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後編

後編です。正直、もうちょっとまとめたいですが、収まり切れないので後日また編集します

 まさか、扉を開けたら攻略キャラがいると思うか?


 しかも教室の扉の前で腕を組んで仁王立ちしてて…自分を見下ろしているなんて誰が思う?


 ウキウキしていた気分が一気に氷水をかけられたように、冷え込んだのは言うまでもない。



 「ラド…ヴィア君?」


「俺がここにいて悪いか。ココ・トルテア」


 心底驚いた私の顔にラッセルは憮然とした表情で私をにらみ据えている。


 なぜか苛立っているのか、掠れたような声音に私は肩が震えた。


「で、でも黒魔導士は…」


 攻撃特化の黒魔導士は召喚術を習得しなくても十分強い。むしろ、大量に魔力を消費する召喚術は同じく大量に魔力を消費する武闘系魔術と効率が悪いから、黒魔導士専攻の生徒で召喚術を選ぶ人間はあまりいない。


 わかりやすく言うと、ゴキブリをスリッパで叩いて直接殺すのが黒魔導士で、スプレーや殺虫剤などのアイテムを使って殺すのが白魔導士だ。


 黒魔導士は魔法剣や大規模攻撃魔法、体を魔法で強化するのに優れているので、魔物との戦闘のさいに召喚獣を使わずに戦う。


 反対に攻撃能力がない白魔導士は使い魔を使役することや、魔法道具で身を守る。私は武闘系魔術が得意ではなかったので使い魔が必要なのだが…ラッセルは黒魔導士専攻でも最強の実力者だ。ぶっちゃけ召喚獣はいらないのに、なんでここにいる?

 

 戸惑っていると、いきなりラッセルに腕をつかまれた。


 あれ?君、女嫌いじゃなかった?


 私が間接的に触ったハンカチを気持ち悪いといってゴミ箱に捨てたのに、なんで直に私の手首をつかんでいるの?


 混乱で頭がショートしていると、いつの間にかラッセルの隣の席に座らされていた。


「ラドヴィア君、あの…。」


「黙れ。燃やすぞ。」


 殺気を帯びた声に、私は全身の血が引いていくのがわかる。


 作中でヒロインにいやがらせをした女子生徒に、容赦なく攻撃魔法を浴びせて髪を燃やした彼なら本気でやりかねない。せっかく憧れの亜麻色の髪に生まれたのに燃やされたくない。


 学院長先生。なんでこんな危険人物を賢者候補生に選んだんですか。




 周りに救援を求めるべく、見渡すと同じく白魔導士希望の草食系クラスメイト達はもちろん、女子たちですらソッポを向かれた。


 どうやら、みんな余計な火の粉を浴びたくなさそうで、私は完全に見捨てられたようだ。


 そこに鳥の使い魔を肩に乗せた召喚術の先生がやってきた。


 先生の使い魔は、ラッセルの攻撃的な魔力と殺気を感じとったのか、先生が着ているローブのフードに逃げ込んでしまった。


「なんか、この部屋寒くね?まあいいや、授業はじめるぞー。」


 先生、空気読んで!お願い!


 私の願いはむなしく、召喚術の先生は授業を始めた。


「んじゃ、初っ端だけどみんなには使い魔を召喚してもらう。召喚呪文は覚えてきたかぁ?」


 やたらとテンションが高い先生と違い、クラスメイトは全員テンションが凍っていた。先生の問いかけに誰も答えず静まり返る教室。


はっきり言って異様だ。でも、召喚術の先生は持ち前の鈍感さと明るさで授業を進めていく。


ラッセル君、お願い。先生のテンションがうざいからって貧乏ゆすりしないで、そしてこちらをガン見しないで!私は悪くない!睨むなら先生を睨んで!


  こんなうすら寒い授業は初めてだ。


 その日、私はどうにか召喚術で使い魔を召喚はできた。召喚したのは純白の天馬で、聖獣の部類にはいる召喚獣だ。でも、ペガサスの幼獣を召喚できたのには驚いた。


 ペガサスはよく白魔導士に召喚されるから珍しくはないが、ペガサスの幼獣は珍しい。成長過程を是非観察させてくれと先生に頼まれてしまった。


  続いてラッセルも黒龍の幼獣を召喚に成功した。たぶん、召喚された召喚獣でも最強の部類で、珍しい召喚獣だった。もちろんこれに対しても、先生は大喜びで授業中小躍りしていた。


 反対にラッセルは苦虫をかみつぶした表情でペガサスの幼獣を睨みつけていた。


「…そいつが成獣したら、覚えておけ。」


と言われたが、何を覚えておけばいいのだろうか。


訳が分からず、召喚術の授業はそこで終わった。


 

******


  それから、召喚術以外の授業は何事もなく進み、季節は春から夏に差し掛かっていた。


 問題のラッセルは毎回、隣の席になるのですがなぜでしょう?しかも、最近の彼の行動は意味不明です。朝、登校すると、私の教室にラッセルがいきなりやってきて、真っ白な百合をふんだんに活けた花瓶を持ってきて、私の机に置いていきます。何かのいじめでしょうか?


