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休息

 大きくもなく小さくもない、だけど活気に満ちているような、そんな街に辿り着いた。いかにも中世西洋風のファンタジーって感じだ。

 ここまで来れば一先ずは安心していいだろう。教団だって何処にでもいるって訳じゃないらしいし。


 今俺はメアの魔術、服装変更(ドレス・チェンジ)によってフード付きの黒いコートを着ている。頭の角を隠すためだ。角はフードを被っていれば何とか隠せる大きさだからな。

 そしてメアは日の光が苦手だということで森を出てから髪を纏め上げて黒いヘッドドレスを被り黒の日傘を差している。なんか豪華な喪服を着た貴婦人みたいな感じだ。


 服装変更はメアと初めて会ったときにも使っていた服を身に纏う魔術だが服が術者本人から離れれば消えてしまうらしい。しかし、至近距離ならば何とか保てるようで俺の服を消さないためにメアがベッタリと密着してきている。仕方ないし感謝もしているのだが……正直そんな気分じゃない。


 俺がいなければもっと早く父も母も逃げられて助かったのかもしれない。

 俺に力があれば助けられたかもしれない。

 俺は……。


 頭の中をぐるぐる回って気持ちの整理がつかない。


 「一人で背負いこまなくて良いのよ。あなたの責任じゃないわ。数え切れないたくさんの条件が重なって起きてしまったことなのよ」

 「メア……ありがとう。とりあえず宿かどこかで落ち着きたいね」

 「そうよね。私もへとへとなのよ。こんなに体力使ったの久しぶりだから……あ、でも私お金持ってない」

 「それなら大丈夫。たぶん宿代ぐらいは払えるよ」


 ズボンのポケットからマネー・プレートを取り出す。貨幣を無限に収納したり、やり取りを簡略してくれる金属板だ。魔術式を組み込んだ魔導具と言われているが仕組みは謎、ブラックボックスだ。

 しかし本人の魔力に反応して作動するので他人に扱われる心配もなく貨幣を無限に収納できるので両替も数える手間も嵩張ることもなく誰もが使っているもの。

 俺もお小遣い用に一つ貰っていたが基本的に家か森での生活だったので特に使うことなく結構貯まっている。まぁ子供からしたらだけど。


 「ごめんなさいね。子供にお金を払わせるなんて……お礼はちゃんとするわ」

 「い、いや……ぃぃ」


 ちょっと興味ある。


 少し気分が紛れてきたかも。





 そこそこ安い宿に一部屋借りた。あまり無駄遣いできない。

 今はやっと休憩出来てほっとしているところだ。まだ追手が来る可能性は否定できないが……。


 「これからどうするの?」


 メアが訊ねてきた。

 これから、何をして何のために生きていくのか。


 「俺は……強くなる。父さんと母さんに守られたこの命を、この理不尽な世界で絶やさないために」

 「そう。ま、私はシオンちゃんの所有物だからシオンちゃんのお望みのままに」

 「ちょ、また所有物って。メアは俺の……か、“家族”だろ。短い間だったけど父さんと母さんと俺とメア、四人で過ごした日々はとても濃かった。俺の家族はもうメアだけなんだ」

 「シオンちゃん…………家族の胸元を見て顔が緩んでいるのはどうなのかしら」

 「えっ!? いや、それはメアがそんな胸元の開いたドレスで密着してくるから」

 「谷間だけでそれだけ興奮できるなんてシオンちゃんはまだまだお子ちゃまね」

 「お、おっぱいは幾つになっても男のロマンの塊なんだよっ」

 「……シオンちゃん、おっさんみたいなこと言うわね」

 「あ、いや」


 実際に中身はおっさんですけど。

 転生したなんて誰も信じてくれないし気味悪がられるのがいいとこだよな。


 「あ、明日さ、ギルドに行ってみたいな」

 「ギルドね。そんなに焦る必要あるかしら。お金なら私が稼ぐからシオンちゃんは心と体をしっかり休ませてあげて」

 「いや、思い立ったらすぐ行動しないと怠けちゃいそうで。ギルドのことも興味あったし、強くなるためにも」

 「じゃあ無理はしないように私がしっかり監視してるからね」

 「うん。頼むよ」


 「さ、お風呂一緒に入りましょうか」

 「えっ!! 良いの!? じゃなくて、駄目だよそんな」


 この世界にも魔術を利用した風呂がある。

 しかし、一緒に入るとか……やっぱ完全に子供扱いされてるな。そりゃまだ成長途中って感じで子供と言われたらそうだけど。


 「そうなの? そんなに気を使わなくて良いのに。さっき家族って言ってくれたし……それとも恥ずかしいのかな? おませさん」

 「う、じゃ、じゃあ一緒に入る」

 「分かったわ。最初から遠慮なんていらないのよ。さぁ行きましょ」

 「えっ……ええっ!!」


 マジで!? い、いいのかな…………子供ってのも悪くないな。ニヤッ





 狭い。どうしよう。

 二人で入るとピッタリくっついちゃう。


 俺、今、メアに後ろから抱きかかえられる体勢。


 メアの肌スベスベ~おっぱい大き~い太ももムニュムニュ~……いかんっ!! 煩悩よ去れっ!! 俺は子供なのだ、欲情など……いや、十二歳と言えば野獣が目覚め始める頃だ。致し方ない。


ムクムクッ


 「あれ? なんか手に硬いモノが……あっ」





 「配慮が足らなくてごめんなさい。もうそういうお年頃よね。これからは気を付けるわ」


 恥ずかしぃぃぃぃぃぃいっ!!

 メアひいてないよね?? 俺はバカだ、あんな状況で耐えられるわけなんかなかったんだ。少し考えれば分かることなのに目先の利益に飛びついて、これで関係が悪化なんてことになったら本当笑えない。


 「ご、ごめんなさい」

 「いいのよ、誘ったのは私なんだし。それにシオンちゃんぐらいの年齢なら普通のことよ。考えが至らなかった私が悪いの。気にすることないわ」


 ものすごい勢いで慰めてくれてる……。





 その後、主に俺が勝手にギクシャクして何だかんだ夜になって寝た。





 「子供っぽいとこもありながら変に大人びたとこもあって、可愛いんだけど必死で前に進もうとしている顔は格好良くて、何だか不思議な子ね……」





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