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第24部

新暦366年、地球連邦宇宙軍は、苦戦していたが、不思議な出来事が起こった。突然、敵戦艦が引きはじめたのだ。大統領は悩んだ。

「これは罠か、それとも何か起こっているのか。どっちなんだ」

その時、扉が開いた。

「大統領、あの者達が戻ってきたようですが、少しばかり問題が…」

「この戦争以上の問題が存在しているのならこちらが聞きたいぐらいだよ」

「第4銀河団の第367星系の第6惑星にある、アファールと言う船の存在を聞いた事はありますか?」

「一応聞いたが、確か昔の船だろう?それがどうした」

「その船が反撃に出たようなのです。さらに、その船の他にベルという船とカンルーガンと言う人達も戦闘に巻き込まれているようなのです」

「だからここから引いていったのだな。敵艦隊が足りなくなっているんだな」

「その通りです。全ての我々の領土から敵艦隊が撤退しています。しかしながら、敵の領土内のみ、とても苦境にたたされています。どうしますか、大統領」

「この場合はどうすべきだと思うかね。君の意見は」

「私個人的な意見ですが、連邦議会を復活させた上で、会議にかけるべきだと思います。それが一番の道でしょう」

「だが、そのような悠長な時間はとっくに過ぎ去った。私自らが出陣する。何かあれば副大統領に言ってくれ。では」

「少し待ってください。あなたは総合司令官ですよ。その人がいなくなったら…」

「個々の判断に任せる。もしも、私が死ぬような事があれば、副大統領を大統領にしておいてくれ。それに、司令官こそが最も戦闘を走るべきだと私は考えるので。後を頼んだ」

大統領は何も聞かずに去っていった。

(あ〜あ。私は何も知りませんよ)

そう考えながらも、彼は考えていた。

(1年前から戦局が変わりつつあったが、もしや、あの人達が?とにかく大統領に近づいたままじゃないと何も分からんし)

「私も行かせてもらいます」

部屋のドアを開けっぱなしにしながら、廊下の大統領に向かって叫んだ。返事が返ってきた。

「それなら早く来い!今すぐ出発するぞ!」

(あ〜、もう!後はどうとでもなれ!)

「分かりました!」

すぐに準備をして、大統領の秘書官兼首席補佐官は、大統領と共に戦場へ行った。


再び特異点を抜けて来た場所は、戦場の真ん中だった。突然の戦艦群に対して、ベルが自動的にバリアを張った。それと同時に周りからの一斉射撃があった。すでに、第1の目標をクリアしていた。

「この船の現状は?」

「戦場のど真ん中で、バリアをはって耐えている状態です」

「そんな事は分かっている。この船の被害状況を聞いているんだ」

「皆無です」

「被害なしか?」

「そうです。ただ多少、ねじが緩んだ所があるようなので、そこを締める必要がありますが」

特異点を間違えて、別の場所に出てきたら、そこが第2の目標地点の、第4銀河団の第367星系だった。という偶然によって、無事に、アファール号を奪還できた。だが、周りからいくらでも出てくる敵艦隊によって、苦境にたたされていた。その時に部下からの「ねじ」という、一言で思い出した。

