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第22部

暗い部屋の中で二人が寝ている。横では、魔力の確認をしている、コンティンスタンスがいた。

「この子達の魔力は、すばらしいな。自分もこんな子がいたら良かったのだが…」

いろいろ独り言をつぶやいている。

(「お兄ちゃんいる?」

「ここにいるよ」

「私達って、やっぱり、魔力があったんだね」

「でも、使い方を忘れたみたいだね。この夢がきっかけで思い出すかも…」)

検査は続く。

「次は、この子達の魔力の種類だな」

(「魔力って種類があったのか」

「そうみたいだね。とにかく結果を聞こうよ」)

すると、コンティンスタンスは、兄妹の体を魔法陣の上に置き、なにやらつぶやきはじめた。何をいっているかは分からなかった。すると、魔法陣から白っぽい煙が出てきた。どんどん煙が出てくる。しかも、少しづつだけど、煙の出る量も増えてきていた。そして、兄妹の体が完全に煙で見えなくなった時、呪文が終わり、煙も消えた。ただ、少し白くはなっていたが。コンティンスタンスは、魔法陣のすぐ横に置いてある機械に向かい、なにやら打ち込みはじめた。すぐに、結果が返ってきたようだ。

「これは…普通ではないな…いや、彼らは元から普通ではなかったが…しかし、この結果は…」

ついに、彼らは、好奇心を抑えられずに動こうとした。しかし、体は動かなかった。

(「どういうことだ?体が動かない…」)

その間にもコンティンスタンスは検査を続けてたが、この打ち出された結果がすごかったらしい。何もいわなくなった。検査が終わり、兄妹は再びベットに寝かされた。コンティンスタンスはメモをし始めた。メモをしながら、それを確認するように、言いはじめた。

「魔力、スタディンが157、クシャトルが149。種類、スタディンが白、クシャトルが白。能力、スタディンが不明、クシャトルが万能型。発現条件、スタディンが15歳時点…、クシャトルが10歳時点…。ぐらいかな」

メモを終えて、コンティンスタンスは、ベットに入り、寝はじめた。


「起きてよ。もう朝だよ」

女性の声が聞こえて、スタディンは目が覚めた。

「今何時?」

「もう11時だよ。寝すぎだよ。大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

目を開けると、そこには、シュアンが覗き込んでいた。

「おはよう」

「おはよう。ところでクシャトルは?」

「まだ寝てる。このままだと、12時を過ぎても寝ているよ」

「もうそろそろ起こすか」

そのまま腰の力で起き上がり、クシャトルの姿を探す。

(みつけた!)

クシャトルは、安らかな寝息をたてていた。音も無いようにゆっくりと近づいて、そして、

「起きろー?」

耳元で大声を出して起こした。びっくりしたようで、そのまま座ろうとした。結果、周りに響き渡るような音をたてて、頭がぶつかった。

「って〜」

「あれ?何時?もうお昼?」

「そうだ。もう11時だぞ。もう起きないと、何も食えなくなるぞ」

「え〜。それは嫌だ〜」

「ワハハハ」

後ろから笑い声が聞こえる。

「これは、すごいときに来てしまったようだね。ところで、二人ともいかがお過ごしかな?」

再び大統領が来た。だが少し様子がおかしかった。

「どうしたんですか?何かおかしいような…」

「その事なんだよ。君達にしか言えないのだが、いいかな少しだけ」

「いいですよ」

扉を閉めて、大統領が部屋に入ってきた。

「実はこの島が、危ないらしい」

「また地震ですか?それなら…」

「いや、地震ではない。この島のみに起こる事だが、君達も逃げてほしい」

「何が起こるのですか?」

大統領は、一息入れてから続けた。

「巨大なテロ行為だよ。原子力関係を狙うという声明を受け取った。ちょうど1時間前のことだ。すでにニュースでも流している。君達以外の人達も退避をはじめている。君達は、この星以外の人だ、もしも何か持って帰りたいものがあるなら、持って帰るといい。だが、

