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第28部

「さて、今回やった二人の結果が出ているから発表しますよ。心の準備はいいですか?」

「はい。早くやってください」

アダムがせかせる。

「では、今回検査をした二人とも、魔力が…」

みんな黙り込んでいる。何も音が聞こえなかった。

「あります。しかし、この魔力は高めだね。でもこの二人にはかなわないよ。何せこの人達は、あのコンティンスタンスさえ越えていると言ううわさだからね。数値的には、お兄さんの方が、100前後で、妹さんが、95ぐらいだね」

「はあ、その数字に意味があるのですか」

イブとアダムが聞いた。

「この数字は、魔力の指数を表しているの、この数字が高いほどすごい力が出せる。この情報は一般的に魔法協会の方に送付されるの。あなた達の情報も送付されるし、匿名は不可なんだよね。だから、名前を教えてくれないかな?」

「本当にその魔法協会に送るのですか?」

「ああ、そうだよ。別に私が聞かずに、君達が直接紙に描いてくれてもいい。とにかく送る事が義務なの。このイフニ兄妹達の魔力の検査結果も協会に行けば閲覧できるよ。それによって、どこの人が弟子入りさせるかを決めれるからね。あなた達はどこにはいるの?」

突然話を振る。

「え?あ、はい、何でしょうか?」

「話し、聞いていなかったでしょう」

「はい。すいません」

「もし弟子入りするなら、これだけは覚えておいて、師匠の話は必ず聞いておく事。いいね」

「はい」

「うん。で、質問は、あなた達はどこに弟子入りするのかって言うこと」

「一応、コンティンスタンスさんのところを予定していますが、何か問題が?」

「コンティンスタンスのところか、あそこは5人の中でもやさしいところだからね、この4人でいったら?私の方から、推薦書、書いておくからさ」

「いいんですか?」

「ああ、その代わり、この検査結果は君達持ちだからね。それと賢者の石の製造を手伝ってくれないかな」

「いいですよ。で、何をすればいいですか?」

「この練成陣に命を吹き込むの。早い話が魔力でこの材料をひとつに練り上げる。それだけよ」

「いまいち分からないのですが…詳しく教えてくれませんか?」

「ああ、そうだったね、君達は錬金術をした事が無かったんだったね。錬金術師も魔術師も根本は同じ、何かから何かを作る。等価交換の法則は習っているよね。一つの物からは、一つのものしか作る事ができない。同じ性質の物は、同じ性質の物しかできない。それが元になっているんだ。だから、錬金術協会はこの世界に存在していない。魔術師協会の下部組織としてはあるけどね」

「と言うことは、錬金術師も魔力を持っていると?そう言うことですか?」

「まあ、そう言うことだな。とにかく、錬金術もなれればなんて事はないし、弟子入りする前に何でも挑戦しておかないと、後々大変だよ」

「とにかく早くやりましょう、なんかどんどん熱くなっていているような感じが…」

「ああ、そうだね。とにかくみんな私の言う通りに動く事になるから、それと、練成中は、基本的に集中、私が話したときだけそちらに集中して、いいね」

みんなうなずいた。

「それじゃあ、するよ。まずこの練成陣上に点が書いてあるから、そこに立って、そして、まずこの材料を全てひとつにするの。最初は完全な球体。色は、黄色」

「はい!」

「3、2、1、スタート!」

一瞬で周りの暑さが無くなり、その代わり練成陣の中から火花が散り始めた。

「ひるむな!集中だ!」

火花はどんどん激しくなってゆく、しかし収まってきた。ゆっくりとだが確実に収まってきた。

「集中だ…!」

すでに誰の声も聞こえにくい。ついに火花が消えた。

「お疲れ様、これで第一段階突破だ」

「今何時ですか?」

アダムが尋ねる。

「いま大体、1時ぐらいかな?」

「はあ、どうもありがとうございます」

「いいえ、それよりも次の段階に行くよ、次はこれをこの容器に先に入れておく。全てが失われたかのような黒が次の目標だ、用意はいいね。3、2、1、スタート!」

再び火花が散りはじめる、容器が解けそうになっている。しかしそれをも巻き込みながら、大きくなっていく、火花が激しくなる。今回は収まる気配が無い。

「集中だよ、みんな」

今度は時間がかかった。だが、最終的には…

「出来たね、完全なる黒体、これで第2段階終了だ」

「ふ〜、疲れた…」

イブとアダムがその場にへたり込む、スタディンとクシャトルはまだ大丈夫らしい。

「何か飲むかい?」

「何があるのですか?」

「普通の水道水、あとは、このアパートの空き部屋を利用して栽培した、100%無農薬、トマトのジュースだね」

「水でいいです」

アダムが言うと、

「私も同じのでいいです」

と、イブも言った。しかし、スタディンとクシャトルは、アダム達とは違うことを言った。

「私達はトマトジュースをもらいたいのですが、いいですか?」

「ああ、いいよ、これはいずれ商品化にも着手したいからね、君達が私以外で最初に飲む人だよ」

練成陣に入らないようにして少し後ろに下がってスタディンが聞いた。

「大丈夫ですよね?」

「ああ、なんとも無いよ、ただ、問題があってね」

「どんな、どんな問題ですか?」

少しどもりながらも、クシャトルが聞いた。

「少し青いうちに取っているから、味の方はあまり駄目なんだよね。でも、栄養はとてもいいよ」

「はあ、では、いただきます」

スタディンとクシャトルが、ぐっと飲み干す。

「なんか、青臭い…」

「やっぱり〜?」

「やっぱりって、あなた、試飲した事あります?」

「ない。いつも一人だし、それに自分で飲んだ事はほとんどないな」

「飲んだ方がいいと思いますよ、この味はすごく…」

「すごく、何?」

「すごくおいしくないです。正直な話」

「そう。そうなの。じゃあこの調味料を使って味付けをして見て、でもその前に、休憩は終わりよ、これから第3・第4段階へ一気に入って行くよ。まず第3段階は、黒から白へ、真珠より、雪よりも白い白を目指す。そのまま、すぐに第4段階へ入るからね。第4段階は、血のような感じの赤、分からなかったら、とてもいい赤ワインみたいな色でもいいよ」