 最近はなぜか飴をやたらくれたり、放課後、いきなりやってきて図書館に強制連行され、試験期間じゃないのに一緒に学科の勉強をします。おかげで成績が上がりました。そのため、放課後が来るたび毎回びくびくしながら下校してます。


私、彼に何かしたかな?


首をひねったが、やっぱりハンカチを拾った以外身に覚えがない。こうして訳が分からないまま季節が過ぎていった。



 私はその日、中庭の木の下に腰を下ろし、使い魔となった天馬のニール君と午後のひと時を過ごしていた。


 普段、召喚術の授業以外では召喚しないのだが、召喚獣のコミュニケーションも大事だからと、こうして空いた時間に呼んで一緒に過ごすようにしているのだ。


木陰の中、お昼寝モードになったニール君の頭を膝にのせて本を読んでいると、思わぬ人物に話しかけられた。



「あ、いたいた。君でしょ?「天馬の君」って。」


 二学年になってからは良く攻略キャラと会うなと思っていたら、さっそく別の攻略キャラに遭遇した。


金髪がまぶしい王道の王子キャラの賢者候補生。クラウス・オースタインだ。王子ではないが、現国王の甥であり、原作主人公が狙う蒼魔導士の賢者候補生だ。


 因みに初対面である。


 図書室でよく見かけたが、会話をするのは初めてだ。


こいつは一見爽やかキャラだが、冷めた性格をしており…昔から自分を取り巻く環境で他人とうまく折り合いをつけて、一線を引いていた。人を信じない偽りの笑顔を浮かべ、最初主人公にも一線を引いていたが、そのひたむきさに、凍てついた心を溶かしていく…的な設定だった。この時期だと第三段階で、ヒロインとは両片思い状態かな?


「確かに、天馬の幼獣を召喚しましたが。何ですか?天馬の君って。」


 私の膝に頭を載せるニール君の頭をなでると、ニール君は嬉しそうに私の膝に頭を摺り寄せる。少し甘えん坊な私の使い魔に私はへにゃりと自分の顔が崩れるのがわかる。


かわええな。うちの子はほんとにかわいい!


 親ばか全開の私に引いたのかクラウスは少し後ずさる。


「?」


「あ、ごとめんね?別に君に引いたわけじゃないんだ。天馬の幼獣は無垢な乙女しか触れないんだ。無垢な乙女以外の人間に触るとたちまち死んでしまうらしいから。」


 天馬弱いな!使い魔として駄目じゃね?


でも、天馬の幼獣が滅多に召喚に応えないのか分かった気がする。幼い天馬からすると人間界は安全な場所ではないのだろう。今後、ニール君を呼ぶときは気を付けよう。


「よく知ってますね。天馬の資料も少ないのに」


「ああ。うちの姉も天馬を召喚しているんだ。昔、人化した彼に聞いた話だから間違いないよ。

あ、でも成獣したら、他の人間も触れるようになるらしいから心配ないよ。」


 へぇ、わざわざアドバイスしてくれたのか。でも、どこか腑に落ちない。


 クラウスは本当にそれだけの理由で話かけてきたのだろうか?


 「クラウス!!」


「ぅわっ!」


 突然ラッセルの声が聞こえて、私とニール君は飛び起きた。怯えるニール君を送還すると私は慌ててラッセルの方向に目を向ける。しかし、すでにラッセルは近距離にまで近づいており、なぜか私は肩を掴まれ抱きよせられた。


(何事!?)


頭を胸に押しつけられながら、顔を上げるとラッセルの横顔が目に入ってきた


 心なしか美しい黒髪が逆立って見えるのは気のせいかしら?薄紫の瞳からビームが出そうなんですけど。


(父さん、父さん、魔王がここにいるよ!!)


