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恋の季節

 春は恋の季節。

 なんて誰が言ったんだろう。

 無知な私は言葉だけ知ってるくせに、由来とかなんかが分からない。

 調べ方だって一つ覚えだ。気になったらインターネットで検索する。

 時々、退屈だからたまには違う知り方があればいいのになんて思う。

 彼は、知ってるかな?


 たまにしか利用しない図書館の閲覧室は、東向きの大きな窓から入ってくる陽光のせいか、温室みたいに暖かかった。

 頬杖をついて広げていた図鑑をぼんやり眺める。

 街路樹で見かけた青い鳥の名前を知りたくて野鳥図鑑を借りたのに、ちっとも見る気がしない。

 思い立ってインターネットで検索しないで、たまには本で調べようとここまで来たが、もうこの芝生の広い庭がついた綺麗な図書館に来て、思い通りの本を借りただけで疲れてしまっていた。

 窓から噴水で子供がはしゃいで水遊びしているのが見える。

 側で苦笑している父親の髪型や眼鏡の形が、なんとなく彼に似ている気がしてどきりとした。

 一瞬、本当に彼かと思った。

 よく見たら違って、ほっとしてしまう。

 彼はもう少し背が高いし切れ長の目をしてる。奥さんと思われる女性と目が合いそうになって慌てて視線を逸らした。

 そういえば彼は結婚とか、恋人がいるんだろうか。そもそも年齢は? 思いついて溜息をついた。

 左手の薬指に指輪をしていたかどうかですら覚えていない。

 胸がずきりと痛んだ。

 彼のことを名前しか知らないくせに、いつでも姿を探して、恋、みたいなのをしてる。

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