表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/131

第七話 折れる

バシャーンッ!

と大きな水しぶきが立ち上がった。

そして、自らの意思とは関係無しに水の流れによって流される。


「ぷはぁっ」

「…ふぅ……」


魔物がいないのは幸いだったな。

それに、向こう岸に渡りたかったし丁度いい。


「あっ…」

「おせぇよ。ノロマ」


何が好きで引かなきゃなんねぇんだよ…

…おっ?

泳ぎも素早さ依存か?

つってもやっぱ、地上ほどは速くなれねぇか。


「ご、ごめんなさい…」

「謝るくらいなら態度で表してほしいんだが」


見たところ泳いでねぇだろ。

お前。


「…ごめん…なさい…」


俺はこの女を連れて反対側の岸へと渡った。

よしよし、俺は川から上がり、服を脱ぐ。

うぇ…

水を吸い込み過ぎだな…


「あの…!め、め…いえ…ありがとうございました!」

「借りを返しただけだ。」


そいつは頭を垂れて俺にお礼を言ってくる。

…早く去りたい思いと、とどまりたい思い。

ここでも頭がくらくらする…


「……あの…」

「…あ?」

「えっと…」


口ごもっているな…

なーんかイライラすんぞ…


「なんだ?」

「やっぱり…私も…連れていって……くれません…か…」

「…」


コイツはなんでこうも…

そもそも目的はなんなんだ?

俺とつるんでのメリットは?


「…分かってます…私は信用されてないのは…でも!私は…貴方が信頼出来るんです…」

「はーん…」


白々しい…

絶対嘘ついてるだろ…


「……だから…私のすべてを……その…あげます…」

「は?」

「私のすべてを…」

「まてまてまてまて…話が飛躍し過ぎてる。」

「うっ…こう言えば大抵の男の人は了承するって言ってたのに…」

「誰がッ!?」


おい!

コイツの教育どうなってんだよ!?

つか18でこれは不味いな…

ホステスとかになるんじゃねぇの?


「…連れてって…くれませんか…」

「………はぁ……………」


このまま置いていく事は簡単だ。

コイツの足は今は上手く動かないようだしな。

辛うじて立てているっていったとこか。

…ただ置いていったら前のような状態に陥るな…

俺が。

ったく…

なき脅しはずりぃ…

ズルすぎる。


「………」

「あの…」

「…」

「信頼…してくれてたんですね…私のこと…」

「…今はしてねぇぞ……」

「分かってます…私が、いけないんですもん…」


律儀というか真面目というか…


「…はぁ…」


俺は…

結局、折れた。

パーティに勧誘する。


「め、メイさん…!」

「勘違いすんなよ…!俺はお前を信用してない。それに、俺のことは他言無用だ。分かったか?」

「は、はい!」

「そして、もし裏切ったら……どんな手を使ってでも殺すからな…!」


分かってる…

年頃の女に言う言葉でないことぐらい。

だが、このステータスを言いふらされると非常に動きにくくなる確率が高いからだ。

だから、裏切ったら…

かなり心苦しいが、命を刈り取る。


「…分かっては…いましたけど…やっぱり、そう言われると…苦しいですね…」

「苦しいのはお前だけと思うなよ。」

「…!ありがとう…ございます…!」

「なっ…今のは…あーいいや…めんどくせぇ…」


俺はその場に座る。

女の足はもう限界らしく、ふらっと倒れこんでしまった。


「…はぁ」

「ご、ごめんなさい!い、行きましょうか!す…すぐ追いつきますよ。」

「んなワケねーだろ。素早さの違いありすぎるんだから。」


コイツは天然か?

ボケてんのか?


「…あー…腹減ったな…」

「あ、私釣って…痛ッ…」

「動けねぇのに無理すんな。悪化して足を壊したらどうすんだよ。」

「でも…」

「あーあー。お前は調理担当だ。いいな?」

「は…はい…」

「それと……あった…埃っぽいが一応羽織っとけ。」

「…へ?」


俺はベッドのシーツを投げ渡した。


「ローブやらを脱いでな。俺は魚を取ってくる。」

「メイ…さん…」


うっせぇな…

これ以上出発延期になると困るだけだ。

で、あの女を置いて魚を捕まえにいった。

俺の服はあの女の所に置いたままだ。

つまりパンツ一丁。

まぁいいけどよ…泳ぎやすいし。


「うっし…出来れば4匹くらいほしいな」


等と言いつつ、俺は川の中へと潜る。



(へぇ…視界はクリアなんだな…これなら魚も捕まえやすい…)


水をかき、俺は前進。

そして魚の後ろにつく。

良かった…

魚は魔物とは違って…


魚はビックリして、泳いでいってしまう。


(流石に素早さが高いと言っても、相手のホームグラウンドじゃ、勝てねぇか。)


だが惜しいのだ。

同じ速さで泳げてはいるが、泳ぎ方の問題だろうか。

途中で俺が遅くなってしまったりして追い付けん。


「ぷはぁ…」


結構長い間潜水出来たなぁ…

それは良いとしてだ…

どうすれば…

これはあれだな。

ステータスあげあげタイムだな。


俺は称号に意識を集中する。


もしかして魚?を獲得!

素早さ+5

水中時素早さ上昇


はや泳ぎの異世界人を獲得!

素早さ+10


信頼される者を獲得!

魔法防御力+5


ツンツンを獲得!

