少女の日常
初投稿です;;
少しでも多くの方に読んでいただければ、と思います。
目が覚めると、そこは宇宙だった。
辺りにはたくさんの星がビーズのように散りばめられ、キラキラと光る様はなんとも言えない美しい光景だった。
言葉にしてしまえば崩れてしまうような予感さえする。
ゆっくりと自らの体を起こし、そっと宙を歩いてみる。
――――あぁ、懐かしい。
何故そう思ったかは分からない。
しかし、私はその感覚をひどく懐かしく感じた。
足の裏から伝わる、冷たくも温かくもない、不思議な感覚を。
しかし次の瞬間、その美しい光景は消え、一変して恐ろしい闇が私を飲み込む。
――――何…………?
『光……の花…………探せ!……あの方に……唯一の…………候補』
頭に響くその声は、酷くしゃがれていて恐ろしいものだった。
――――光の……花嫁?
何故だ。
私はその言葉を知っている。
テレビで聞いたとか漫画で読んだとかそういうレベルではなく。
自分に関わる重大で最大の――――――――!!
ピピピピピピピピピピピピピピッ――――!!!
「?!」
高らかに鳴った電子音で私は目を覚ます。
針は時刻5時53分を指していた。
(今日も、早起きできたー)
内心で喜びながら、まだ肌寒い空気を振り払うかのように自らの体を勢いよく起こし、そのまま新しい制服に着替えるため寝間着を脱ぐ。
「うーー……さむ……」
春、とは言ってもまだまだ4月上旬。
桜の花も蕾が多い時期だ。
鮮やかな赤いリボンを綺麗に結ぶと、鏡を見てどこかおかしいところがないかチェックする。
「うん、きっと、大丈夫だよ」
鏡の自分に向かってそういうと手元にあったブラシで少し癖のある自らの髪を梳かしていく。
寝癖を何とか直すと彼女は自らの部屋を出て、そのままリビングのある一階へと向かう。
リビングに着くと、テーブルの上に無造作に置かれたリモコンを手に取り、テレビをつけ、ニュース番組にする。
『……市の今日の天気は曇りのち雨でしょう。お出かけの際には傘を持ちましょう』
見慣れたニュースキャスターが、訓練された声音で言う。
「……雨かぁ……」
そう呟きながら、ソファーに深々と座り込み、しばらくテレビをぼーっと見つめる。
『さて、次のニュースです』
画面に男性が映し出され、真面目な表情で場の雰囲気を切り替える。
『昨夜未明、……市葵通りで女子高校生が、何者かにより刃物で切り付けられるという事件がありました。犯人はまだ分かっておらず少女は重体です。警察は――――』
(この近くでそんなことが……)
しばらくその話題でニュースが続く。
『被害にあった少女は、観和田高校一年、針崎 椎埜さんで―――』
「っしぃちゃん?!」
画面に映し出された少女は、間違いなく中学で同級生だった少女だ。
少し短めの髪に気弱な雰囲気の少女。
とても優しい子だ。
「な、んでしぃちゃん……」
同じ高校に行こうと約束し、今日やっとまた彼女と再会できると楽しみにしていたのに。
「……………………………」
しばらく沈黙して身動き一つしなかった少女は、急に立ち上がると、そのままキッチンに向かう。
(私が悩んだってなにも変わらないんだからっ!)
自分にそう言い聞かせ、冷蔵庫のものを漁る。
「んーー……まぁ適当でいいか」
適当、とは言ったものの、その手つきは手慣れたもので、女子高校生とは思えないほどの速さで朝食を作っていく。
「できた」
数分で目玉焼きを作り、お皿に乗せると、同時にトースターに入れていた食パンを取出し、新鮮なトマトを一緒に盛り付ける。
そう、この家に彼女以外の人間はいない。
一之瀬 雫乃晴の両親は、数年前、事故で亡くなったのだ。
誤字脱字などありましたら申し付けください。