第27部
「ここがその場所?」
「そうだよ、この宇宙ステーションの7不思議のひとつである、だれも住んでいないアパートだ。だが、ここには夜な夜な出るらしい」
アダムが言う。
「何が」
クシャトルが答える。アダムは雰囲気たっぷりに言った。
「幽霊だよ。このアパートにまだ人がいたころ、ここで殺されたという女の人の霊が、出て来るんだよ」
「それは7不思議じゃなくて幽霊屋敷だよ、それに今はまだ12時だよ。夜に出る幽霊が、こんな昼間に出るなんて」
スタディンが言った。だが、イブが声を出す。
「ねえ、あの部屋だけ電気ついてない?」
「え?そんなバカな…」
確かにだれもいないはずなのに、ひとつの部屋だけ電気がついていた。
「この宇宙ステーションで、昼間に電気をつけるのはいけないはずだ。行ってみよう」
アダムが提案して、みんな見に行く事にした。
「たしか、2階の右から4つ目だったよね。えっと、ここかな」
その部屋には、204号室とかかれてあり、その下には、すでに名前が読めないが、表札がかかっていた。
「すいませーん。だれかいますかー?」
「はーい」
中から声がした。部屋の扉が開き、顔が出てきた。
「あれ?君達帰ってきたの?それなら早く教えてくれればいいのに」
「すいませんが、あなたはだれですか?」
「ああ、忘れているのも当然だね。君達が会ってから10年ぐらいたっているからね。私は、君達が魔力を測りに行った時、占いをしていた人だよ。君達を誘ったけど、結局やらなかったね」
「ああ、あのときの占い師さん。お元気ですか?でもあのときからまったく変わっていないような…」
「気のせいでしょう。とにかく中へ入ってください。だれかに見られましたか?」
「いいえ、だれにも見られていないと思いますが」
「そう、それならいいの。さあ、早く入りなさい」
みんな入った後、周囲を丹念に確認して、扉を閉めた。
「夜な夜な現れる幽霊?それはきっと私だね。このアパートに人が入らなくなって、大体5年ぐらい経つけど、その間、私の実験のために、だれにも入られたくなかったの。あなた達が来たのは、その実験をあなた達だけには見せたくて、あなた達だけには正常に見えるように魔法をかけていたの」
「そう言うことだったんですか。ところで何の実験をしていたのですか?」
「錬金術よ。あなた達は見た事がある?」
だれ一人として、肯定的な返事をしなかった。
「そう。じゃあはじめて見るのね。じゃあ、錬金術って何か知っている?」
「はい」
イブが手を挙げた。
「じゃあ何か言って見て?」
まるで先生である。
「錬金術とは、古代エジプトを起源とし、アラビアを経て、ヨーロッパに伝わった、科学技術であり、非金属を貴金属に変化させたり、賢者の石などの、不老不死の薬を作り出そうとした試みの事です」
「そうね、大体そんなところね。さて、その賢者の石だけど、ここにそのための材料が全てそろっていたなら、どう思う?」
「今すぐ作る」
アダムが答える。
「そう。君達にも少しだけあげるけど、その手伝いをしてほしいんだ。いいかな?」
「いいですけど…何をすればいいですか?」
クシャトルがたずねる。
「内容によっては、手伝えませんけど」
イブが続ける。
「こら、とにかく何か聞いていいですか?」
「くれば分かるよ…」
とても怪しい雰囲気を出しながら、立ち上がった。スタディンとアダムは、立ち上がりながら考えた。
(怪しい…何か隠しているんじゃじゃないだろうな)
アダムが聞いてみた。
「何も隠していませんよね。一応確認ですが」
「ああ、私は何も隠していないよ。そのまま私についてきなさい。そうすれば何もかも分かるでしょう」
そのまま別の部屋に行く。
「大丈夫、だれもここで死にはしないよ」
みんなその部屋の中に入っていった。
中は少し蒸し暑く、床には不思議な文様が描いてあった。
「これは何ですか?」
「これが練成陣だよ。これを利用して練成する。材料はすでに設置している。君達の力と私の力を合わせて練成をするんだ。私の力では不足しているんだ」
「少し相談してもいいですか?」
「ああ、いいよ」
みんなはどうしようか、話し合うため集まった。
「どうする?」
アダムが小声で言う。
「とにかくここは協力しないと、そうじゃないと、なんかここからだしてらえないような感じがするけど」
イブが言う。
「そうだね、とにかく協力しないといけないような感じがするし」
クシャトルが続ける。
「じゃあ、みんな手伝うんだね?」
確認のためにスタディンがみんなに問いかける。
「うん。そのつもりだよ」
みんな肯定の返事をした。
「決まったかい?」
「はい。決まりました。で、何をすればいいのですか」
「そうだね、君達、魔力の確認をした事があるかい?」
アダムとイブはした事が無かった。
「そうかい、じゃあ、君達はここで確認をして見ようか。いいかな。おびえなくてもいい、すぐに終わるから」
まず、アダムが検査を受けた。他の人達は、外に出された。
「大丈夫かな…これでちゃんと分かるのかな…」
イブは考えていた。スタディンがイブ近づいて、話しかけた。
「大丈夫だよ。ちゃんとした人だったら何も傷つかずに、帰ってこれるよ。だから、心配しなくてもいいんだよ」
「本当?」
「ああ、本当だよ」
「そうなんだ〜。それを聞いて安心したよ」
「よかった。ところで、中ではどんな事をしているんだろう?」
3人は中の事が気になりながらも、のぞけなかった。
「終わったよ。次、この子の妹さんは?」
「あ、はい」
アダムが中から出てきて、イブが中へ入っていった。すぐにクシャトルが駆け寄る。
「どうだった?」
「いや、結果はイブが終わってから話すって、だから何も聞いていない」
「どんなことされたの?」
「部屋の真ん中に椅子があって、そこに座る、その後は眠り薬かなんかで眠らされて、覚えていないんだ」
「催眠術とかかけられていないよね。大丈夫だよね。突然暴れたりしないよね」
「そんな事はないよ。多分」
「多分って何?絶対じゃないの?」
「この世界に絶対って言う言葉は無いよ。僕達だって、若い時代は今しかない。だけど、それすら不確定なものなんだ。ところで、君達は明日下に降りるんだよね、今日、籍を入れるかい?」
そんな事を考えていなかったスタディンは、答えれなかったが、ちょうどその時、部屋の中から声がかかった。
「みんな。妹さんの分も終わったからちょっと集合して」
「は〜い」
これ幸いにと、すぐに部屋の中へ入っていった。
「ちょっと待ってよ〜」
クシャトルも入ってゆく。
(似たもの兄妹だな。まあ、自分が言えた立場じゃないか)
「おい、俺を忘れるなよ」
みんな元いた部屋の中へ入っていった。