表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

前編

友人から乙女ゲーのお題が来たので試しに…天使に行き詰ってたので


 気分転換程度にお楽しみいただけたら幸いです。

乙女ゲーの世界に転生なんて、なんの冗談かと思ったが、正直に言おう。




ぶっちゃけ、しんどい。



主人公に転生したら「イケメンにお近づきになれるヤホホーイ!!」とか思うし、悪役なら「目指せ我がルート!!悪役ハッピーエンド!!打倒主人公!!」と燃えられただろう。あるいは、転生傍観者モブによる「私こそがガンダm…じゃなくて主人公だ!」と、主役の奪還もしくは平穏な生活を得るために命を懸けるだろう。


 ちなみに私の場合は三番目である。


 私の今世の名前はココ・トルテア。前世では乙女ゲーをこよなく愛した女子高校生だった。前世の名前は覚えてはいないが、前世の乙女ゲームへの執着心からか、転生後のこの世界のことや、攻略対象の男の子たちのことは良く覚えている。だからこそ、夢も見たしキタコレ!と打ち震えもした。


 そう、私が生まれたこの世界は「ラファレルシア」という幻想系乙女ゲームだった。


「ラファレルシア」略してラファレは、ドラゴン、巨人族、妖精に悪魔などファンタジー要素を詰め込んだ魔法学園を主にした恋愛シミュレーションゲームである。


  ロクドレイク選定王国という大国にあるラファレルシア魔法学院を舞台に、攻略対象は学園の生徒4人と、教師1人、王宮騎士4人、召喚獣1匹からなる計10人との恋愛を繰り広げる前世で大ブレイクした物語である。


 ここ、ロクドレイク選定王国は、代々賢者と呼ばれる魔導師が王を選定してきた。ラファレルシア魔法学院はその賢者を輩出するために設けられた学校で、王族、貴族、騎士に平民、あらゆる身分の生徒たちが多く通っている。そして、この学院で、賢者にもっともふさわしい生徒を賢者候補生という。


 はい、わかりますね?攻略対象です。当然すごい美少年たちで、ファンからはジャニーズ組と呼ばれている。15~18歳までの少年たちで、画面越しのお姉さんたちを散々萌えさせたのは言うまでもない。


 で、賢者候補生を統括している教師が、現賢者の美中年である。因みにこの美中年も攻略対象である。


 4人の賢者候補生を攻略しないと攻略できない美中年だがリロリコンとツッコンではいけない。


 次に、ルート別で主人公たち魔法学院の生徒は課外授業で、王宮騎士とペアを組んで魔物狩りにいく。そのさい出てくる4人の騎士が騎士団ルートの攻略者である。


 年齢も20代~30代の美味しい…げふん、美青年たちで、別名「美声年騎士団」と呼ばれていたほど、エロ…げふん、大変結構な美声の声優陣で、魔物との戦いで主人公と心通わせていく過程に何度と鼻血を垂れ流し、脳髄を破壊してきたことか…恐るべし騎士団。


 そして、最後にファンの中でも大騒ぎになったのが召喚獣ルートである。


 召喚獣ルートは極めて難しいルートで、簡単に言うと召喚獣を自分好みの美形に育てる逆光源氏計画的なルートである。


 まず、召喚獣ルートは、話の序盤の選択で主人公が、召喚術を専攻した場合、使い魔としてフェニックスの幼獣を召喚する。フェニックスは主人公の成長とともに成長する。主人公が容姿を磨けば、妖艶な美青年に、主人公が魔法を極めたら、ツンデレ美青年に。レパートリーは約4つ。一匹で美味しいキャラであるのだが、召喚獣ルートにいくと、他の攻略キャラを攻略できなくなるのである。


  それぞれルートが複雑に分岐しており、、攻略まで必死にミニゲームやステータス上げに苦戦したのを覚えている。画像も、キャラの容姿も抜群。声優も豪華絢爛だった。イベントには必ず行ったし、関連グッツや同人誌即売会にも前日から並んで強行突破したこともあった。ぶっちゃけ、こんな記憶を残すなら自分の名前を残せと前世の私に問いたい。

 

 よっぽど好きだったんだろう。好きなキャラクターがいる世界に転生できて嬉しい気持ちと、期待感が私の心を満たしていた。


 だから、必死に勉強して寝る間も惜しんで、魔法の練習もして念願のラファレルシア魔法学院に入学したのだが…現実は甘くはなかった。


*******




「あの、これ…落としましたよ?」


「……。」


 入学式の日に、たまたま前世の私が好きだった賢者候補生のラッセルが目の前を歩いてきた事で、私の人生は大いに変わることになる。


 ラッセル・ラドヴィア(15)原作時は16歳だったな


 ビスクドールのように青白い顔に、整いすぎた美しい容貌…物憂げな紫の瞳に、流れる黒髪はさらさらと音が聞こえてきそうなほど美しい。


 ラッセルは基本無表情のツンデレキャラで、容姿は薄幸の美少年なのに、暴言をはく苛烈な性格をしている。彼はなにより女嫌いの天才児として学園では有名だった。彼の過去と抱えた闇に、苦悩するラッセルに何度と手を差し伸べるヒロイン。やがてラッセルは主人公に心を寄せていくというルートだった。因みに私の押しメンだった。


 廊下で、彼と遭遇したのはいいが、やはりゲームの通り彼は女性が嫌いのようで、自分に向けてくる女子生徒たちの熱い視線を煩わしそうに廊下を足早に歩いている。


 私とすれ違ったとき、彼のズボンのポケットから紺色のハンカチが落ちたのだ。もしかしたら、お近づきになれるかも!と私は慌ててそのハンカチを拾うと、彼を追いかけたのだが…私はそこで絶望することになる。


