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第3部

「…船長、船長!」

ゆっくりと目を開ける。

「良かった〜。起きた〜」

クシャトルが安堵のため息をつく。

「ここは?船は?」

そう言って、スタディンは半身を起き上がらせて、そばのヒトに尋ねた。

「ここは、船の医務室です。船の被害は皆無でした。しかし…」

「しかし、何だ?」

みんな一様に顔を見合わせた後、

「元の空間ではないようなのです」

「どういうことだ?元の空間ではないとは」

「あの天体は、異空間とつながるための出入り口のような役目だったということです」

「銀河文明か…」

ぼそりといった。

「どうかしましたか?船長」

深呼吸をした後に、

「いや、なんでもない。それよりも、この空間は大丈夫なのか?体とかに害がないのか?」

「微量な新種の放射線を発見しましたが、詳しくはまだはっきりとは分かりません。ただし、この空間上にはたくさんの死体が発見されています。すなわちこの空間は危険だ、ということです」

「だとすると、いますぐこの空間から脱出する必要があるな…」

「そのとおりですが、帰り道が分からないのです。先ほどここに来た穴は、偶然開いていたようで…今も探していますが、なかなか…」

「ここで、こんなにゆっくりできないな」

それだけ言ってスタディンはベッドから立ち上がり、医務室を出ていこうとした。

「駄目ですよ。船長」

と、声を掛けてくれたのは見知らぬ人物だった。

「君は?」

「私は、先が見える種族の末裔。ただ一人のね」

「ほかの種族は?友人とか、家族とかは?」

「誰もいないの…。あなたたちが来なければ私はここにずっといた。お願いです。私をこの船に乗せてください」

「ちょっと待ってください。この世界は広いと思いますがどこにもいなかったのですか?」

「はい。この前の船が通り過ぎてから10年間。私はここに立っていました。いずれ誰か来るだろうと、祈りながら…」

「とりあえず、乗せましょう」

「船長!」

「彼女は何もない状態だ。服以外に手持ちの品を持っていないような状態だ。何も害はないだろう」

彼女は、顔をほころばせながら、

「ありがとう…」

とだけ言って、黙った。

「私はとにかく大丈夫だ。指揮をしても問題はないだろう」

そういって、医務室を出た。みんなは、彼に従った。誰も何も言わなかった。


「それより君はどんな種族だね?」

「私の種族については何も知りません。ただ、未来が分かるのと、私の名前だけ…」

「では、君の名前は何だね?」

「私の名前は、パリティ・チャートです。パリと呼んでください」

「分かった」

それだけ言うと船長は黙って何か考えているようだった。


「それでここはどんなところだね?パリ」

「ここは、「縮空間」と呼ばれている空間です。あなた方が来た「実空間」より、同じ時間で長い距離を行くことができる空間です」

「ここがその空間ということだな」

「そうです。しかし、私のような生まれつきここにいるヒト以外は、すべての生命体は死んでしまう空間なのです」

「逃げ道はあるのか?」

「ここから、30?はなれたところに別の「特異点」があります。ただし、その特異点がどこにつながっているのかは、行かなければ分かりません」

「分かった。そこへ案内してくれ。しかし、縮空間や、特異点とはどんなものだ?」

「縮空間とは、あなた方が来た空間とは違い、空間自体が縮まっている空間なのです。そしてほかにもこれと同じような縮空間が存在しています。それらをつなげるのが特異点と呼ばれている空間の穴です。ただし、特異点自体はとても安定していますが、一度船が通っていくと、当分の間は閉じられます」

「なるほど」

ここで特異点を見つけたので話は途切れて、みんな真剣な顔つきになり、船長が話した。

「みんな、真剣になれよ!」

「了解!」

再び白い光が満ちたが今度は気絶はしなかった。しかし、とても気分が悪くなった。


「元に戻れたのか?」

「はい。船長。ただし地球から300光年ほど離れておりますが」

「この近くに、惑星系があるか?」

「はい。海洋惑星らしき星があります」

「よし。その惑星の周回軌道に行ってくれ」

「はい。了解しました」

そう言うと、シアトスはキーボードに向かい、指を何回かたたいた。するとすぐに、船は動き出した。


「ここがその惑星か?」

「はい。確かにこの惑星です」

そう言ってスクリーンに見れるのは、青い色の惑星だった。まるで磨き上げられた丸いサファイアを見ているような感覚の青だった。

「この惑星上には陸地はあるのか?」

「いいえ、この惑星上には、海以外何もありません」

「生命反応は?」

「はい。生命反応はあります。どうやら地下都市のような構造物にすんでいる海洋生物らしいです」

そのとき、指揮室に電子音が響いた。

「何だ?」

「海洋惑星にいる生命体からの通信です。どうしますか?船長」

「つないでくれ」

何も考えられない状態になりながらも、14歳と15歳の心は躍っていた。

「自分は、三惑星連邦宇宙軍の大佐、本船の船長であるイフニ・スタディン。君たちは何者だ」

そのときは、気持ちの良い音楽のような音が流れただけだった。これは彼らの言語だったのだが、彼らには翻訳する方法が無かったので、何も分からなかった。

「これからそちらに行きたいのですが、よろしいでしょうか?」

少しの間が空いて、モールス信号で、

「YES」

とだけ返ってきた。

「どうやらいいみたいですね」

「そのようだな」

「どうするの船長?」

「これから私たちは下船する。後のことは、シアトスに一任する。もしもわれわれが帰ってこなかったら、君がこの船の船長になるのだ」

それだけ言った後に、兄妹は船をシャトルで降り、惑星に行った。

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