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第12部

(また夢を見ているのか)

そう思いながら周りを見ると、はじめて両親に連れられて、3惑星連邦を見たときの光景であった。

「おとうさーん」

近くで叫んでいる子供がいた。その子の近くには女の子もいる。叫んでいる少年は自分であった。

(「ねえ、お兄ちゃん」)

近くで声がした。横を見ると今の姿のクシャトルが立っていた。

(「どうして、ここにいるの?」

「分からない…。ただ過去を見ていることだけは、はっきりしているよ」)

確かにその通りであった。

彼らはこのときにはじめて魔法や錬金術を見たのだ。兄妹はその事を決して忘れなかった。

「おとうさーん」

彼らには自分たちが見えていないようである。

「ここにいるぞ!よーし、やっと捕まえた」

「お父さん!お母さん!」

すでに半泣きだったクシャトルとスタディンは、やっと会えた事で安心したのか、泣き出した。

「おいおい、何で泣くんだ?」

「だって、だって、お母さんと、お父さんが…」

「大丈夫。私たちはここにいますよ」


ようやく泣きやんだのは、それから少したってからであった。

「そういえばお父さん。ここの惑星は、魔法が出来る人たちばかりなんだよね。見てみたいな」

「うん、そうだな。時にはそういう風なものを見せるのも必要だろうな。よし、見に行ってみようか」

「ほんと!いってみてもいいの!」

兄妹はほぼ同時にしゃべった。

「ああ、いいとも。ただし、相手に嫌な思いをさせてはいけないぞ」

「うん!」

兄妹は元気よくうなずき、歩きはじめた。そして占い師の横を通り過ぎたとき、声が聞こえた。

「君たちはすでに大きな旅に出ようとしている。君たちは二人で協力して行く必要がある。時の流れを超え、この宇宙でとてつもない勢力となる。君たちの未来が見たいか。見たいならこの占いを見て行くがいい。君たちは面白い事になりそうだ…」

「ねえ、お父さん、何か言った?」

お父さんは不思議な顔をしながら言った。

「いや、何も言っていないが?どうした、何か聞こえたか?」

「ううん、なんでもないの」

クシャトルが何食わぬ顔で答える。このときふたりとも、同じ言葉を聞いていたのだ。

「ねえ、パパ」

クシャトルが突然たずねた。

「うん?なんだい?」

「私たちの名前ってどういう風に付けたの?」

「うん、それはだね。昔いたと信じられている神様から取ったんだよ」

(そういえばそのまま教えてもらっていなかった。いったいどんな神様だったんだろう)

その後、錬金術をはじめてみた。ちょうど、スタディンは9歳、クシャトルは8歳であった。


そのころ新中立国家共同体は、宇宙文明の3種族と会合を開いていた。

「我々が知りたいのは、いかなる風に、縮空間上の種族と同盟を結べたか、という点です」

鷲の姿とそっくりな、ワイナロが話した。

「私たちにも分かりかねます。すでに同盟を結ぶための条文も公式なものである上に、結んだ本人はどこにいるか分からないからです」

「何故分からない。お前たちは分かっていながら我々に隠しているのだろう!」

逆上するインフラトン。最も人の形に似ているその体からは、怒りのオーラが具現化するほど強力に放射されていた。

「まあ、落ち着いたらどうです?」

なだめるのは、この3種族中唯一の非好戦種族の、ベネトレートであった。

「とにかく分からないって言っているのだから、そういうことなんでしょう」

しかし、いくらなだめても、2種族の代表者は聞かなかった。

「我々は侮辱を受けた!我々は今より3日後に宣戦を布告し、新中立国家共同体に対して、戦争を開始する!」

「私も参加する!」

これにより、宇宙中の国の中でも、最も新しい国である、新中立国家共同体が、宇宙中と戦うことになった。しかし、その中で味方をする種族もいた。それが、ベネトレートであった。

「私はあなたたちと一緒に戦わず、新中立国家共同体側につく。あなたたちとの同盟関係は現時点を持って全て破棄し、3惑星連邦と新たな同盟を結びたい」

「気でも狂ったか!彼らは我々を侮辱したのだぞ!」

「私はいたって正気だ。ただ、あなたたちと今までつきあってきた50億年間はきっと忘れまい。これからは私たちも戦争をする事になる。恐らく彼らが帰ってくるまで…」

一同は、ばらばらとなって帰って行った。その時、縮空間から船がやってきた。我々の不穏な気配を察して、やってきてくれたのだ。アック族長率いる、巨大な艦隊が。その船の数は、1万隻ほどあるだろう。

