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ギルド

 昨日の一件からメアが不用意にスキンシップをとらないようになった。やっぱ嫌われたのかな……。

 でも態度は普段と変わらないし、そういう訳でもなさそうな……と、思いたい。


 今日はメアの服装変更ではなく似たようなフード付きコートを店で見つけたのでそれを着ている。





 さて、早速行動に移してみた訳だが。


 「ここがギルドか」


 二階建ての少し広めな建物だ。中からは賑わっている様子が窺える。


 ギルドと言うのは人々や街、国などからの様々な依頼を受けて仕事を斡旋してくれる冒険者組合だ。母も魔術師として昔はたくさんの依頼をこなしてきたらしい。その話がとてもスリルとロマンに溢れていて、いつしか自分も……と、思っていた。

 さらに依頼に見合った報酬と経験も積めて一石二鳥だ。

 そして、ギルドにはランクと言われるシステムがあるらしく、依頼の達成状況や試験の結果で上昇させることができ、受けられる依頼の幅が広がったり人々からの“信頼”や“尊敬”を集めることが出来ると。

 それらは魔人である俺が生きていくために必要になるものじゃないかと思ったのだ。


 「それじゃあ行きましょうか」


 メアが俺の手を握ってくれた。

 人間がたくさんいる中に入って行くのは少し恐い。父の最後を思い浮かべてしまうから。

 そんな俺の心はメアに筒抜けのようだった。


 「ありがとう。メア」





 ギルドの中に入って行く。

 強そうな人間ばかりだ。魔人だとばれたらどうなるだろう。


 正面にあるのが恐らく受付カウンターだろう。幾つか並んでいるので空いている場所へ向かう。


 少しずつ視線が俺とメアのほうへ集まってきているような……。確かに怪しい雰囲気を出しちゃってるのは分かる。メアは全身真っ黒って感じだけど肌は真っ白で瞳は赤、俺は身長は少し大きめの子供サイズでフードを目深に被っているからな。そんな二人組がいたら浮くだろう。


 「今日はどのようなご用件でお越し頂きましたでしょうか?」

 「ギルドに登録をしたいのですが」

 「初めての方ですね? では書類に必要な記入をお願い致します。そちらの方は……」

 「ええ、私も一緒にお願いするわ」

 「ではこちらに記入を……」





 緊張した。けど無事にギルドカードも発行してもらえたし、登録も済んだ。受付の方が普通に対応してくれて良かった。少しキツそうな人だったけど。

 記入することがそんなに多くなくて助かった。これで種族の記入欄なんてあったら大変だったからな。


 登録を終えて一安心していたところ……。


バァンッ


 ギルドの扉が勢いよく開かれて何者かが入ってきた。


 「あー疲れた。ほら、大猪狩ってきたわよっ!! さっさと報酬ちょ……うだ……い?」


 そこにはハネっ毛のあるショートカットの赤髪と吊り目がちの赤い眼、所々露出のある部分鎧を身に纏い大剣を背負った俺より少し年上らしき気の強そうな女の子がいた。


 「なんなのよこの空気。せっかく私が大物を仕留めてきたって言うのに……ん? あんた誰よ?」

 「お、俺は今日登録したばかりで……」

 「あぁー新入りってわけね……って、そっちの女もアンタもくっらーいわね。この空気の正体アンタたちでしょ。私が気持ちよーく仕事を終えようとしたのをよくも邪魔してくれたわねっ!! まずそのフードとって顔見せなさいよっ」

 「や、やめろよっ!! このっ」


 こんなとこで魔人だってばれるわけにはいかないんだよ!! くそっなんだコイツしつこいな。


 「は、やくっ……見せな、さいよぉおっ!! はぁはぁ……どんだけ顔見せたくないのよ。そんなに必死に隠すほど不細工ってわけ? まだ子供みたいなのにそんなに捻くれてるなんて気持ち悪いわね」


 お前だって俺と大して歳変わらないだろ。てか口悪いし馴れ馴れしいし、この女はなんだよ。


 「ニーア、その辺にしなさい。ここには色んな人がいるのだから詮索は無理にしては駄目って言ったでしょ?」

 「だってぇ……」

 「ほら、報酬はちゃんと渡すから」

 「はぁい……」


 さっきの受付の女性が助けてくれた。それとこのお転婆娘はニーアと言うらしい。


 「アンタたち、今度からは気を付けなさいよっ!! 辛気臭いのは嫌いなのっ」

 「わ、分かった」

 「ごめんなさいね。ギルドに来るの初めてで緊張しちゃったのよ」


 イラッとしたけどここは穏便に済ませないとまた面倒なことになりそうだからな。


 「ふんっ、分かれば良いのよ。じゃあ私は美味しいご飯食べにいくから」


 去って行った。嵐のようだったな。


 「すみませんでした。彼女は少し気性が荒い子で」

 「いえ、こちらこそ空気を悪くしてしまったようで」





 受付の女性と一言二言交わして今度は掲示板のほうへ移動する。依頼の情報が貼られている場所だ。

 今は誰も近づいて来たりしない。それとなく放っておいて下さいオーラを感じとってくれたのか。


 「ふう、冷や汗掻いた」

 「大変だったわねシオンちゃん。初日からこんなデビューしちゃって大丈夫かしら」

 「うん。あんまり目立ちたくはないんだけど……」

 「ま、とりあえず簡単な依頼でも受けちゃう?」

 「そうだね」


 俺とメアは登録したばかりなので一番下のFランクだ。依頼も難易度の低いものしか受けられない。


 「薬草採集とか小物の配達とか人探しとか……あ、小鬼(ゴブリン)退治とか良さそう」


 森で狩りは多少経験したので何となく出来そうだ。


 「そうね。シオンちゃんなら大丈夫そう」


 カウンターに受諾する依頼を告げてギルドを後にする。



メアに日光が苦手設定を付け加えたので普段の服装に黒のヘッドドレスと日傘をプラスしました。

前話の最初のほうに少しそれ関連の文を足しました。

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