第十八話 届かぬ決意
超短いです。
「つまり・・・お前は・・・」
「はい、死神となりました」
ここだけ聞いたらなんかのジョークみたいだ。
そんなことを思いながら、結論にぴったりの言葉を絞り出した。
「どうか、お姉ちゃんを悪く思わないでください」
言いつつ頭を下げる。
私のことはどう思われてもいい。
ただ、お姉ちゃんが貶され、罵倒されるのは許せない。
わがままだろうけど、それが私の本心だ。
「なんで、話してくれなかったんですか?」
「それは・・・」
「私たちが信用できなかったんですか?」
鏡花さんがお姉ちゃんに詰め寄る。
それを結城さんは止めようとしたが、すぐにそれをやめた。
私はすぐわかった。
鏡花さんはお姉ちゃんを責め立てたいわけではない。
むしろ逆だ。
「私は・・・私たちは、そんな事で責めたりしないよ?」
鏡花さんは優しくお姉ちゃんを抱いた。
「だから、私たちを頼って。絶対に逃げ出したりしないから・・・」
「・・・そうだぜ。まだ会って一日程度の他人かもだけどさ」
俺たちは絶対に裏切らない。
裏切らない・・・。
裏切らないかぁ・・・。
ふふっ、おもしろいね。
「ありがとう・・・二人とも」
そう答えたお姉ちゃんの目には、一粒の涙が浮かんでいた。
そうか、お姉ちゃんと二人は・・・。
・・・でも、それじゃあダメなんだよ。
ダメなんだ・・・。
「お姉ちゃん、良かったね」
気持ちとは裏腹の言葉が出てしまった。
本当はわかっている。
これがお姉ちゃんにとって幸せなことなんだと。
でも、私は・・・。
私はお姉ちゃんが好きだから・・・。
「じゃあ、今日はもう寝ようぜ」
もうじき今日が終わり、明日がくる。
明日は今日よりも良い日になればいいな。
明日は―――――――
「そうですね・・・。今日は、疲れました」
思いつつ、私は夜空を見上げた。
あの空から、神さまは私たちを見ている。
いや、見下ろしているんだ。
神さまは強大で、私たちが抗えるような存在じゃない。
それに、神さまは私たちが決して手の届かない空の彼方にいる。
そこで小さな小さな・・・虫けらのようなお姉ちゃんたちの反逆を楽しみにしているんだ。
新しいおもちゃを与えられた子供のような目をして。
でもこれは神さまの描く物語であり、お姉ちゃんたちは決して反れないレールを歩んでいるだけ。
私はそれを、どう見届ければいいの?
私も反逆に加担すればいいのかな。
でもそうしたら、誰が神さまを止められるの?
誰が、お姉ちゃんを救えるの?
私は、あくまで私の運命を貫く。
誰にも届かぬ決意を、私は心の中で固めた。