「私は縮空間Lv.5のアックという種族だ。我々と同盟関係にある新中立国家共同体を救うために船を率いてやってきた。我々もともに戦う」

「ありがとうございます。すぐに3惑星の中へ入ってください。3日後には戦闘が開始される予定です」

「それほどまでに切迫しておったか…分かった速やかに入ろう」

味方がまた一つ増えた。


「通信が入りました。船長」

「分かった。今行こう」

返事をするとスタディンとクシャトルは着替えはじめた。そして着替え終わると、すぐさま戦闘指揮室へ入った。

「相手が着きました。今から交渉に入りたいので、来て下さい」

「分かった。今すぐ行こう」

そして、兄妹は、目的を果たすために船を離れた。驚くべき事が待っていても、彼らは知らなかった。


「交渉などしない!我々はお前たちの無条件降伏のみを待っていた!しかし、交渉などという時間稼ぎにはまったく興味がない!帰らせてもらう!」

「それは出来ません。カルーガンの代表者よ。この小惑星にはすでに電磁バリアがはってある。何者も外すまで相互に通行は許されない」

兄弟が入ったのと同時に、外からの通信が一切途絶えた理由がようやく分かった。

(我々の技術水準では、電磁バリアなど到底不可能だ。本当にこの宇宙航行種族などから学ぶ事はあまりにも多すぎる)

その時に、この会議室の扉をたたく音が聞こえた。

「どうぞ」

イラつきながら話すと、扉が開き、ヒトが出てきた。

「お茶をお持ちしました。いかがですか?気持ちが落ち着きますよ」

「あなたは?だれですか?」

スタディンがその女性に尋ねた。

「私は、アファール号に搭乗していた、イフニ・ステ−ニュです」

兄妹は顔を合わせた。

「もしかして、イフニ・スタディンとイフニ・クシャトルと言う名前に覚えはありますか?」

「ええ、私が30年前に親しかった友人の息子さんと娘さんです。しかし、今はどこにいるか…」

「私たちがその二人です。スタディンとクシャトルです」

そこで横から邪魔が入った。

「すいませ〜ん、感動の再開中失礼ですが、こちらはかなりやばい事になっていますよ」

近くにたっていたカルーガンが言った。

「二人ともイラつきはじめて今にも戦争を始めそうな感じだし、今でも戦争状態だけど」

確かにかなりやばかった。周りには紙が散乱し、二人とも、すでに掴みかかりそうな状態であった。

「二人とも落ち着いて座ってください。あなたたちは戦争を激化するためにここへ来たのですか?戦争を終わらせるためにここへ来たのですか?どっちですか?」

一同は静かになった。

「我々は、話し合うために来た!それ以外の目的はない!」

「だったら何故争うとするのですか?争うことに何か意味があるのですか?」

「それは…本能的な働きだ」

「ならばその本能は捨てなさい。それがあるからこそ種の存続さえ危ぶまれるような状況になるのです。ここで仲良くなる事が出来れば、自然と争いの本能も消えていくでしょう」

「…終戦しよう」

カルーガン側から言った。

「そうです。終戦しましょう」

スタディンが奨めると、カンルーガはうなずいた。こうして、戦争は終結した。そしてこの縮空間に久し振りに平和が訪れた。新たなる旅立ちとなる、この宇宙国家の名前は、単にカンルーガンと言う事になった。

「私たちと同盟を結びたい、そういうことですね」

カンルーガンの新大統領には、今の所、二人いた。そして、彼らから言われた。

「そうです。あなたたちは我々が戦争を終わらせるために力を貸してくれた。次は私たちがその力になる番です。同盟を承諾してくれますよね」

「いいですよ。私たちの目的のひとつはそれなのですし、ただ…」

「どうしましたか?何か問題が?」

「ここにいる、イフニ・ステーニュと言う女性を、つれていてもいいでしょうか」

「別にかまわないが…彼女がどうした?」

「彼女はどうやってここに来たのでしょうか。何か分かりませんか?」

「彼女はここに、来た理由はよく分かりませんが、宇宙を浮遊していたところを保護されたときいています。しかし、それ以上は…」

「ありがとうございます」

「それと、これをもって行きなさい」

「これは何ですか?」

「我々と話すために必要な機械だ。これをもっていれば空間自体に穴があけれる。それを通して我々と話が出来る」

「本当にありがとうございます」

「我々はこれから三惑星連邦に行こうと思う。君はどうする?我々と一緒に行くか?」

「そうですね、帰りましょう。あちらの時間が何年たっているか分かりませんが、行方不明になっていたら、嫌ですからね」

「だとすれば我々は、すでに出発できる。君たちも出発の体制を整えときたまえ。準備が出来次第、君たちと一緒に行こう」

「分かりました。では、準備が出来次第、そちらに連絡をします」

「待っているぞ」

二人はそれぞれの場所へ帰って行った。

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