 ラッセルは私の手からハンカチを奪うように掴み取ると、そのままゴミ箱の中にハンカチを投げ込んだのだ。


「!」


「おい、ラッセル。いくらなんでも…。」


「気持ち悪い…女が触ったものなんか、持っていられるか!」


 一緒にいたクラスメイトにとがめられたが、彼は背筋の凍るような視線で私を一瞥すると、すたすたと講堂へと向かってしまった。その瞬間私のなかにあった、昂揚感や希望は打ち砕かれてしまった。


 ラッセルと主人公の邂逅イベントはあそこまで、ひどくなかった。


 私の何がいけなかったのだろう?容姿は…うん、仕方ないにしろ、普通、お礼ぐらい言ってくれてもいいんじゃないか。


  周りからは「あのこ、可哀想」という視線と嘲笑が聞こえてくる。


  私、こう見えてメンタルが弱いんです。


 もとより、原作主人公の乗っ取りなんてできない根性なしなので…


 やっぱり、ヒロインは特別なんだなと、打ちひしがれてしまった。傍観者は所詮、傍観者のままなのだと。そう感じたとき、自分の中でストンと何かが落ちた。


 別に攻略対象だからってくくって恋しなくてもいいんだ。私は私で好きな人を見つければいい。前世なんか関係ないのだから。


 別に攻略対象者が恋をしてもしなくても、自分の死亡フラグはないし、世界が崩壊するわけじゃない。

主人公が誰と恋しても自由なのだから、私だって誰に恋してもいいのだ。


そう思うと、なんだか折れた心に活力が戻ってきた。


 (うん、ひとしきり女子トイレの中で泣いたらすっきりした!)


 私は涙を制服の袖でふき取り、意を決すると、トイレから出ると講堂へと向かった。


*******


 大好きだった攻略対象との出会い後、私は私なりに考えた結果、自分の好きなことをしようと心に決めた。


 攻略対象に合わせた学科を選ばなくてもいい。自分が学びたい授業を専攻しよう。


 攻略対象に合わせた場所でお昼ご飯をたべなくてもいい。友達と楽しくおしゃべりしながらご飯を食べてもいい。


 攻略対象者に合わせて、放課後を過ごさなくてもいい。大好きな図書館で本を探して、友達と寄り道したっていいんだ。


 いったん、それに気が付くと私は、今の私がしたいことを突き詰めて考えた。主人公の恋愛模様?攻略対象とのふれあい?別にいい。無理に自分を合せるのはよそう。


 そう決心すると私は自分の未来の方向性へ意識を向け始め、最初の基礎課程の1年を無事に終えることになった。ラッセルとはたまに授業が一緒になって見かけるが、私はあれ以来彼に話しかけることはなかった。


 たまに視線を向けるのは、たぶん前世の私の少なからぬ名残のせいだろう。初対面のことで私は彼を嫌いになったわけではないが、少し苦手になってしまったのは仕方ないだろう。でも、なぜか最近視線が合うのは気のせいだろうか?まぁ、気のせいだろう。


 そして学院生活2年目が始まった。


 原作の開始である。


二学年に上がると、専攻が選べる。専攻とは自分にあった魔導士の授業で


 錬金術や、付与魔法、属性魔法、魔法道具作成を得意とする赤魔導士。

 攻撃魔法や魔法剣、武闘魔術、強化魔法を得意とする黒魔導士。

 治癒魔術、神聖魔法、医術、魔法薬学を得意とする白魔導士。

 精霊魔法、防御魔法、結界魔術、占星術を得意とする蒼魔導士。


 それぞれの専攻科から賢者候補が選ばれるのだ。


そして想定通り、十五年ぶりに今年の二年生から四人選ばれたのである。


 私はかねてから白魔導士になることを決めていた。白魔導士は治癒魔法を得意とする後衛向きの職業である。私は白魔導士となり、故郷の村で医者として働こうと決めていた。幸い、白魔導士に向いていたのか、先生は私の専攻に太鼓判を押してくれた。


 私は白魔導士専攻のクラスに移ったことにより、攻撃特化の黒魔導士専攻のラッセルと接することは一切なくってしまったが、後悔はしていない。


 私は必修科目のほかに、選べる選択授業で召喚術を選んだ。ちょっと興味があったのは事実。やっぱり魔法の世界に転生したなら使い魔は欲しいよね。という単純な動機だった。


 問題の主人公の女の子は、どうやら王族の賢者候補生が狙いのようで、精霊魔法を得意とする蒼魔導士のクラスへと行ったみたいだ。


 このゲームの良いところは逆ハーレムルートがないところだ。なぜ逆ハーレムルートがないというと。ゲームの容量が多すぎるためである。たぶんFDで出すのかなとは思うが、私はあいにくFDをプレイせずに転生したからわからないが、見なくてよかったのかもしれない。


 ほら、転生後の主人公が転生ビッチだったらやだなぁと思ったわけです。はい。


 主人公の恋愛模様は興味はありませんが、好きだったキャラクター達をかたっぱしに翻弄していくところなんて、気持ち的に見たくないんです。


 前世の時はまだ主人公に感情移入してたので平気だったけど、いざ同じ世界にいると、やっぱり見たくないというか…まぁ、ファン独特ののジレンマですね。


 去年1年主人公を見た限り、主人公はデフォルト主人公でした。ただし、クラスちがったからあんまり話したことないからわからないけど。


 私はうきうきとした気持ちで召喚術の教室に入った瞬間、持っていた教科書を落としてしまった。








何故なら、原作では召喚術を選択していなかったラッセル・ラドヴィアが教室にいたからである。












 天使じゃないを書いてる過程で息抜きにかいた小説です。近々連載をアップします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