、誰かいますかー?」
お隣の家もなかなかな豪邸に見えた。だが、この家はベルサイユ宮殿を模して作られていた。
「はーい」
インターホンから声が聞こえてくる。
「すいません、隣のエア兄妹なんですけど、友達も連れて少し尋ねたい事がありますので、いいでしょうか?」
「ええ、どうぞ。その門の横の守衛の部屋から入ってください」
「分かりました。ありがとうございます」
門には、奥羽と書かれていた。インターホンが切れている事を確認して、スタディンが言った。
「お隣さんの名字、なんて読むの?」
「さあ、自分はただ、お隣さんとしか言った事がないから」
アダムが言った。その間に門が開いて、中へ招き入れた。
「ようこそいらっしゃいました、この館へ。私がここの主人の、奥羽郁男です。どうぞよろしくお願いします。ところで、今日は何の御用でしょうか」
「今日は、この機械についてご教示いただきたいと思います」
アダムがとても丁寧に話す。
「ふむ、まずはその機械を拝見する必要があります。この場に持ってきていると思いますが?」
「これです」
アダムが一人で話し、一人でハードディスクを渡した。
「ふむ、これはハードディスクですな。ふむふむ、なかなか珍しい品をお持ちですな。いや、どうやって入手なされたかなどと言う無粋な質問は致すまい。して、このハードディスクの何についてお教えしたらよろしいかな」
「このハードディスクはどのような接続形態をしているのかと、さらによろしければ、この中のデータを我が家で鑑賞したいので、その接続用のコードもお借りしたいのですが」
「ええ、いいですよ。ふむ、この接続は、eSATAと言う接続形態を持っておりますな。eSATA自体は、このようなハードディスクのみに特化した接続形態ですな。たしか、ずいぶん前の先祖がこのコードを買っていたような、すみませんがここでしばらく休んでください。少し探してきましょう」
「ありがとうございます」
ここの主人は家を出て行った。
10分間は経っただろう、帰ってきた。
「すいません。なかなか見つからなくて、これがそのeSATAのコードです。いまは、eSATAよりも早いものが存在していますゆえに、ほとんど使われなくなったものですな。クーデター前までは多用していたと聞きますが、はてさて、いかがなるものか」
「ありがとございます。これは何につなげればよろしいのでしょうか?」
「これは、まずこちら側を、ハードディスク本体に接続します。反対側は、USBに接続して下さったら結構です。あと、ちゃんと返してくださいよ。とても高価なものですからね」
「分かっています。ありがとうございました」
「いいえ、とんでもない。これからもよろしくお願いしますよ。妻に先立たれてから、何も希望が見えなかった私を慰めてくださったのはあなた達なのですから。いつでも歓迎しますよ」
「では、これにて、失礼します」
家から出てきた。アダムにスタディンとクシャトルが聞いた。
「ねえ、お隣さんって、子供いるの?」
「ああ、たしか、ここ10年間ぐらい帰ってない息子さんが2人と、結婚して嫁いで行った娘さんが2人いたはずだ。それに、疲れからかどうか分からないけど、奥さんが先に逝ってしまってから、抜けてしまったようになってしまってね。ちょうどお隣だったし、ガーデンパーティーに呼んだんだ。それがきっかけで、こんな風な仲になったんだ。それに、あの人は元高校教師だからね、分からないことがあれば大体教えてくれるよ。ちなみに教えていた教科は、情報と数学と物理だそうだ」
「3教科も?他に先生がなかったの?」
「そう。ここ最近は、高校進学率は急に落ちているからね。10年前と比べても、約3割も落ちているんだ。さて、ここで簡単な問題だよ。10年前が80.9%でした。今年は何%でしょう」
「はい!分かった」
クシャトルが先に答えを言った。
「はい、じゃあ、クシャトル。正解をどうぞ」
「56.63%」
「正解〜!だから今や高校に行く子は少なくなってきているんだ。さらに、ここ最近は宇宙戦争もあっただろ?その影響で今年度の受験者はとても少なくなるはずなんだ。そこで、高校受験をしてみないか?」
「え?」
「高校受験?」
スタディンとクシャトルは呆然とした。
「でも私はまだ高校受験する年齢じゃないし…」
「もう、年齢なんて気にしている場合じゃないんだよ。年齢制限自体がほとんどなくなっているからね。だから、何歳になっても、中学校を卒業している証拠さえあれば、受験資格はある。それに、家に帰ってから見せるけど、今年の高校受験者数の予測値が、全体の10%をとうとう切ってしまったんだ。まあ、この全体って言うのは、15歳から65歳まであるけどね。この中でも15〜19歳のみに焦点を当てたら、約45%なんだって。高校受験者の予測は。君達の家の近くにさ、高校とかないかな?あったらそこを受けよう」
「あのさ、ひとつ聞いていいかな」
スタディンがアダムに対して言う。
「年齢はもう気にしないって言っていたけど、どうして?」
「法律が変って、15歳以上で、中学授業を終了したもの、もしくは、中学校最終学年までの学力があると証明された者、または、これまでの規定通りの者は、高校進学を許す。って言う事になったの」
「いつの間に…じゃあ私がもしも、証明されれば、もしかしたら」
「高校に行けるかもしれない。でも、確証はないからね」
「分かっているよ。って言うことは、イブもいけるかもしれないって言う事?」
「まあ、そう言うことだな。でも、イブが行けるかどうかは、本人しだいだけどね」
門のところまで来た。すでに門は開いていた。彼らはそのまま家に戻っていった。