「おや、ラス。ごきげんよう。花の香りを嗅ぎつけてきたのかい?」


中庭だけに、あたりは花だらけだが、それは絶対違う。これは花を愛でる表情ではないですよクラウスさん。


「…こいつに何をした。」


「特に何も?」


「……。」


あれ、おかしいな。夏なのになんでこんなに寒いんだろう。クラウスはニコニコと笑いながらラッセルの笑顔を受け止めているが、はたから見るとそれも怖い。


「いい加減、トルテア嬢を離したらどうだい?こんなに青ざめて、可哀想に…彼女、怖がっているじゃないか。」


「……。」


「また、だんまりかい?君がそんなのだから相手に伝わらないんだ。」


「うるさい!」


顔を真っ赤にさせて怒鳴るラッセルに、クラウスはやれやれとため息をこぼした。


「全く君の女嫌いはどこにいったのかな?そんなに大事なら、君は彼女と話し合うべきだよ。」


 そう意味深な言葉を残すと、クラウスは優雅にその場を後にした。


 クラウスが退場すると、ラッセルは抱き込んでいたわたしの肩をそっと離すと、私の目をじっと覗き込んだ。


その表情には怒気が見られず、どこか悔いるような、苦しそうな表情が浮かんでいる。


「…あの、ラドヴィア君?」


「……入学式の時、」


「え?」


「あの日、俺はお前にひどい態度をとったのは…覚えているか?」


「え、うん」


 ていうか、よく覚えていたな。私は驚いてラッセルを見上げると、ラッセルは私から視線を外す。心なしか頬が赤く見えるのは気のせいだろうか?


「…あの時、初対面の女にまとわりつかれていて、俺は最高に機嫌が悪かった。」


あ、うん、それは知ってる。


 ラッセルは苛烈な性格をしているが、黙っていれば薄幸の美少年だ。入学時に唾をつけとこうと何人もの女子生徒が彼に声をかけていた。現在は、その容姿に反した性格の苛烈さと魔王のような威圧で、女性とは積極的に関わろうとはしないけど、根強いファンがたくさんいるのは知っている。



「あの時、お前も…声をかけてきた女共と同類に見えたんだ。それで、ハンカチを拾ってもらったのにあんな態度を…っ…ごめん。」


 眉を寄せて、すまなそうにうなだれる彼に思わずキュンとしてしまったのは、はたして前世の私か、今世のわたしか…どちらにしろしょげてる美少年の姿は母性本能をくすぐられる。くそ、これだからツンデレは!!


「あの後、友人にも説教されたし、自分でも反省をした。次、会うときは謝ろうと思っていた…のに。お前、次にお前と会ったとき、怯えていただろ?」


「あ…。」


 そういわれれば、怯えていたな。今よりめちゃくちゃ接触するの避けてたし、合同授業でも近づかないようにしていたな。


「余計、話しかけづらくなって…ずっと、お前に話しかけるタイミングをまっていたけど、もともと接点ないし。そうこうしているうちにとうとう専攻を決めなくちゃいけなくなった。お前は白魔導士専攻で、俺は黒魔導士専攻で、俺とお前が接点を持てるとしたら、選択授業ぐらいだったから…どうにかお前が召喚術を習得することを聞き出して…」


 聞き出したのは間違いなくあの空気が読めない召喚術の先生だろう。てか、私に謝るだけのために召喚術を選択したの?


「や、でも。そこまでして謝ろうとしてくれなくても…。」


「…っ気づけよバカ!!!」


「え、」


「何でそこまで鈍いんだよ!!謝るだけで選択授業でわざわざ召喚術なんて選ぶかよ!!」


「や、まぁ。そうですね!うん!」


 彼は何をここまで怒っているのだろう?気づかないうちに何かしたのだろうか?


「ぜってぇわかってねぇだろ!!っなんで…こんな女…。」


「ラドヴィアく…ん!?」


 再びなぜかラッセルの腕の中に閉じ込められた私は、頭の中が混乱していた。


 温かな体温と微かに香る、彼の香りが私の思考を鈍くさせていく。


 混乱して固まる私をいいことに、ラッセルはぎゅうううう離さないといわんばかり抱きしめる。


 ホールドを解いてくれる気がないみたいで、正直苦しい。ギブ!ギブ!と彼の背中をポンポンと叩けば、なぜか余計に抱き絞められた。解せぬ。


「…いつもへらへらしてて、バカっぽいのに…。」


(バカっぽいって…やばい、否定できない。)


