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第13部

「今すぐ!本気で言っているの?」

「本気だよ」

「分かった。ベル、みんなに連絡して、今すぐ発射準備をするように」

「分かりました」

「ふ〜。これでよし。私たちも発射準備を整えておかないとね」

「ああ、そうだな。ベル、それと、準戦闘態勢は解除してくれ。解除名称、イフニ・スタディン。暗証コード、3646497979」

「暗証コード了解、解除名称了解、準戦闘態勢は解除します」

「自分もこれでよし。後は彼らに連絡を取る必要があるね」

「うん」

とても元気に返事をする、クシャトルだった。


「では行きましょうか。ところで、どうやってここまで来ましたか?」

「縮空間をいくつも経由してここに来ました」

「これからはすぐに、空間を旅行できる方法ですが…ひとつ問題があるのです」

「どんな問題ですか?」

「あなたたちは縮空間の基本粒子である、タキオン粒子に変化していますよね、それでは無く実空間の基本粒子の、実粒子になってほしいのです」

「分かりました。すぐにしましょう。あなたたちはどうしますか?」

「もしよろしければ、私たちもお願いできますか?この方法で旅をするのは久しくしていなかったので…」

「分かりました。では、必要な船を私たちの船の周りに配置してください。10分後に機械を作動して、実粒子にしましょう」

「実粒子になった後は、何も言わずに私たちに付いて来て下さい。もしも、付いて来なかった場合は、あなたたちは、生きて帰れませんから、注意してください」

「分かりました。注意しましょう」

「では10分後に」

「交信、終了」

映像とともに、音声データがすべて切れた。

「船長ってすごいですよね、普通なら緊張するような外交の場でも、何事も無いように振る舞いますから」

「いやいや、自分はこれでも緊張しているよ。ただ皆にばれないようにしているだけだよ」

「そうなんですか。驚きです」

「ハハハ、驚かれるようなものではないよ。基本的に、相手に自分の感情が読まれてしまったら、外交上、とても自分たちに不利になるから」

シアトスや他の乗組員たちと談笑していた。

「船長、もうすぐ約束の10分が経ちます。準備をしてください」

「わかった。皆に告ぐ、これから再び実粒子になる、なった後は、相手の船について行く事になる。分かったね」

「了解!」

「10分まで後、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0!」

「変換実行!」

「了解!変換実行!」

そのとたんに変な空気が満ちはじめた。そして、

「ついてきてください!」

それだけ言って、すぐに発射して行く船が見えた。

「すぐにあの船について行け。そうしないと皆死ぬぞ」

そして不思議な空間へ入って行った。3惑星連邦=新中立国家共同体に向かう船すべてが、何が待ち受けているか知らずに…


その空間は、見た事がない空間であった。ひものような物が果てしなく伸び続けており、それがこの空間に満ちているのだ。しかし、船はその事を気にする様子もなく、慣れたように、ひもからひもへ、飛んでゆくのだった。今のところ着いて行っているが、どこまで行けるかが分からなかった。そして…

「着きますよ!」

船中に声が響いた。

「総員、衝撃に備えよ!」

その時、体が宙を舞った。頭から床に落ちたが、頭がとても痛くなったと言うこと以外、特に何も起こらなかった。

「いった〜。どうなっているんだよ!まったく。船に怪我は?」

「いいえ、ありません。外傷者もおりません。席から飛んで行ったという者もいませんよ」

「そ、そうか。ならば大丈夫だな。ところで、ここはどこだ?」

そして、相手の方から連絡が入った。

「ここは、あなた方のふるさとの星の一番近くの、特異点です。ただ、あなたたちが来た特異点とはまったく違います」

「それは銀河大辞典にも書かれているのか?」

「銀河大辞典?なんだいそれは?」

「君は宇宙文明を知っているか?」

すこし、疑いながら訊いてみた。

「ああ、何度も見ているが…銀河大辞典と言うのははじめて聞いたよ。また後で、見させてくれ」

「ああ、いいとも。暇なときに見せる事にしよう。ところで、ここは本当に、自分たちのふるさとなんだよな」

「その通り。ここが君たちのふるさとだ」

「それにしては何か違うような感じが…」

その時、突然通信が入った。

「そこの船は、何者だ!船名と所属機関を名乗れ!」

「わたしは、ベルジュラック号の船長、イフニ・スタディン。所属は三惑星連邦だ」

「三惑星連邦?どこにあるそんな国は。ここは、太陽系の全地球統合連邦国という国だ。惑星の名前としては、地球と言う名前になる。異星人の船を見るのははじめてだ。ぜひとも話がしたい。こちらに来れるか?」

