第十三話 お約束 その2
続きます。
おそらくほかの客はいないだろうからどっちに入っても咎められる事はないだろうけど、一応女湯に入っておいた。
正直どうなってるのか興味があったんだけど・・・。
二人がこういうところでは意外にも常識人でびっくりした。
「さて、温泉だ」
「温泉ですね」
「温泉だね」
脱衣所で服を脱ぎ、僕たちはありのままの姿で大浴場の入口に立った。
さぁ、ここらでキャッキャウフフと楽しむのも僕的にアリだが、メンバーがメンバーだけにアレだ。
なんというか、やりたくない。
「なんですかねぇ。体の洗いあいなんかしますか?」
「普通に入って普通に出る、以上」
「さみしいですけど、このメンバーでそれはやりたくないです」
「さ、さみしいのか・・・」
困惑気味の結城さんをよそに僕はペタペタと歩き出した。
なにか起きたらすぐ逃げられるよう入口近くの場所を確保し、椅子にジャっとシャワーをかけた。
なんというか、変なところに潔癖なんだよね。
「じゃあ隣は私ね」
「え・・・」
嫌なんですが。
と言おうとしたが、鏡花さんの中では既に決定事項だったらしく、椅子にシャワーをかけ始めていた。
って、鏡花さんも椅子にシャワーかけるのか・・・。
今度からやめようかな・・・。
「それじゃあ俺はこっちかな」
そう言いつつ、結城さんも椅子にシャワーをかけてから着席した。
・・・これって皆やることなのかな?
じゃあ続けようっと。
「あーあ、私ってこういう所のシャンプーとリンスの混合物って嫌いなんですよね」
「混合物って言うんですか、これ?」
「さぁ?元からこう出来てるから違うんじゃないのか?」
そんなアホな会話をしつつ頭と体を洗った僕たちは遂に。
「温泉、入るか」
「そうですね」
「うん」
テンション低めに温泉へ向かい始めた。
まずどこに入るかを検討した結果、なんとなく露天風呂からという事に決まった。 まぁ無難な結果だと思う。
「おー、星が綺麗だ」
「結城さんでもそんな事言えるんですね」
「・・・俺をなんだと思っているんだ?」
結城さんがジト目で僕のことを見てきた。
やっぱりギャップ萌えってすごいね。
なんか結城さんが可愛いって思えてきた。
「でもすごいですねぇ」
鏡花さんの言葉を聞き僕も空を見上げてみた。
確かに綺麗だ。
綺麗だし、すごいとも思う。
ただ何故か、何故か無性に怒りを感じた。
「もー、何感慨深く見上げてるんですかぁ!」
そう叫んだと思った瞬間、鏡花さんは僕の背後に回り込み。
「っ!?」
胸を揉み始めたのだ。
「うわ、小さいですねぇ。歩ちゃんって本当に17歳なんで・・・」
頭にきました。
というわけで鏡花さんの鼻を骨を折るくらいの勢いで顔面に肘を入れておいた。
まったく、油断もスキもない人なんだから。
そのくせして自分の時は油断だらけのスキだらけなんだけどね。
「お、おい!鼻血出してるぞ!」
「え、あ・・・ホントだ・・・」
「引き上げろ、お湯が汚れる!」
やっぱり結城さんってひどいよね。
そんなことを思いながら、鏡花さんを引きずり上げるのを手伝った。