「…そのくせ、毎日楽しくて仕方ないって顔で…目がキラキラしてて。」


…そんなに楽しそうだっただろうか?確かに魔法の授業とか、すごいワクワクしてたけど。


「向日葵みたいに笑うくせに…俺の前だとしおれた顔をしやがって…なんなの?俺がそんなに嫌いか!?」


なんか逆ギレされたー!!!誤解だ!たしかに初対面のときは泣くほど心折れたし、むかっ!としたけど嫌いなわけじゃない。むしろ大好きなキャラだったから憎めなかったというか…。


「女は花と菓子を貰えば喜ぶってキースに聞いて、毎日花屋と菓子屋に行って、花と菓子をお前にやっても無反応だし、レオンにデートに誘えばいいと聞いたから放課後待ち伏せして、お前が好きだっていう図書館につれていっても、全然喜ばないし…。」


キースは同じクラスの白魔導士専攻の癒し系賢者候補で、レオンはたしか赤魔導士専攻のアイドル系賢者候補生だな。てか、賢者候補生ってそんなに仲良かったっけ?



「私を喜ばせたかったの…?」


「お前以外誰がいる!?」


 いや、主人公とか?とは、さすがに言えなかった。


「私なんかを喜ばせなくても…っ」


 その瞬間、彼の黒髪が私の頬をくすぐり、唇に、なにかやわらかなものが押し当てられた。



…姉さん事件です。今、私の唇はなぜかラッセルに奪われおります。



え?え?なにこの状況?ラッセルからのキスはゲーム中では冬のイベントで発生するのに、なのに、なんで、主人公でもない私がキスされているの?




「…好きだ。」





「っ…。」


「…好きなんだよバカ。…気づけよ…。」


 振るえるような声でささやかれて、私の胸はドクリと音を立てた。


きっと、もう感じる事はないと思っていたこの感情はなんだろうか?


 彼のゲームの設定はなんだっけ?ルートは?台詞は?


だめだ、考えなくちゃ。


そう思うのに、頭の中は真っ白で、彼の心臓の音と、自分の心臓の音がやけにうるさく聞こえる。  


「…ら…」


「ラッセル。名前で呼ばないと…燃やすぞ。」


照れ隠しなのか、最後の燃やすぞという言葉がやけに拗ねたように聞こえる。


顔を覗き込むと、案の定拗ねた顔をして、口をへの字に曲げている。


 私は思わず、ほほえましくなってしまって自然と笑みがこぼれてしまった。


「…ラッセル君、あの、ね。私…。」


そういった瞬間ザアアアアと風が吹いて、木々の梢が揺らぐ音がラッセルと私の周りに響き渡る。


 風の音が大きくて、私の言葉が聞こえたのは、私を抱きしめていた彼だけだろう。


 私の言葉を聞いたラッセルは長々とため息をこぼすと、私の体を離して、右手で顔を覆って「天然って質が悪りぃ。」と何やらつぶやいている。


 ちょうどその時、お昼休みが終わったのか、授業開始の予冷が響き渡った。



「ココ。……お前、天馬の幼獣が成長したら、ほんとに覚えとけよ?俺は容赦しないからな?」


「…うん?わかった。」


「…絶対わかっていないだろう。」


 また、ため息が聞こえた気がしたが、気にしない。


 何だか、とってもうれしいから。


彼の最後の言葉の意味が分かるのはニール君が成獣する二年後に知ることになる。



*******


▼ライバルイベント:「鈍感な向日葵」が解放されました。


これにより、ラッセル・ラドヴィアは攻略不可となります。




「…ラッセルくんが攻略不可になっちゃったか~…ま、私はクラウス一筋だからね。ココちゃん可愛いし、二人には幸せになってもらいたいな。」

 

 金色の髪を揺らしながら、少女は嬉しそうな笑みを浮かべる。


 ココが主人公と呼ぶ少女の青い瞳は、目の前に浮かんだ画面を確認すると、窓の外に見える青空を見上げる。


 彼女もまた、ラファレルシアを愛する転生者だった。ただし、彼女は二十年前に製作された「ラファレルシア」のリメイクされたリメイク版プレイヤーだった。 


機種も進化し、容量も多くなった携帯ゲーム機のソフトとしてリメイクされた新ラファレルシアには、新要素が盛り込まれていた。


 逆ハーレムルートと、攻略キャラ一人ひとりに恋する新キャラクター、通称ライバルキャラの登場である。


ココ・トルテアはラッセル・ラドヴィアを攻略するさいに出てくるライバルキャラだった。


 両親を夜盗に殺され、叔母と従妹にさんざんいいようにされてきた少年ラッセルは、容姿の美しさから貴族の未亡人に売られ、奴隷のような日々を過ごす中で、強い魔法の能力に目覚める。


