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戦闘シーン練習シリーズ

警察官一人VS強盗団四人

作者: しゅうか
掲載日:2017/01/07

 悲鳴と怒声が響き渡ったのは、レイジが銀行のトイレで手を洗っている時だった。

 金を出せだの、全員動くなだの、携帯を出せだの、そんな感じの言葉が聞こえてくる。

 レイジは周囲を警戒しながら、蛇口を閉じ、濡れた手をペーパータオルで拭いた。

 それから、壁に背をつけて様子を伺う。

 見回りらしき足音が近づくのを感じて、レイジは息を潜めた。

 意識を集中させる。すると、鏡に映っていたレイジの姿が消えた。

 姿を完全に消す。それが、レイジの持つ能力だった。

 さすがに音や気配、存在そのものまでは消せないが、それでも強盗から隠れるには十分だった。

 トイレのドアを開け、二人の覆面男が入ってくる。

 彼らが握った自動式拳銃が、トイレ内にくまなく向けられた。

 レイジの目の前を強盗が通り過ぎていく。

 その時、強盗の腕がレイジの腹をかすった。

 レイジの額を汗が伝う。触れれば当然気づかれる。

 強盗がレイジの方を向いた。

 息を止め、目だけを動かしてレイジはその様子を伺った。

 ――いざとなったら、二人とも倒すしかないか?