もうこの星には戻れないと思うが」

スタディンが答える

「分かりました。私達兄妹がほしいのは、この3兄妹です」

意外な答えにみんな驚いたようだ。

「私達?どうして?」

「この話を聞いている人全てに聞きますが、誰にも言いませんか?」

全員、言わないと誓った。

「自分達の世界は、この星です。ただ、私達が出てきたときには、新暦363年でした。私達は、その事を隠すためにうそをついていました。ですが、私達が未来から来た人達とは言わないで下さい。さらに、私達の時代では、西暦1980年代から2140年代の歴史が存在していないのです。この時代に来たのは偶然ですが、もしかしたらその時代の事を知る事が出来ると思ってここにいました。しかし、そのような自体が迫っている以上、ここに長居は出来ませんね。この子達さえよろしければ、私は、この子達を連れて帰りたいと思うのです。よろしいでしょうか、ウィオウスさん」

「自分の息子と娘達は、自分で判断が出来る年齢だ。それぐらい私ではなく、彼らに聞いてみたらどうだ?」

「私は行く!」

最初に自分の意見を言ったのは、シュアンだった。

「私は誰がどう言おうと絶対行く。だって、この時代より、363年の方が楽しいに決まっているもの」

「楽しいかどうかは分からないけれど、便利にはなったな」

「私も行きます」

次に言ったのは、クォウスだった。

「お姉ちゃんが、何かすると必ず誰かが後始末しないといけないでしょ。私以外に誰がするのよ」

「僕も行く」

ルイも言った。

「お姉ちゃん二人ともいなくなって、さびしくなってしまうのが嫌だし、それに、冒険もしてみたいし」

「決まりですね。では、3人とも連れて行ってもいいですね」

「ああ、息子と娘達を、大事にしてくれ。あと、君達の技術を、導入して、原子力テロから守りたいのだが、いいかな」

「いいですよ。もしかしたら、これは運命かもしれませんし」

「運命か…久々に聞くな」

「それよりも、早くここから脱出した方がいいよ」

大統領が発言した。

「声明によると、大体これから、24時間の猶予を与えるが、それ以後はいつでも爆破すると言っている。それに、技術はすでに取ってある」

「早いですね。分かりました。では全ての乗組員に連絡を」

「すでにしておる。みんなはもう、船に乗り込んでいるよ。あの地震で、恐れをなしたらしい。すでに周回軌道上を回っているが、船を一隻残して行っているそうだから、それに乗り込んで行くということと、あと、これを君に渡しておこう」

渡されたのは、ハードディスクだった。

「この中には何が?」

「それは、見てのお楽しみだ。さて、私はもうそろそろ行かなくては行けない」

「ありがとうございました」

「礼は要らんよ」

「あなたは、どうするのですか?」

おじさんと、ウィオウスは、答えた。

「自分達も行ってもいいのなら、行きたい」

大統領が振り返って言った。

「それと、君達はみんな、行方不明者リストに載せる事になると思うから」

「行方不明…ですか」

「そうだ。家族の方には、連絡を入れておこう」

「分かりました。で、船長、返答は?」

「いいでしょう。ただし、私の船の中では、お客用の部屋はありません。もしかしたら誰かと相部屋になる可能性もあります。それでもいいですね」

「ああ、行きたいんだ」

「分かりました。では大統領、後の事はよろしく頼みますよ。あと、どうやって上に出ればいいですか?」

「簡単だ。みんなに、これを渡しておく。このカードの中にはICチップが入っているから、かざすだけで、どこでも行けるようにしている。これを使ったら、最優先で実行してくれるだろう。それに、そのチップは、この国の国家予算を無制限に使ってもいいという、許可の情報も入っているから、そのカードは絶対に落とすな」

「わかりました。では、よろしくお願いします」

こうして、旅の仲間が増えて、この星を後にした。


「この星にはもう二度と戻れないよ、本当にいいんだね」

「うん」

「なんか、姉と妹と弟が増えたみたい。なんか楽しいな」

おじさんが話かけてきた。

「そうか、それは何よりだ。おっと、そう言えば、まだ自己紹介すらしていなかったな。自分の名前は、山川満だ」

握手を求められたので、握手をするスタディンとクシャトル。

「そう言えば、どこに船があるんだ?」

「多分、神戸宇宙港だと思います」

「あそこか、あそこだと、ここから30分ぐらいはかかるかな」

「車ですか?」

「当たり前だ。ここから歩きで行くのなら、自分は、絶対行かんよ」

「車はどこにあるのですか?」

満は不敵な顔を浮かべた。

「そこら中さ」

「?」

ここに来たところまで来て、はじめて、カードを見せた。

「分かりました。どうぞお通り下さい」

(このカードには何が書いてあるのだろう)

スタディンは思ったが、船に行くまで我慢する事にした。


「久しぶりの地上だぞ。みんな喜べ。海の水も完全に引いているし、車はそこらじゅうにある」

「もしかして、車を盗むつもりじゃ…」

「盗むんじゃなくて、借りるんだよ。借りるの。まあ、帰ってくるかどうかは知らないが」

「それって、盗む事と同じ意味だと思いますが」

「まあ、大丈夫でしょう。きっと」

(犯罪だと思うけど〜(みんなはしないようにね!))

