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涙の上に  作者: ぬるま湯
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 ある日のこと。

 学校で球技大会の旗を作るのを手伝って遅くなった。うちの学校はなにかとクラス旗を作りたがる。

 学校を出るときちょうど7時だったから、もう陸斗さんが帰ってきてるかもしれない。

冷たくなりだした夜の空気を吸い込んで自転車をこぐ。

 三十分ほど自転車を走らせると、市街地の灯りもまばらになり寂しい道にくる。このあたりが寺のあるところだ。もう慣れた道。いつものように自転車を停めようとすると……


「……くと……てそんな人……たの」


 ……?


 確かに寺の庭から聴こえる。涙ぐむ女の人の声? 内容はよく聴こえなかった。

 なんだろうと思って耳を澄ます。単なる好奇心からだった。

 しかし聴こえてきた会話の内容に、唖然とする。


「信じてたのに、楽しみ終わったら捨てようってわけ? ひどいわよ!最低!!」


「言いたいことってそれだけ? 遊びだって分かってなかった?」


「っ、……あんたなんか……」


「悪いけど俺行くから。じゃ、楽しかったよ……あと、こんなとこまでついて来るとかないわ」


 冷たい声。あたしの知るその人からは、聞いたこともない声。

 でも紛れもなくそれは、この寺の住人のものだ。


 やだ……うそでしょ? あれが陸斗さん?


 絶対違う……あたしの知ってる陸斗さんはあんな人じゃない。


 そう思いたかった、けど。


「出てきたら」


 この声を間違えるわけがない。


「……!」


 気づかれてた。

 冷や汗が出てくる。怖い。行けないーー呼吸を必死で抑えて、壁にはりつくようにして隠れる。


「あっ……!」


 肩を引っ張られて無理矢理顔を向けされられた。


「やっぱりまりだ。全部聴いてた?」


 答えても答えなくてもどうせばれてる。あたしはただショックに打ちのめされていた。





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