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第二話 え、なんだって?

続きます。

「ふへへへ、大量大量!」


 泥棒ごっこを終えた僕らは、今一度収穫品を庭に並べてみていた。


 まずは食料。


 さすがはお金持ちというか、非常食がいっぱいあった。

 しかも賞味期限は10年20年と超長期なものばかり。

 あと水入りの500mmペットボトルもかなり保存されていた。


 たぶん、お手伝いさんは危機管理能力の高い人だったんだろう。

 ありがたく少しだけ貰っていくよ。


「服、ちょっと大きいかも」

「あらら?まぁ、ここの人たちはおデブちゃんだったからね」


 そうそう、衣類もかなり獲得できた。


 基本的に脱いだら捨てるを繰り返すため、服のストックが必要なのだ。

 洗濯、乾燥ができればいいんだけど、それができないから仕方ない。  

 さすがに毎日着替えることはないけどね。


「あとはまとめてリュックに入れとこうか」


 最後に電池やティッシュなどの消耗品、雑貨だ。

 まぁ服も消耗品と言えばそうなんだけどね。  

  

「よーし、あとはこれか」


 そう言いつつ、僕は小銃を手にした。


 正しくは89式小銃と呼ばれるこれは、自衛隊の正式装備となっている突撃銃だ。

 性能についてはいろいろ言われていたみたいだけど、僕的には使いやすいと思う。


 なんで持ってるいのかと聞かれると説明しにくいけど、ちょっとした出来事があって手にすることとなったんだ。別に強奪したわけじゃないよ。


 まぁ、いずれ話すと思う。


「ちゃんと弾倉全部あるよね」

「たぶん」


 たぶんって、不安だなぁ。

 と苦笑していると。


「や、全部ある」


 もう一度数え直したのか、レイはすぐに言い直した。

 えらいえらいと頭を撫でようとしたがよけられた。お姉さん悲しいよ。


「取り敢えず準備終了だね」

「ん」

「じゃあ、朝ごはんにしよっか」


 時計の長針は9時を回っており、朝ごはんにしては若干遅めの時間となってしまった。 

 

 ただ、余剰な食料が出てきてしまったため、多少たくさん食べても余裕があるだろう。だからってバカみたいに食べたら動けなくなるから少しは自重するけど。


「賞味期限の短いやつからね」

「わかってる」

    

 と言っても、大体賞味期限が数年とかだからね。どれ食べてもあんまり変わらない気がする。


「これからどうするの?」

「んー?」


 どうするもこうするも、歩くしかないよね?

 僕免許持ってないし。


「あっちに向かって歩くんじゃないのかな」

「あっちって、なにかあるの?」

「いや、しらない」


 そもそも方角すらあやふやだしね。

 あっちってどっち?西?


「・・・はぁ」


 そんな露骨にため息つかないでよ。傷つくなーもう。


「まぁいいじゃん。どうせ僕らしかいないんだし。自由に行こうよ」

「えー、適当すぎ」


 今気づいたの?

 今までずっと適当に歩いてきただけだけど。

 って言ったら怒られるかな・・・。


「僕的にはレイと一緒にいれればいいんだよ」

「・・・ふん」


 まぁ照れちゃって。レイちゃんったらかっわいぃ。お持ち帰りしたくなっちゃう。

 普通の時のレイちゃんもお持ち帰りしたくなるくらい可愛いけどね!! 


「歩、今日もまた顔キモくなってる」

「っは!?僕ったら何を当たり前のことを・・・」

「・・・何考えてたの?」


 レイは汚物を見るような目で僕のことを見てきた。あぁん、ゾクゾクしちゃうぅ!!


 冗談はさておき、そろそろレイも一息ついた頃かな。

 動いてすぐお腹痛くなった、とか洒落にならないからね。


「そろそろ動けそう?」

「だから何考えてたの?」


 答えなきゃダメだったの!?

 もー、しょうがないにゃあ・・・。


「レイのことが大好きです、って考えてたんだよ」

「・・・へ、へぇ・・・そうなの・・・」


 ・・・え、なに。

 まさかのガチ引き?照れ隠しとかじゃなくてガチ引きなの?


「じょ、冗談だよ!!さすがに百合の花は咲いてないよ!!」

「あ・・・うん・・・」


 あぁ!!これ絶対信用してないよ!!レイからの信用が崩壊しちゃったよ!!

 もともとないからとか言わないでよおぉ!!


「ひっく・・・じゃあ、そろそろ、行こうよ」

「あ、のさ?」


 若干遠慮がちにレイが僕の顔を覗き込んできた。


 ふん、いじけてやるもんね。

 もう抱きついたり頭なでたり愛でたりしないもんね。

 大体寝てる時にしかやったことないけど!


「なに・・・?」


 自分でも怖いくらい低い声が出た。

 レイにも僕の不機嫌オーラがビシビシ伝わっていることだろう。


「あ、ありがとう」

「え・・・」


 まさかのありがとう?どういう意図があるんだろう?

 よくわかんないけどなんか元気出た!!

 

 でもね、レイ。女の子を泣かせた罪は重いんだよ!!

 ちょっとだけ意地悪してやる!!


「・・・なんだって?」

「え!?」


 レイの顔が困惑気味にこわばった。

 この返しは予想していなかったのだろう。


「え、なんだって?」

「や、その・・・。ありがとう、って」


 レイは顔を少し背け、恥ずかしそうに呟いた。

 けど、僕の追撃は終わらない。


「え、なんだって?」

「や、だから・・・。もぅ、ありがとう!」


 ふへへへ。いい気味だぜ。

 それでも追撃は終わらない。


「え、なんだって?」

「うぅ、どうしたの歩?私のせいでおかしくなっちゃったの?」

「え、なんだって?」    


 いい加減イラっときたのか、レイはピクっと口角を上げた。


「もおぉー!!いい加減にしてよ!!私でも怒るよ!!」


 もう怒ってるじゃないですかぁ!

 あまりの気迫に「え、なんだって?」って言えなかったじゃん。


「ご、ごめんね」

「なに!?聞こえないよ!!」


 ぎゃ、逆襲された!?

 因果応報というか・・・僕が悪いのは百も承知だけど・・・。


「ごめん、ごめんなさい!!」

「やだ!!許さない!!」

「いやあぁぁ!!許してえぇ!!なんでもするからぁ!!」


 ・・・と、まぁ。

 騒がしい旅は今日も始まる。

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