表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/131

第六話 嫌なんだよ

くそっ…

前のことなんか思い出したくもねぇよッ!

俺は今、草原にいる。

しかも夜のだ。

あんな鉱山の街にはもういられない。

それに、あの女と鉢合わせはごめんだ。


「…クソッ…腹は減るんだな…面倒くせぇッ!」


イライラする。


「生きるのになんで飯がいるんだよ…意味わかんねぇ…!」


くそ…!

何か食えるもんねぇのか?




『…メイ、メイは…命を大切にしなきゃいけないよ?』

『そうだぞ?メイ。特に、自分の命と……』


「…わかってんだよ…クソババァ…クソジジィ…!」


俺は悪態をつきながら月夜の下の草原を歩いている。

…すると


「グォォォッ!」

「…なんだ…アイツ…」


サイスドラゴ


絵に描いたようなティラノサウルスのような容姿で、手は鎌になっている。


「……試してみるか」


憂さ晴らしになるだろう…

やってやんよ…!


「よっと…」


瞬間的に俺はサイスドラゴの後ろへとまわる。

っへ…滑稽だな?

アイツは俺を見れてねぇぜ?


「こっちだぜ!馬鹿が!!」


拳を振るう…

が、あまり効いてねぇようだ。


「…っち…基本的に攻撃力が足らねぇか」


俺はバックステップで後ろへと下がる。

…ん…?

跳躍力はどうやら素早さ関連か。


「いい情報だな…さて!」


俺は相手を翻弄しつつ、攻める。

俺の動きについてこれねぇようで、キョロキョロとしてる。


「おらおらおら!」


連撃を叩き込む。

どんな相手でも、長時間やれば倒せんだよッ!


「っち!状況が悪化しやがって…!」


気づけばサイスドラゴが数匹、俺の周りに群がってやがる。


「…くそったれがッ!!」


俺はやむ無く逃げ出した。

くそ…

一対一に横槍を…いれやがって!



…俺の労力は無駄になった。

折角、倒せるチャンスを…!


………


称号…か…

増えてるだろ。

流石に。



友人を獲得!

HP+5


運び屋を獲得!

素早さ+10


信頼する者を獲得!

HP+5


裏切られた者を獲得!

攻撃力+5


一匹狼を獲得!

HP+5

素早さ+5


理不尽に耐え抜く者を獲得!

防御力+5


拳で戦う者を獲得!

素手時与ダメージ5%アップ


…多いな。

仕方ないか。

色々あったもんな。


メイ モトシマ

レベル1

最大HP110

最大MP105

攻撃力15

防御力13

魔法攻撃力11

魔法防御力15

素早さ110




メイ モトシマ

レベル1

最大HP125

最大MP105

攻撃力20

防御力18

魔法攻撃力11

魔法防御力15

素早さ125



やっぱりあんま上がらねぇ…

…思えば他の奴等は称号に加え、レベルも上げる事ができんだよな。

俺TUEEEEとかする奴等が羨ましいな…


「…腹…減ったな」


なんで…

異世界でこんな目にあわなきゃならねぇんだ…

こんなことならあの肉まんみたいなのを食っておくべきだっ……


「誰が信用するかよッ!くそ!」


腹も減ってあの女のことを思い出して、最悪な気分になる。


「先いくぞ…この野郎…!」


イライラしながら、進んでいった。

夜だがまぁ、大丈夫だろう。



「………!」

「…んぁ?」

「……~♪」

「なん…だ…?」


歩いていると、綺麗な歌声が聞こえ、眠気が襲ってくる。


「なっ…んだっ……って…!言うんだよォッ!」


俺は歌が聴こえる方向に向かってダッシュ。

諸悪の根源に鉄拳をいれる。

…と。


「…!?」


どうやら、女形の魔物…か。

歌で相手を眠らせて殺すのだろう。

幸い、俺の拳で慌てて逃げていったし、大丈夫だろう。


「…ぁ…あ?なん…だっ…て……」


しまった…

まぶたが…


重い……


「寝たら…死ぬぞ…俺…!クソッ!」


バシンッと、頬を叩くが、眠気は一向に覚ませない。


「木…だ…よし…」


持ち前のジャンプ力で、近くの木の枝に乗った。

意外と丈夫…なんだな…


「クソッ…たれ……」


もう…げん……かい…………





「…んぅ…」


体が重い…

…下は…芝生…か…

チクチクする…

木に寄りかかりながら、眠っている人物がいた。

銀髪の長い髪…

セレスティナ・エルローゼ…か。

…ん?


