30
夕方から降り出した雪はあっと言う間に積もって、外は一面真っ白な世界に変わった。
普段ならいつもと違う外の様子にわくわくするのだが、今はどうしても元気が出てこない。
どれだけ好きになろうが、結局は親戚だ。そのことを思い知らされて、なんだか何もする気がなくなったあたしは部屋で仰向けに寝転がっていた。
……ほんっと、今更だな。
わかりきっていることのためにここまで落ち込む自分に情けなくなる。
「別に、こだわらなくてもいいのに」
自分に言い聞かせるように呟いた。効果がないのは百も承知だ。
だめだ、代わりなんかいるはずがない。見つけようという気もしない。あの人でないとだめだ。どうしても。
心は暴走していく。ああ、もういいや。このまま暴走して事故でも何でも起こせばいい。
不意に電話が鳴った。誰、こんな時に。出られるわけない。無視することにした。というか、陸斗さんが出るだろう。彼の部屋のほうが電話に近い。ああ、うるさい。早く出てくれないかな。
「……出ないか」
ため息をつき、恰幅のいい中年の男性は受話器を置いた。
彼の名前は水島浩太郎。まりの伯母の夫だ。
まりが今お金の心配をせずに生活出来ているのは浩太郎のおかげだ。浩太郎は社長。家は大きな三階建てで庭も広い。家の前にはぴかぴかの高級車が二台停まっている。妻と娘たちはブランドで身を固め、自分の腕にはつい先日買った目が飛び出るような値段の腕時計が輝いている。
あまりあれこれとものを欲しがらない高校生一人の生活費を出すのなど屁でもない。
しかし、彼女の進路については一応聞いておかなければならない。進学するのであればそれなりの費用も必要となる。
「まあ、就職するんだったら、ウチに来てもらえたらいいんだけど……」
浩太郎は、唇を歪めて不気味な笑みを浮かべた。