 その目覚めた魔力が大きすぎて未亡人の屋敷を燃やしてしまい、本来なら、投獄される罪人なのに十歳という幼さと劣悪な環境を考慮され、ラッセルは放免された。国に奉仕するという形で減刑になり、ラッセルの才能を見出した現賢者のサイラス・リーガーによって引き取られる。


そんな過去の経験から、女性を嫌っていたラッセルだが、その心に嫌いになれない少女が二人あらわれる。


治癒魔法のステータスが高い主人公と、ココである。


亜麻色のふわふわの髪に、オレンジ色の瞳がキラキラしてて、いつも楽しそうに笑う、ごく普通の女の子。たぶん、そこらの乙女ゲーのヒロインになってもおかしくない女の子がラッセルルートのライバルなのである。


 主人公にはその優しさに、ココにはその底抜けの明るさにラッセルは心惹かれていくのだ。


 因みに、現在の主人公の少女は治癒魔法ではなく、精霊魔法を強化したステータスなので、ラッセルが事実上心惹かれている少女はココしかいない。

 

 ややゲームの内容とはちがったが、ココの持ち前の明るさにラッセルは惹かれたようで無事にライバルイベントは終了した。


 主人公に転生した少女はクラウス一筋の転生者だったため、ココのライバルイベントは事実上放置していた。むしろ、陰から応援していた。そんな彼女は現在、逆ハーレムは狙わず、ひたすらクラウスのルートを邁進している。彼女の目下の敵はココではなく、クラウスに恋するライバルキャラだけである。


 「ココちゃんルートが確定したわけだから、そろそろココちゃんに接触してもいいかな。ほんとは私、あの子とドストライクなのよね。」


 主人公の少女は、彼女のライバルイベントを思い出すと思わず顔をにやけさせた。


「最後のあれは殺し文句よね。ラッセル君は今頃大丈夫かしら?」


 

ココの最後の台詞は、ファンの間でも物議を交わした台詞で、普通ライバルキャラが嫌いだという多くのプレイヤーたちも胸キュンさせ、まるで、ラッセルがココを攻略しているように見えるため、「ココちゃんルート」と呼ばれるものとなる。


「…ラッセル君、あの、ね。私……ラッセル君のこと、よくわからないけど、ラッセル君と…恋、したい。」


その台詞を、オレンジ色の瞳をとろけさせて、はにかみながら言うココに、女である主人公の少女ですら撃沈したのだ。今頃、ラッセルは悶えているに違いない。


 「今度はちゃんと、自己紹介したいな。まっててね。ココちゃん」


 そう謡うように言うと、少女は愛しい王子様のむかって歩き出した。


 今度は、自分の恋を手につかむために。

ラッセル:

見た目は薄幸の美少年。中身は苛烈で、結構容赦がない性格

ココ以外の女は眼中にない。燃やすぞが口癖(笑)

独占欲は人一倍で、たぶん、ココは一生こいつに囲われる。が持ち前の鈍感さで「愛されてるなぁ」ぐらいにしか感じない。天馬の幼獣が成獣するまで我慢を強いられることになる。


クラウス:

主人公のアタックを交わしてきたが、最近はクリティカルヒットしており、攻略される日は遠くない。ラッセルとは口喧嘩仲間で、入学式の日に説教したのもこの人。ココとラッセルがくっつけばいいなぁ、とわざとココに話しかけ、ラッセルの嫉妬心を煽った。結構いい性格


キース:

癒し系の美少年だが、最近はクラウスとラッセルの恋模様にやきもきしている。ライバルキャラの女の子とは幼馴染設定。たぶんこのまま自然とくっつく。


レオン:

アイドル系美少年。猫っぽい性格で飽き性なのになぜか赤魔導士を専攻している。もんもんと恋に悩むラッセルがめんどくさくなってデートでも誘えばいいんじゃね?といった。そのせいでココは強制図書館デートに連行されるはめになる。現在は世話焼きな優等生ライバルキャラをどう食ってやろうかと腹黒いことを考えている。


ニール:


 天馬の幼獣だが、本能的にラッセルはやばいと悟っている。ラッセルがココの近くにいるときは緊急時をのぞき召喚に応じない。ココが大好き。たぶん大きくなってもココの前では人化しない。

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[気になる点] 誤変換? >お昼休みが終わったのか、授業開始の予冷が響き渡った。 予令が
[気になる点] ラッセル死ね
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