 危険ではあるが、気づかれたのならそうするしかない。

 そう考え、すぐにでも動けるよう神経を集中させる。

 強盗とレイジは、数秒間視線をかわした。

 ふいに、強盗が視線を外し前を向いた。

 壁に当たったとでも思ってくれたのか、もう一人の強盗と探索作業へと戻った。

 強盗達は万一の時に備えて互いに背中を合わせ、トイレを探索していく。

 個室と用具箱の中を調べ、無人であることを認めると、そそくさとその場を後にした。

 強盗の足音が遠のいていく。

 大分音が小さくなったのを確認して、レイジは短く息を吐いた。

 その時、ダウンのポケットが振動した。

 慌ててポケットの中の携帯電話を取り出し、魔の悪い発信者の名前を確認した。

 それは自分の友人で、今日会う約束をしている人間だった。

 待ち合わせ時間を過ぎたので、電話をしてきたのだろう。

 ――最悪だな。

 バイブだけとはいえ、強盗達との距離はそこまで遠くない。

 案の定強盗達が戻ってくる気配がして、レイジは内心悪態を吐いた。

 ややあって、ドアが開けられた。

 強盗達は再び背中合わせになりながら、先程と同様トイレ内をくまなく探す。

 レイジの前を通り過ぎ、先程と同じように個室と用具箱を調べていく。

 そして、一番奥にある最後の個室で、震える携帯電話を見つけた。

 強盗二人が顔を見合わせる。

 互いに、先程までなかった物の出現を訝しんでいた。

 不用心な事に、誰も居ないという認識をしている為か二人ともレイジに背中を見せていた。

 足音一つ立てず、レイジは二人の背後に忍び寄る。

 そして、音を立てることも厭わず腕を伸ばし、強盗達の頭を掴みその二つをぶつけた。

 互いに頭突きをさせられた強盗の体から、力が抜けていく。

 強盗達が気絶したのを確認すると、レイジは二人の体を床にそっと倒した。

 携帯電話を拾い上げ、バイブを止めてマナーモードにする。

 それから、強盗の体をあさり二丁の拳銃を回収。

 どちらも弾倉と薬室にあった一発を取り出して、ダウンのポケットに突っ込んだ。

 それから、用具箱からホースを取り出し、強盗を背中合わせに座らせた。

 そして、二人の胴体をホースで縛った。

 ――後は、残りをどうにかしないと。

 人質がいる以上、見張りが残っているのは間違いなかった。

 レイジはトイレのドアを少し開け、近くに人がいないのを確認する。

 物音ひとつ立てずにトイレを出ると、壁を背にして受付に向かって歩き始めた。

 人のいない廊下を通り過ぎると、L字型のカウンターへと突き当たった。

 その一番端に立って、様子を伺う。

 カウンターの反対側の端、対角線上の位置に強盗が一人座っていた。

 その傍にもう一人、強盗が立っている。

 カウンターの中も覗いたが他に強盗の姿はない。

 強盗達は、銃口を下に向けていた。

 人質はカウンターで死角となる床に座って固まっているのだろう、とレイジは判断した。

 ――待ってろよ。

 レイジは人質たちに向かって心の中でそう呟くと、携帯電話を操作して足元に置いた。

 頭の中で数を数えながら慎重に歩き、受付付近の柱を背にして立つ。

 その位置からだと、人質の姿もはっきりと見えた。

 怯える銀行員、泣く子供、それを宥める親、頭を抱えて時が過ぎるのを待つサラリーマン――そうした人質達が十五人居た。

 その姿を見て、レイジは唇を噛んで強盗達へのいら立ちを募らせた。

 しかし、レイジは動かずただ数字を数え続ける。

 その数字が六十になると同時、甲高い音が周囲に響き渡った。

 レイジ以外の全員が、驚いた様子で顔を上げた。

 カウンターに座る強盗が、見て来い、と目顔で立っている強盗に伝える。

 立っていた強盗は銃口を前に向けながら、慎重に音の発信源に向かった。

 レイジはその強盗とすれ違うようにして、カウンターに座る強盗へと近づいた。

 腕を伸ばせば届く距離まで詰めて、携帯電話に近づく強盗の様子を伺う。

 その強盗が、タイマーが作動しているレイジの携帯電話を拾い上げるまで待った。

「携帯電話?」

 怪訝そうな強盗の声が聞こえると同時、レイジは座っている強盗の腕を掴み銃口を天井へと向けた。

 強盗の指が引き金に引っ掛かり、銃声が一発響き渡る。

 暴発した弾丸は天井に小さな穴を開けながら、誰も傷つけることなく二階へと貫通していった。

 人質達の悲鳴を聞きながら、レイジは強盗の腕を捻りつつ床へと引きずり下ろした。

 鈍い音を立てながら、強盗は床に頭を強く打ちつける。

 強盗の腕から完全に力が抜けたのを確認し、レイジはその腕から拳銃を回収した。

 その拳銃を手に、カウンターから少しだけ顔を覗かせる。

 そして、携帯電話を拾った強盗の銃口が、レイジに向けているのを観た。

「伏せろ!」

 レイジは人質達に向かって叫びながら、床に伏せた。

 銃声が一発響く。弾丸はレイジの頭上を通り過ぎ、人質の一人の足元へと着弾した。

 ――くそっ!

 心の中で悪態を吐く。

 同時に強盗から奪った拳銃の安全装置を外しながら、カウンターを飛び越えた。

 お金を入れるトレイが、大きな音を立てて落ちる。

 強盗は、レイジに向けて再び撃った。

 慌ててしゃがんだレイジの腕を弾丸がかすっていく。

 レイジは立ち上がると、強盗の肩目掛けて発砲した。

 強盗は引き金が引かれると同時にしゃがみ、カウンターの影に隠れた。

 弾丸は、空を切って壁に穴を空ける。

 レイジは軽く舌打ちをして、銀行員の机にあったペン入れやファイル等を拾い上げ明後日の方向へと投げた。

 そうして自分の位置を欺瞞しながら、最短距離で対角線上の強盗に向かって音もなく走る。

 しかし、強盗はカウンターから顔を覗かせ、レイジに向けて正確に三発撃った。

 一発は顔をかすり、二発目は首をかすり、三発目は脇腹を貫通していった。

「ッ!!」

 声を抑え、痛みを堪えながら、レイジは強盗との距離を詰める。

 レイジは、牽制の為二発発砲した。

 頭を引っ込めた強盗の頭上を通り過ぎ、壁の穴を増やした。

 ――さっきから、まるで見えてるみたいな動きをしやがる。なら!

 レイジはダウンのポケットから、弾が一発も入っていない拳銃を一丁取り出した。

 強盗が再び顔を覗かせて、レイジに銃口を向ける。

 レイジは姿が見えるようにすると、強盗に向かって空の拳銃を投げた。

 強盗が慌てて頭を下げた。

 レイジは、弾が入った拳銃を前方に向けながら走る。

 そして、空の拳銃が床に落ちると同時に、カウンターを飛び越え強盗の背後に回り込んだ。

 強盗と背中合わせでしゃがんだレイジは、振り向きながら銃口を強盗の頭に向ける。

 しかし、強盗も銃口をレイジの頭に向けていた。

「あんた何者だ」

「ただの警察官だよ。折角の休みをお前達に台無しにされた、な」

「へー。若いのにやるなぁ。だが、これで終わりだ」

 強盗が引き金に手をかける。

「――ああ、そうだな!」

 答えながらレイジは銃から手を放した。

 それに驚いた強盗が、覆面越しに大きく目を見開く。

 その隙をついて、レイジは強盗の手首を捻って拳銃を奪いながら、強盗に頭突きをした。

 強盗は上体を大きく後ろにそらせ、カウンターに頭をぶつける。

 頭をぶつけた時の鈍い音と、レイジの拳銃が落ちる甲高い音が同時に響いた。

「お前の負けだ」

 打った頭を抑える強盗へと、レイジは銃口を向けた。


「まったく、非番だってのに災難だったねぇ」

 魔の悪い着信をしてきた友人が、病室にあるイスに座りながら朗らかに笑った。

 手術を終えたばかりのレイジは、ベッドに横になりながらすぐ傍にいる友人に向かって大きなため息を吐いた。

「本当にな。だが、幸いにして強盗は未遂に終わった。

 しかし、まさか姿を消しても見えるとはな」

「いや、見えてはなかったみたいだよ。

 彼には聴覚を発達させる能力があったみたいでね。

 その気になれば、心音まで聞こえるらしい。

 だから、君の位置や動きがわかったんだ」

「……なるほどな」

 そんな相手に脇腹を負傷しただけで済んだのは、運が良かったのだろう。

 ――だが、もし運が悪かったら?

 思わず自分が穴だらけになる姿を想像してしまい、レイジの背中に冷たいものが走った。

 冗談じゃない、と首を横に振る。

「ところでさ、約束してた映画どうする? 上映今日までなんだけど」

「行けるわけないだろ!」

 レイジは手直にあったティシュ箱を友人に投げつけた。

何度目かの戦闘シーン習作。

kakenai.net(http://kakenai.net/)投稿作品で、『シチュエーションと設定とキャラを投下して掌編を書くスレ』のお題に答えたもの。

お題内容は、


キャラクター

名前はレイジ。(変更可)

警察官。正義感が強く真っ直ぐな青年。

生真面目、愚直。大体そんな感じの印象。

戦闘能力は高いが、頭はそんなによろしくない。

シチュエーション

暴動か銀行強盗に巻き込まれて、一人で解決に導く。

(単独で片付けるか、警察を呼ぶなどして解決に導く)

舞台設定

現代でもファンタジーでもSFでも。


でした。

ちょっとだけ、戦闘シーンに慣れてきた気もしますがどうでしょうか?

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