〜ピアノの鍵盤・スパナでねじ回し〜

その一言で思い出した。何もかも。

「クシャトル、魔法を使おう。きっとこれが発動条件だったんだ」

「え?どういう事?」

今いる戦闘指揮室には、ウィオウスやクォオス達がそろっていた。

「ピアノの鍵盤・スパナでねじ回し」

はっとした顔になった。

「後は、あの人と一緒になるだけだが、今、イフニ・ステーニュさんは、どこにいる?」

「ここにいますよ」

すぐ後ろから声がした。本当にすぐ後ろにいた。

「いつの間に…さっきまではいなかったはずだけど…」

「さあ、それより私に話って何?」

「自分達はこの場所で魔法を使うべきだと思う」

「魔法ですか、では、封印の解くための鍵を見つけたのですね。それは何ですか?」

「お父さんが話した言葉と、あなた自身だ」

「伯父さんの言葉?」

「「ピアノの鍵盤・スパナでねじ回し」それと、あなたの名前です」

「私の名前ですか。よく分かりましたね」

「え?どういうことですか?」

「私は、あなたの知り合いの、コンティンスタンスさんから言われていました。「もし、これからこの子達が魔力が必要になったときにはお前がそばにいるだろう。その時までこの子達にはある呪文をかける、お前がそれを解くための鍵だ。全ての責任をお前に預ける。よろしく頼むぞ」という風な感じです」

「で、その呪文とは?」

「簡単です。封印の印を使用していますので、解印の印を結べばいいのです」

「そのやり方は?」

「あなた達は、私の言うことに従ってください。まず、私に背中を向けて座ってください。そして、何も考えないようにしてください。後は私がどうにかします」

「分かりました。ではお願いします」

スタディンとクシャトルは、いわれた通りにした。他の戦闘に関していない、クォウスは、こちらを見つめている。他の人達も、こちらを見ているようだった。ステーニュは呪文を唱えはじめた。

「全ての神々よ、我について全てを知るもの達よ、我の命により、コンティンスタンスが付けたこの封印の印を今開放し、イフニ・スタディン、イフニ・クシャトル、両名の魔力を限界まで高め、いかなるものの拘束も受けずにして、魔力を開放せよ!」

いい終わった途端に、稲光が走り、一瞬まぶしすぎて何も見えなくなった。ゆっくりと視力が回復してくると、二人の新たなる力を手にいれたようだった。

「これが魔力…いかなるものも受け付けない力…」

「これで私達も戦えるね」

「そうだな」

「夢の中で見たかもしれませんが、あなた達の力のうち、スタディンの力がよく分かりません。何が出てくるか分かりませんので、それをしっかり覚えてください」

二人は手を振って答えた。

「どの船で行きますか?」

「一番小型な船だ。すでに準備をしておいてくれ」

「了解しました。生きて帰ってきてください」

「分かっているよ。ちゃんと帰ってくるから」

「あの!」

シュアンが話しかける。

「もしも、ついて来たいならば今回はやめといた方がいい。これからは、戦場だ。君達を殺させたくない。それに自分の能力も未知数だ。何が起こるか分からない。君達を連れて行きたいが、それでも今回はやめといた方がいい。この中が一番安全だ」

そう言って、二人はこの部屋から出て行った。シュアンは二人の背中を歯を食いしばって見ている事しか出来なかった。


船に乗り、兄妹は、戦闘態勢を整えた。今は音声通信を切ってある。

「ねえ、お兄ちゃん」

「どうした?」

「これは正しい事なのかな」

「正しい、正しく無いを論じている時間は無いと思うが。とにかく、こんな戦場の真ん中で、相手に調べつくされている船と、同じような感じの船があって、周りに敵しかいない状態で、他に手段は無いと思うが」

