第25部
第2章 宇宙ステーションでのデート
家に帰ってくると、クシャトルとスタディンの、お父さんとお母さんが待っていた。周りには町内会の人達が集まっていたが、新聞記者達はいなかった。
「おかえり」
お母さんが暖かい声で出迎える。
「ただいま」
スタディンとクシャトルも同じ声で答える。
「とにかく家に入って。話したい事もたくさんあるから」
お父さんが家の中に誘う。
「うん」
家の中にも人がいた。
「あなた達がいなくなっていた間にあなた達の妹と弟が生まれたの」
「え?」
「しかも、三つ子だったの」
「え〜!いつ〜?」
「あの〜、少しいいですか?」
控えめに出てきたのは、丹国の家族と、山川さんだった。
「私達もこの家に入ってもいいでしょうか?」
「ええ、それはこの家に居候してもいいかって言うことですか?」
「そう言うことですが、いいですか?」
(ずっとついてきていたのか?まったく気づかなかった)
「いいですよ。ただ、この家じゃ少し狭いから、下の家にしましょう。ただ、私達は仕事の都合上ずっとこの家にいるから、下の家の方は、この子達に案内してもらってね」
「わかりました」
その後は、お祭り騒ぎだった。一日中騒いだ。
次の日。
「ねむい〜」
朝の7時にみんな起きた。
「早く起きなさい。それと、スタディンにこんな手紙が来ていたよ」
すでに起きている、お母さんが手紙を渡す。
「なにそれ?」
「あの子からだね。とにかく開けないと」
勢いよく破ろうとする、スタディンを、お母さんが静止する。
「女の子からの手紙をそんな乱暴に扱ってはいけないよ。ちゃんとね、この手紙の折り方どおりにしないといけないよ」
それだけ言うと、お母さんは、スタディンから手紙を借りて、ゆっくりと開けはじめた。30秒ぐらいであいた。
「はい、あいたよ。それよりもその子は、今のこんな時代に昔ながらの手法をするね。いまは郵便なんてないからねぇ」
「どのくらい?」
起きはじめた、シュアンが話した。
「大体100年前だね。郵便事業が完全にメール事業のみになって、今なお拡大しつつあるの」
「今や300京GACという巨大な市場になっているんだよ」
お父さんが話しはじめる。
「昔はそんなに無かったのに、郵便事業が完全に無くなってから、急速に増えてきたんだ。もともと、郵便事業は相当大きかったのに、それをそのまま吸収してしまったのが原因だと思うよ」
「へえ〜。すごい巨大産業なんだね」
シュアンが言った。
「ところでずっと聞きたかったんだけど、君達って、何言語話せるの?」
シュアンが聞いた。
「大体2種類ぐらいかな」
クシャトルが答える。
「今話している日本語と、英語かな。他の言葉はあまり話せないね」
「自分は日本語だけだよ。あまり教育を受けなかったからね。英語は中学校ぐらいまでしか話せないし」
突然スタディンが立ち上がり、話し始めた。
「お母さん。自分これから子のこの家に行ってくる。いいね?」
「いいけど、どうして?」
「約束を果たしたいって」
「ところでその手紙の主は誰なの?」
「自分が好きな人だよ。じゃあ」
すぐに部屋を飛び出して行った。しかし、すぐに戻ってきた。
「お母さん。着替えどこ?」
「すぐに準備しますよ。少し待ってね」
1分もしないうちに服の準備が出来た。すぐに着替えて、
「今度こそちゃんと行ってきます」
「ちゃんと帰ってきてね。明日中に下に降りる予定だから」
「は〜い」
家のドアが開く音がして、閉じた。
「この家のあちこちを見に行ってもいいかな?」
ルイとシュアンが言い出した。
「いいわよ。クシャトルが案内してくれると思うよ。ねえ、クシャトル」
お母さんが、クシャトルの布団を見る、すぐに布団の中に体ごと入る。
「起きなさい!もう7時15分だよ」
「え?もう?」
「そうです」
もぞもぞ布団から這い出てきた。
「ご飯は?」
「準備中だから、その間にこの子達にこの家を案内しなさい。8時までには準備が出来るから」
「は〜い」
とても嫌そうな声で言う。
「そんなに嫌そうな声を出さないの。それと三つ子を起こしてきてね。彼らはあなたを見るのははじめてだけど」
「はい、はい」
言いながら、部屋のドアを開けて、
「こっちだよ。みんなついてきてね」
と言った。
「この家はどれだけ古いの?」
「大体新暦169年ぐらいに出来たと聞いているよ。宇宙ステーションが出来てから作られた一番最初の家に分類されるんだって」
「なかなか古いね」
「今いるここは廊下で、この一番突き当たりに、トイレがあるから。その右側には10畳の部屋があって、その向かい側が、いつも寝ている部屋、今は三つ子がすやすやと眠っているんだ。昨日言っていた人たちね。とにかくこの子らを起こす前に、この家の見学ツアーを終わらせるから。いいね?」
「うんいいよ。でも、この天井なかなか高いような感じだけど」
「この天井は、約3m50あるの。まだ私が小さいときに、この天井に手を付けようとして、思いっきり腰をぶつけたときもあったよ。だから絶対しないようにね」
「きっと誰もしないと思うけど」
「いいの、とにかく言うだけ言ってみるの。今私達が経っているところのトイレに向いて、右側が、12畳の部屋。左側には、玄関があるの。そして後ろを見れば、さっき出てきた18畳ぐらいの大きいリビングがある」
「これでおしまい?」
「下の家はもっと大きいけどね。とにかくここはこれでおしまい。さて、私は三つ子を起こしに行くけど、あなた達はどうする?ついてくる?それとも部屋に戻る?」
みんなついて来た。ゆっくりとドアを開ける。
「おはよ〜。みんな起きてる〜?」
とても小さな声で語りかけるように言う。
「おきているよ〜」
小声の返事が返ってきた。
「君は誰〜?」
「僕は、クリオン。あなたは?」
「私は、クシャトル。あなたの姉だよ?」
「お姉ちゃん?」
急に普通の声に戻る。他の二人も起きてきた。
「え?お姉ちゃんが帰ってきたの?」
「わーい。お姉ちゃんだ」
「みんな起きたね。これから朝ごはんだけど、みんな食べる?」
「うん!」
(子供って元気だね。って、私も子供か)
妙に懐かしい感覚にとらわれた。しかし、すぐにその感覚は無くなった。
「はいはい、早く出てくる。出てきて早く部屋に向かう」
「わーい」
すごく元気に部屋に向かって出て行った。