「どんな感じの血の色ですか?」

「いわゆる鮮血だね」

「鮮血…ですか」

「ああ、ところで、早くそのトマトジュースを飲んでね。それから第3・4段階へ突入するから」

「はい」

まだ半分以上残っているジュースを、一気に飲み干した。

「なんか、変な感じ」

「そう?なんとも無いけど?」

スタディンが言ったが、クシャトルはトマトジュースに当たったらしい。

「う〜ん。多分大丈夫だと思う…なんかあれば、その時しだいで」

(大丈夫かな〜。なんか不安だけどな〜)

「とにかく、いくよ〜。3、2、1、スタート!」

完全に吸い込まれるような黒色から、ありとあらゆる色に変化しながら、白色に変化しはじめる。すぐに火花が散りはじめる。今回は火花があまり飛び散らなかった。その代わりに光が体を包む。周りからぼんやり声が聞こえる中で、この光自体から旋律が聞こえてくる。お母さんが子供に歌う子守唄のような旋律。その声がゆっくりと、光とともに消えてゆく。周りの音も分かり始めた。

「次、第4段階。スタート!」

次の瞬間。周りが赤くなった。しかも一瞬で、全てが赤く見える。全ての音が分かる。全ての感覚がある。全ての事を覚えている。

(これが、賢者の石)

「これで完成だ。約束の分を割るまで、ここで待っておいてくれ」

「はい」

賢者の石を持って、一人だけ別の部屋に入って行った。

「そういえば、あの人って、なんて名前だろ」

「そう言えばそうだよね。私達も前あっているときは何も聞いていないから」

クシャトルとイブが話し合っていた。そのころ、スタディンとアダムは別の事を聞きあっていた。

「自分に魔法の力があるって言う事はこれまで知らなかったから…少し心配だ」

「大丈夫だよ、今まで大丈夫だったんだろ?だったらこれまで通りに過ごせばいいんだよ。だろ?」

「そうだけど…」

「自分も見ろよ、魔法があっても何不自由なく過ごせるんだ」

「君の魔力は?どれくらいなの?」

「自分が157、クシャトルが149。だったかな?」

「それじゃあ僕達は君達より魔力の面では下なんだね」

「まあ、そうなるよな。でもそれがどうした?魔力が高いからと言って、それが一人ひとりの能力に直結しているわけでもないみたいだし」

アダムは顔が少し明るくなった。

「そうだよね。うん。ありがとう。話を聞いてくれて。そう言えば君達の勲章の授与式はいつ、どこになったの?」

「まだ聞いていないんだ。ただ、もうすぐだと思うよ。何せこれからは、コンティンスタンスさんのところに弟子入りする事が決定しているからね。いつの日になるか分からないけど。君達はどうするのか分からないけど、もしも、同じになったら楽しいと思わない?」

「そうだよね。きっと楽しくなると思うよ」

その時、部屋の扉が開き、中から声が聞こえた。

「みんな来て、ちゃんと分けれたから」


「はい。これが一人分。ちょうど5人いるから、5等分だよ。これで文句はないよね」

「文句を言う以前にすでに分けられていますし、もう文句のつけようがありませんし」

「そう言うこと。とにかくこれで決定ね。後は、誰がどれを持って行くかだけど、みんな、練成中の位置について。その目の前にあるのが君達の分だよ。これで決定ね。いい?」

「はい、いいですよ」

「うん、これでよし、みんなお疲れ様。あと、トマトジュースが…」

「もういいです!」

クシャトルが言う。

「さあ、みんなつき合わせてしまってすまないね。ああ、後これをコンティンスタンスに渡しておいてくれないか?」

「何ですか、これは」

「4人とも、一緒にコンティンスタンスのところへ行けば分かるよ。では、これで」

「すいませんが、あなたの名前を教えてくれませんか?」

「私の名前?それはコンティンスタンスの方に聞いてくれたら分かるよ。いまは、2時だしね」

「もう?あまり時間の感覚がなかった…」

「それも賢者の石の効力のひとつだよ。それと、この石はとても目立つからみんなにこれをあげよう。これにいれて行くといいよ」

「すいません。ところでこれは何ですか?」

「これはね、万能袋だよ、私が開発したんだ。君達一人ずつに上げよう。何でも入って、重さは変わらない。ただし、この中に生きているものと入れたらいけない。二度と生きて出れないから」

「分かりました。注意しましょう。ところで、あなたはどうするのですか?」

「私はね、このままここにずっといるよ。ただ、誰かにすぐ呼ばれるだろうけどね」

「そうですか」

「ああ、とにかく帰りな。ここはとても危険な場所だよ。それと、この中で昔のハードディスクを持っている人がいるね。早くその中を見るべきだよ。最後になったが、これをちゃんと協会の方に持っていく事。直接渡さないと受け取ってくれないよ。その時にもこの名刺を見せたらいい。最優先で仕事をしてくれるから。ああ、後、自分がここにいる事は、コンティンスタンス以外に言わないこと。いいね。じゃあ」

何も音がないまま闇に解けて行った。

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