あっという間に、車のドアを開けて、エンジンをかけた。

「手慣れていますね。どうやってその技術を?」

「自分の伯父が車の修理工をしていて、その横で見ていていたから、覚えてしまったんだろうね」

「そうですか」

みんなは車に乗り込み、全速力で、銀杏並木の大通りを突っ走っていた。


どこも壊れてはいなかった。

「半壊・全壊家屋が、相当数あったはずですけど、どこも壊れていませんね」

「いや、ここよりもっと南の方は被害が大きかったはずだ。多分ここじゃなくて被害の中心は、もっと南だったのだろう。一歩郊外に出ると、旧基準で作られた家は、未だに、あちこちに建っているからね。それらが相当数壊れたのだろう」

車は、高速道路に入り、海沿いを通っていった。

「後はこのまま、ずっとこの道を通って行けば大丈夫」

「いいんですか?あなたの奥さんを置いていっても」

ウィオウスにたずねた。

「大丈夫です。大統領の方から伝えておくと言っていましたし、いつか宇宙に出たいといつも行っていましたので、きっと私の気持ちも分かってくれるでしょう」

いつもはにぎやかな車の中が、今日は静かだった。


いつの間にか、高速道路から降りて、埋め立てられた土地を走っていた。目の前には、浸水している土地が見える。

「ここまで津波が来たのでしょうか?」

「液状化現象かもよ。土の中の水分が全部出てきちゃうという現象よ」

シュアンが言った。

「そう。埋め立て地は、液状化現象が起きやすくなるんだ。だから用心が必要になる」

幸い、宇宙港へつながる橋は、倒れてはいなかったが、橋は根元から折れそうな形でぶら下がっていた。

「このまま行くしかないな。みんな、ちゃんとシートベルとしめときや!」

一気にスピードが上がってゆく。これまで出た事が無いような速度まで上がり、一気に橋を通り抜けて行った。

「危なかったな。みんな大丈夫か?」

満が後ろを振り返ると、みんな、どこかにつかまっていて、難を逃れていた。

「ちょっと、スピード上げるときは、いつも早めに言ってっていっているでしょう?」

シュアンが怒っていた。

(あんなスピード出されたら、普通は怒るよな)

スタディンには、クシャトルとクォウスがつかまっていた。

「ちょっと、のいて。動けない…」

ちらりと横を見る、ルイだけは何も動じていなかった。

(すごいね、こんな状態でも、冷静に保てるとは)

「到着したよ。はい、早く降りる、降りる」

すぐに引きずりおろされそうになる一行。向こう側から、女性の声が聞こえてきた。

「お久しぶりですね。山川満さん」

ばっ、と振り向く。

「大統領にあなたが旅立つ事を聞いてここに来ました。私も行きます。正確には、私の夫と一緒にと言うべきですが」

ようやくみんな外に出れた。ウィオウスは、驚いていた。

「どうして、ここに?」

「さっきも言ったでしょう。私もあなたについて行くと言ったの」

子供達は、少し離れたところで固まっていた。小声で話をする。

「あの人は?」

「私達のお母さん。丹国紗希だよ」

「あの人が?今何歳」

「それは失礼な質問だと思うよ」

見た目はとても若く見える。

(まあ、女性に年齢を尋ねるのは、確かに失礼に当たる)

「ここは、聞かないべきだよ」

スタディンはクシャトルに諭すような口調で言った。

「ぶ〜」

ふくれっ面をして、そっぽを向くクシャトル。向こうの話はよく聞こえなかったが、二人そろってこっちに戻ってきた。

「私も乗ります。いいですか?」

「いいですけど…家族の方とかは?」

「大丈夫です。私は、私の夫とどこへでも行くと決めましたから。それに、自分の血縁者にはすでに私の意志は硬いという事を伝えていますので」

「分かりました。ではこの8人で行きましょう」

みんなは、船に乗り込むため、飛行場の中へ入っていった。

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