「なんでコイツがこんな所に!?」


…そもそも、なんでコイツはこんなボロボロなんだ?

口からは血を流してるし、体も痣とかが酷い。


「…おい…おい。起きろ。おい。」

「…ん……ケホッ……うぅ…?」


重そうなまぶたを徐々に開けていった。

しっかし本当にボロボロだな。


「…なんでここに─────」

「メイさんッ!」

「なっ…!?」


いきなり、抱きつかれる。

なんでだ!?


「は、離せッ!」

「私…わたじ……わだじ…ごめんなざい…ごべんなざい…」

「は、はぁ!?」


意味不明。

何がおきてんだ!?


「わだじ…ほんどうに…ごめんなざい…」

「だから何が…」

「ぅぅぅ…!」

「だれか状況を説明してくれッ!!」


女は俺に泣きついてきている。

何が何やら…

つうか、コイツとは縁を切ったハズ…

なんでこんなとこにいるんだし。



「………終わった…が…」

「すぅ………すぅ………」

「冗談だろ…?」


コイツは常識っつうのがねぇのか…

普通、こんな所にいたら、魔物に襲われたりするだろう。


「起きろ。」


バシバシと叩き、強引にこの女を起こす。


「…ふぇ…」

「ふぇ…じゃねぇ。邪魔だ。」

「……はい…」


残念そうな顔をしてるが、どうだっていい。

コイツとは関わりたくない。


「メイさん…」

「気安く呼ぶな。てめぇとは縁を切ってんだよ。」

「…でも…私は…!」

「縁を切った。言わなかったか?」


俺の言葉を前にしても女は引き下がらねぇ。

強情なヤツだ…!


「…なんて言われても、ついていきます…!」

「来んなよッ!鬱陶しいんだよッ!目障りなんだよッ!」


コイツ…!

どの口が言いやがる…!


「早く、どっか行けよッ!」

「それでも!」

「いいからどっか行けよッ!」

「ついていきますッ!!」

「…っちぃッ!」


なんで…来んだよ…

なんで…そんな鬱陶しいんだよ…!


「嫌なんだよ…!なに言われても気にしねぇが…少しでも信頼したヤツに…裏切られんのは…嫌なんだよッ!!」

「め、メイ…さん…」

「っ…!?くそ……クソッ!」


俺は女から逃げる。

なんでそんなことを言ったか。

単純だ。

行き場を無くしたから。

本音が押さえきれなかった。

こういうときに足が速いというのは役立つ。

あの女は追い付けない。

俺は走り続ける。



「はぁ…はぁ…はぁ…!」



『…信用してた…のに…』


「くそ…クソッ…クソォ…!」


俺は無我夢中で走る。

どこを走っているかさえ分からない。


「はぁ……!はぁ!はぁ!」


…ここまで…

来れば…

追い付かれる事は無いだろう。


「……はぁ……はぁ………」


息を落ち着かせろ…

そうだ…

そうだ…

その調子。


「ふぅっ…」


…少し…休憩しよう…

俺は楽な姿勢ですわる。


「…なんで…アイツ…いや、どうでもいい」


頭になんで浮かんでくるんだ…

俺にはもう関係無いことだろ…


「くそ……」


切り替えのはやい俺にとっては珍しく気分が優れない。

疲れてるんだな…

だから全てにイライラしてるんだろう。

…寝たい…

眠りたい…

こんなときに仲間がいたら…


またアイツの顔が浮かんできやがる…

アイツは信用出来ん!

そりゃあ…確かに…

美少女…って感じだし…


「うっぜぇ!クソッ!なんなんだよ!」


いくら考えを無くしたいところでいつのまにか考えてしまう。


「はぁ…情けねぇ…」


………

……


「…次だ…もし、本当に次、来やがったら…話は…聞こう…」


なんでこんなに…

気にかかりやがる…

なんでこんなに…

胸が痛む…

なんでこんなに…

信じたがる…!

なんでこんなに…

期待…してんだ…


「………なんだってんだ…おい…」


自分に問い掛ける…


「来てもどうせ…」


どうせ…!

どうせ…

どうせ…?