「自己防衛手段としての戦争。第1次世界大戦も、第2次世界大戦も、第3次世界大戦さえも、同じような理由だったね」

「人間は進化し尽くしてしまって、これ以上どうにもできないのかもしれないな。とにかくこれからシアトスと交信を開始する。これからは私語は出来ないから」

「分かった」

スタディンは、交信を開始した。

「こちら第1号機、管制官、応答せよ」

「こちら管制官、シアトスです。準備が出来ましたか?」

「ああ、1号機の出発許可を申請します」

「申請を受理します。これから10秒後に船外離脱します。よろしいですね」

「了解した。これより10秒後船外離脱」

「10秒前…、5秒前、4、3、2、1、0!」

勢いよく船が動き、すぐに船の外へ降り立った。

「バリアの解除を申請します」

「申請を受理します。これよりバリア解除します。なお、解除時間は、ちょうど1秒間です」

「了解した。このまままっすぐ行けばいいのか」

「そうです。まっすぐ行って下さい。接触と同時に弱い衝撃が走りますが、その瞬間にバリアを1秒間解除します」

「了解した。交信終了」

管制官との交信を終え、通信の接続を切った。


その後10秒後に弱い振動を感じたが、すぐに消えて、そのスピードのままバリアの外へ出て行った。当然、敵からの一斉砲火がかかる。

「これを切り抜きながら、魔力を発動する。いいね」

「うん」

心配そうなクシャトル。

「大丈夫だって、夢にも出てきたろう、魔法の能力は、万能型だって」

「そうだけど…」

話している間でも、敵の攻撃がこの船を襲う。

「とにかく自信を持て、そうすればきっとうまく行くよ」

「そうかな…」

「そうだよ!」

攻撃の第1陣が当たってきたが、まったく効果が無かった。

「本船の損傷は皆無です」

常に冷静な声の合成音声が聞こえてくる。

「こちらの反撃だ!」

スタディンとクシャトルは、外の方に力を向けた。白い一筋の閃光が船から出てきて、一瞬で数百機を撃墜した。なおかつ、その破片で、数え切れないぐらいの船に対して、損傷を与える事に成功した。

「これで自分達も、立派な戦争関与者だ。戦犯と言われてもきっと文句は言えないな」

暗い影が顔をよぎる。その時、後ろから白い煙が漂ってきた。そして、

「ゲホ、ゲ〜ホゲホ」

むせる声が聞こえてきた。

「誰だ!」

攻撃をやめ、そちらに注目を集める。

「この声に聞き覚えが無いかな?」

そう言われてみると、聞き覚えがあった。先に気づいたのはクシャトルだった。

「あー!あなたは、もしや、コンティンスタンスさん?」

「え?」

「やっと気づいたようだね」

煙が消えて、そこに現れた姿は、夢で見たときとまったく変わっていなかった。

「君達にまずおめでとうを言わないといけないな。魔法が使えるようになったんだね。ただ、この戦争でまだ魔法を使うべきではなかった。何せ相手はこの魔法の事を知らない。それに、君達は、まだ、魔法がちゃんと使えない。いずれ、私の元で弟子として修行をする事になると思うがね。これは有効な切り札として使おうと思っていたんだが、まあ、使ってしまったからには、練習して使いこなせるようにしないといけないな。すでにここの星域に、大統領とその軍が来ている。君達はよくやってくれたよ。この年で、戦場でこれほどの活躍をしたから、きっと褒章がもらえるだろう」

「そうですか。とにかく、どうしたのですか?この戦争は何故起こったのですか?」

すでに船に戻りつつあった。このままでは破片にあたって、危険と自動的に判断したのだろう。

「よくある話さ。この宇宙の文明の3大勢力のうち2つが、こちらとの意見の相違から、戦争をしかけはじめたんだ。これがきっかけで終わるといいのだが」

船に帰ってきた。それからしばらくの間、戦争をしないと言う内容の、不安定な安全条約が締結される見通しとなった。理由はこの際関係ない。とにかくこの宇宙に久し振りに平和が訪れた。その後、スタディンとクシャトルは、地球に戻ってきた。再び縮空間を通って、今度は間違いなく同じ時空に帰ってこれた。

「やっと帰ってこれたよ。何週間ぶりかな?」

「何週間じゃないですよ。こちらの主観時間では、すでにあなた方が去ってから、3年が過ぎているのです。ただ、あなた方はこの宇宙の英雄です。これから全宇宙に対して、この宇宙の平和条約の締結式が中継されますが、見ますか?」

「いや、お父さんとお母さんに会いに行ってくる。それと、このハードディスクも読んで見ないといけないしな」

「では、また会うときまで。それと、コンティンスタンスさんからの伝言ですが、いつでもあの場所で待っていると言うことでした」

「分かった。ありがとう」

二人は船長から開放された感覚を味わいに船から出て行った。すぐに、テレビ局のレポーターや、新聞記者がやってきた。全てを無視して、家に帰っていった。

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