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涙の上に  作者: ぬるま湯
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3

 まり、とあたしを呼ぶ陸斗さんの声が頭の中で何回も響く。心地のいい声。低めで聴いていると落ち着く。

 はあ、重症だなぁ……。こんなんで大丈夫かな。

 親戚に恋するって……こんなのもアリなのか。まあ親戚といっても、どこで繋がってるのか全く不明なくらいの遠さなんだけど。


 制御できない。


 はじめっからだ。

 初めてここに来た日からずーっと、ドキドキしっぱなし。


 大きな荷物を抱えて、この寺の前で突っ立ってた。心の準備の深呼吸をしてから裏口のチャイムを鳴らす。

 坊主頭のお坊さんが出てくると思っていた。一ミリも疑わずに。

 出て来た男の人を見てびっくりした。しばらく目をまん丸にして見つめてしまった。

 所々はねている栗色の無造作な髪の毛。これもまた栗色の、どこか気だるそうでそしてとんでもなく色っぽい目。ゆるく着た赤茶色の甚平からのぞく鎖骨のくぼみ。


 一瞬でやられた。

 彼はあまりにもあたしの好みにあいすぎていた。


 そんな場面を思い出しながら、ちゃぷんと風呂の水を掻く。

 そろそろ風呂出ないと。陸斗さんを待たせてしまう。

 陸斗さんが洗面所にいないか、またはこようとしていないかに細心の注意を払ってそっとドアを開ける。脱衣所と洗面所は繋がってるから、うっかり陸斗さんと出くわして見られでもしたら……最悪どころじゃない。想像するのも怖い。


 すばやく服を着込み、陸斗さんに出たことだけ告げるとささっと自分の部屋に戻った。

「出ました」だけ言うのにも、深呼吸と勇気出すので十秒はかかる。


 陸斗さんはあまり喋らない。

 あたしと今までした会話を全て言っていっても三分かからないだろう。必要最低限というかんじ。

 しかし、冷たいのではなく適度な距離感を保っているというふうに感じる。陸斗さんの沈黙はやわらかい。2人黙って同じ空間にいても、何か喋らなければ気まずいということがない。それはとても楽だった。

 まりにとっては、陸斗さんは完璧だった。恋してしまったことを除けばだが。


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