「…なんなんだ…おい」


自分の考えが分からなくなる。

あの女は、俺を助けてくれた。

何度も。

あの時だって助けようとしてくれてた…

いや…!


「俺のステータスを見やがって言いふらしやがったんだな…!」


考えがまた変わる。

俺のような偏ったステータスを言いふらし、大勢で捕まえに来るのだろう。

そして、その尖兵としてあの女が来やがる。

それで合点がいく!


「やっぱ信じられねぇ。やめだやめだ!」


俺は立ち上がる。

こんなとこで座ってるとまた追いかけてきやがる。

こんな所で…捕まってたまるかよ…!


「俺は…自由にこの世界を見てやる…!自由に…だ!」


捕まれば最悪死ぬ。

そして、捕まれば最低でも幽閉される。

そんなのごめんだ。

俺はまた歩く。

ポツポツと魔物が歩いているのが見えるが、こちらに気づきはしない。

そもそもだ。

ここの敵のレベルは高すぎる。

頭がおかしいんじゃないかってほどな。


「…アイツは大丈夫…じゃないよな…」


口から血を流していた。

痣だらけになってた。

…いやいや…いやいやいや!


「なんだってんだよォッ!」


俺が分からない。

俺の頭は何を…


くそっ…


「やめだやめだやめだ!走れば…走れば何も考えねぇ!」


俺は全力で走った。

何もかもを忘れるくらいに。


「はぁはぁはぁはぁ!」


上手く、息が吸えない。

次第に苦しくなる。

更に、走ってる最中でさえ、あの女を考える始末。


「はぁ……はぁ……はぁはぁ…はぁ…」


不規則な息継ぎ。

そして、目の前に広がる川。

大地を川が横断している。


「先に…進むには…川に入るしかないか…いや。橋を捜すか…」


口でこれからすることを確認する。

頭の中で考えると絶対にアイツを考える。


「…川沿いに…進もう…」


俺は川沿いに進んでいった。

それでも、頭がいっぱいになっている。

なんで、自分から縁を切ったハズなのに。

なんで…

なんでアイツの…


「泣いてた…」


顔は…

涙を流していた。

目は…見えないほど細目になっていた。

まだ…泣いていた…


「なんで…」


俺は拳を握る。

分からない。

何が…

何も…

分からない…


「クソッ…」


俺の歩みは止まっていた。


「………」


無言で歩き出す。

考えないことが逆に出来なくなった。

どうしても、別れ際のあの顔を思い出してしまう。


「…信頼…ねぇ…」


裏切るって分かっている。

いつかは裏切られるって分かっている。

それでも、信じたいと思うのは何故なんだ…

アイツが、脳裏に焼きつくのはなんなんだ?


「…」


そのまま、黙る。

俺は歩き続けた。

…あることが起きるまでは…



「はぁ…!はぁ…!はぁ…!はぁ…!」


魔物の群れが、川沿いに集まってる。

それにその中から、息切れを起こしたような声…


「……こんなにあがきましたよ…私……もう…死ぬ準備は…出来ました……」


…凄い聞き覚えがある声だな…おい。


「…はぁ……」


何してんだと言いたい。

こんなに魔物を連れて、どこいくつもりだったんだ…


「…きゃぁッ!」



「仕方ない…」


俺は跳躍。

そして、魔物どもを踏みつけつつ、背水の陣になってるやつの近くに着地した。


「…死ぬ準備って、なんか必要だったのか?」

「……め、メイ…さん……」

「……変な面してんな。気色悪い…」

「…い、意地悪です…」


セレスティナ・エルローゼがいた。

ソイツと会話をしてると、魔物どもが近づいてきやがる。


「…借りを返してやる…掴まれ。」

「っへ?」


俺は手を差し出した。


「早くしろッ!」

「は、はいッ!」


そう言って、俺の手を掴む。


「よし…」

「ひゃっ!?」


俺はこの女をお姫様だっこする。


「この方が走りやすいな。」

「は、走る…?」


助走はあまり出来ないがこれなら届くハズ…


「よっと…」

「ひゃぁぁあああ!?」


川に向かって跳躍した。

そして…気づく。


「あ"」

「あああああッ!」

「…着水用意……」

「えっ!?…きゃぁああああッ!!」


只今落下中。

分かった。

こういう時の俺は大抵失敗することが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