素早さ+5


「なっ…!?ステータスがいじめにかかって来やがった…!」


ステータスの上がりはいいが…

喜べないのは何故だ。


メイ モトシマ

レベル1

最大HP125

最大MP105

攻撃力20

防御力18

魔法攻撃力11

魔法防御力15

素早さ125



メイ モトシマ

レベル1

最大HP125

最大MP105

攻撃力20

防御力18

魔法攻撃力11

魔法防御力20

素早さ145



…足が速くなった…

ものっそい…

しかも水中での素早さが上がるだと。

もしかして魚?じゃねぇよ。

魚にさせてんだろ。


「ま、上がった分にゃあ文句ねぇけど。」


俺はまた、潜水をする。

おお…さっきよりもかなり速い。

てか、もう1匹捕まえたぞ。

よし、これで飢え死には…

いや、アイツの分も取らないとな…

死なれても困るからな。

それに、やはり知ってるやつの死に顔を拝むのは嫌だ。


順調に魚を集めていき、空き袋に入れていく。

よしよし…

もう6匹だ。

もっと…っと、いきたいとこだが残したら残したで後処理が大変だから止めておく。


「ふぅ…」


あー!

なんか地上にいるときの足が軽い。



「あっ…メイさん」

「…おう。んで調子は?大丈夫か?」

「………っへ?」

「ん…?」

「メイさん……優しいんですね。」

「なっ…!ちげえよ!」


相手の怪我を気遣う良心はまだあるわっ!


「お陰様で。でも…歩くのがちょっと…」

「だろうな。んで飯、作れそうか?」

「薪があればなんとか…」


俺は魚の入った袋と袋の中に入っていた女性物の服を渡した。


「お魚は分かりますが…これは…?」

「着替えとでも思っとけ。」

「…趣味には触れないでおきますから」

「まてこら。ちげえって。」

「ふふ、冗談ですよ。ありがとうございます。」

「…」


やっぱ…変なやつ…

会話の後に俺は薪を取りに行く。

あー…

ライターとかあれば便利なんだろうな。

火をつけるのに。


「おお…落ちてる落ちてる…ゲームみたいだな」


1本1本ってのが変だが俺は袋の中に詰めていく。

この袋ってどんだけ詰めれるんだろうなぁ…


「ああ…腹…減った…」


くそっ…

あともう少しの辛抱だ…

俺は落ちている薪を全てかき集め、女のいる場所に戻った。



「集めてきたぞ。」

「くしゅっ…ありがとうございます…」


ずずっと鼻をすすってる。

まぁ、今ローブがない分寒いのだろう。

ここらへんは風が心地いいし、暑くもなく寒くもないが、水に濡れたら当然の結果か…


「ここにまとめて置けばいいのか?」

「は…はい!」


指示に従い、俺は袋から薪を数本だけ置く。


「…で火はどうす…」

「炎よ…焼け…」

「…お、おう…」


どうした…

と、いう前に叫ばれた。


「フレイムボールッ!」


なっ…

女から炎の玉が飛び出し、そして。

薪を撒き散らした。

薪だけに。


「あっつ!?あつつ!?」


飛んできた薪が顔にクリーンヒットする。

運のよさマイナスにでもなってんのか!?


「ご!ごめんなさい!ごめんなさい!!お願いだから私を見捨てないで…」

「わーった!わーったよ!」


取りあえず、火をつける事には成功したようだ。


「…ぁー…熱かった…」


ついでに言っておこう。

HPが121/125に減っていた事を。


「本当に…ごめんなさい…見捨てないで…」

「はいはいはい…で?いつになったら焼けるんだ?」


目の前で焼かれている魚を見てそう言う。


「もう少しですよ。思えば、昨日から何も食べてませんね。」

「俺はな……ん?」

「私も…です。」

「嘘こけ。あれ食ったろ?」


肉まんもどきの事だ。

俺はあれをふっつうに捨てたからな。


「…いえ、あげちゃいました。」

「馬鹿だな…」

「えへへ…メイさんと同じですね。」


笑いながら言ってきやがる。

…はぁ。

分かってる。

頭じゃもう…コイツはお人好し過ぎる。

ステータスを見たのも悪気があるわけじゃないのも。

そして、本当に信頼してるのも。

頭では分かってるつもりだが、警戒は解かない。


「まだか…?」

「あ、そこのは大丈夫だと思います。」

「……ほれ。」

「え?」


俺は女が指を指した魚を渡す。


「先食えよ。俺は後でも大丈…」


と、言ってたのに腹の虫が鳴る。


「…カッコつかねぇな……」

「ふふふ…あはははッ!」

「…はぁ…」


まぁ…いいか…

俺の顔はしかめっ面から、少し柔らかい顔へと変化していた。


「はぁーあ!あっ……ごめんなさ……ふふ…」

「なんだよ?」

「いえ…なんでもないですよ。」

「…つか早く取れよ。」

「…ありがとう…」


女は…

ティナはそう言って焼き魚を受け取った。


「…やっぱり、お腹が空いてるとなんでも美味しく感じますね。」

「ああ…そうだな」


食事をしながら談笑する。

…そういや、親と最後に食卓を囲んだのはいつだったか…

そう思うと新鮮だな。


「…メイさん。これからも…よろしくお願いします。」

「…裏切んなよ」


俺は突き放すような口調で言った。

誤字の修正を致しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