「少し、皆と話がしたいから、時間をくれないか?」

「ああ、いいとも。好きなだけ話してくれ」

二つの船は、一番近くの小惑星に船を下ろし、相談をした。

「ここは、3惑星連邦でも、今までの時間軸上でもない。新たなる惑星、新たなる時空だ。これはどういうことなんだろうか?」

「私たちにも分からない。ただ分かっているのは、ここは少し位相がずれているということだ。しかし、外が非常に静かだし、生命を宿した星はこの星だけらしい。どうする?このままこの星の人たちと話をする必要があると思うが」

「そうだな。この星の技術がどこまで進んでいるか分からないが、とりあえず、安心しておこう。ただ、彼らは我々が別の宇宙から来ている事を知らない。そこを隠していく必要がある。それさえ注意すればたぶん大丈夫だろう」

「そうだな。そうしよう」

「よし、行く先は決まった。ベル、あの星まで何時間かかる?」

「約3時間です。船長」

「ならば、3時間の間、自分は寝る。後の事は、あなたに託します。自分たちを守ってくださいね」

「分かっている。同盟関係の種族の役目だろう」

「では、出発だ」

そして、小惑星から飛び立った。


寝室で、スタディンは、クシャトルと話をしていた。

「だからね、私とお兄ちゃんがそばにいると、必ず共通した夢を見るの。だからね、今回も見るのかなー、って、思ったの」

「そういえばそうだよな、夢の王様を見る前から、時々一緒に見るけれど、王様に会ってから、夢を見るたびに、見ているもんな。やっぱり今回も見るんじゃないのかな?」

「ふ〜ん。今回も見れたらいいね」

「そうだね。おやすみ」

「お休みなさ〜い」

二人は眠りについた。


スタディンは、現実世界では着た事もない、1960年代に流行った、ジーンズをはいて、立っていた。

(「お兄ちゃん?」

「ここだよ。すぐ横」)

振り向くと、すぐ横にスタディンがたっていた。こちらも、ズボンと、登山用の長袖の服を着て、立っていた。

(「ここは、どこ?」

「わからない。まだ見たこともない世界みたいだ」

「お兄ちゃん、わたし、何か怖い」

「ああ自分もだよ」)

そして、目の前を向こう側からの行列が通り過ぎて行った。しかし、最後の方で、少しとまって、こちらへ人が出てきた。

「こちらへおいでください。二人とも。これより夢の王が、兄弟である、この世界での時の神の化身へ会いに行かれるのです。彼へ会うところまではすぐに着きますので、どうかご足労を願いたいのです」

「分かりました。行きましょう。ただし、あったらどうなるのかを教えていただけますか?」

「どうにもなりませんが、自分の将来を聞くことができます」

(「どうする?」

「行くっきゃないでしょう!」)

その返事を聞いて横を見ると、目を輝かせているクシャトルがいた。

(行くしかないな。じぶんも言っちゃったんだし)

兄妹は列の最後尾について、歩き出した。


そのころ、新中立国家共同体では、不思議な現象が起こっていた。

「この現象は解明出来そうか?」

「いいえ少し難しいでしょう。大統領」

閣議において、非常に難しい選択を強いられているときに、さらにややこしくする事態が起こっていた。

「この謎はこれまで経験した事がありませんので…いまいち様子すら分からない状態なのです」

「だが、これを知っているのは新中立国家共同体のメンバーのみだろう。いまのところは」

「この現象は、宇宙戦争に対して有効かもしれませんね」

「どういうふうにだ?」

「この現象は、そこにあるはずもない船をあるように見せかける事が出来るのです。なので、そこを利用して、ひとつの船をあちこちに分散しておいて置きます。そこで相手の船が来たときに、いっせいに攻撃を加えます。この現象のすばらしい効果は、攻撃もすべて複製してしまうことです。なので、実物が破壊されてしまったらすべての船が破壊してしまいます。だが、それまでは、こちらの攻撃し放題です」

「よし、それで行こう。だが、どこに出るのかは分かっているのか?」

「それはこれから2日後までに分かると思います」

「はやめに頼む」

「分かっています、大統領」

閣議は終わった。大統領は、全員退出するまで待って、王族保護省へ連絡して、一人の男性を呼ぶように言った。


「失礼します」

そう言って大統領の部屋へは行ってきたのは、スタディンとクシャトルのお父さんだった。

「待っていたぞ。早速だが君の娘と息子は今どこにいるか分かるか?」

「皆目見当もつきません。それよりも、タキオン粒子で調べたほうがよいと思いますが?」

「それはいけない。相手も同じような機械を持っている。すぐにどこにいるか分からないことがばれてしまう」

「分かりました。ほかに御用は?」

「いや、特にない。もういいぞ」

「分かりました。では失礼します」

そして、大統領は一人になった。

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