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第1話、知らない森

「…んっ」


 風が木の葉を撫でるような音がして、少し重 い瞼をゆっくりと開ける。


「なに、ここ」


 何とか体を起こして周りを見回すと、辺り一面草と見上げても先が見えない太い樹木が雑草のように生えていた。


 頭が回らないのか、特に驚きもしなかった。けど、私はこの光景に見覚えがない事だけは、たしかに覚えていた。


 とりあえず何とか力の入らない足で立ち、もう一度周囲を見渡す。薄暗い緑がかった視界だけが、私の周りを囲っている。よくよく遠くの方を見ると、不思議な何かが勢いよく走っていたが、特に何も感じなかった。恐怖も焦りも、不安も何一つとして私を動かす原動力にはなら無かった。すると、私を動かすかのように少し強めの追い風が、私の背中を押すように吹いてきた。


「うっ、ん?」


 少し肌寒さを感じ、下を向いてやっと気がついた。私は今、何にも守られていなかった。靴も無ければ服もない、非常に不便。小さな草がくすぐるように動くせいで、足裏がチクチクして少しモヤモヤする。


「寒い、チクチクする……」


 それが嫌で歩こうとすると、何かが私の背中を押してきた。ゆっくり後ろを振り返ると、変な機械が私の顔を覗いている。


「?」


「ピ?」


 その機械は『ピ』という機械音だけを響かせた後目の前に移動し、私のお腹をさするように擦っている。不思議に思って、自分のお腹を確認すると、少しだけ傷ついていた。切り傷と言うかなんというか転んだ時にできるような、そんな軽い怪我だった。


 私の怪我を摩っているような動きをしている機械を、そっと抱きしめる。少しだけサラサラしていて、熱が籠っているのか微かに暖かい。ほのかに体の中にあるざわつきが、少しだけ落ち着いていく気がした。


 すると機械はそれが嫌だったのか、私の胸元から離れていってしまう。その機械は少し離れたあと、私の目の前で浮遊して少しだけ強い光を放った。急に強い光を発したせいで、反射的に私は目を瞑ってしまう。


 瞼越しに光が弱くなっていくのを感じた後、ゆっくりと目を開いた。機械は未だ目の前に浮遊して、瞳らしき光をこちらに向けている。


 そこで、違和感を感じた。さっきまで軽かった体に、何かが触れて多少の重さを感じて、なおかつ足のチクチクも無くなっていた。疑問に思い下を見ると、服を着させられていた。


「白い…ワンピース?」


 それは白いワンピースとも言えないような、不思議な形をした服だった。露出した肩を守るように真っ白の羽衣のようなものが着いていて、何故か左肩当たりが微かにヒビ割れて黒ずんでいた。ワンピースの下の方は素肌だったためか、少しだけ肌寒かった。


 服を着させてもらった所で、改めて辺りを見回すと何も無かった。ここにいると不気味な感じがして、そのまま移動することにした。


 ロボットを横目に森の中をひたすら歩き、とりあえず目だったものがないかを探した。特に目立ったものはなく、私よりも背の高い木々が生い茂っているだけだった。


 もうどのくらい歩いたかも分からない、足に疲労が溜まって来た頃、ようやく視界が開けてきた。


 そこは辺り一面コンクリートの建物だらけで、全ての建物に根が張り、荒廃していた。


「はぁ、疲れた」


 もはや言葉にもならないような声を吐いて、そこら辺に設置してあったベンチに重たい腰をかける。ロボットは私の膝の上に乗っかり、休憩するかのように光が消えていった。


 背もたれに体重をかけて、そっと上を向く。空は雲一つない快晴で、植物の根が絡まった建物の間を抜けていく風や、それで靡く葉の音が荒廃した街中に響いていた。そのそよ風が私の髪をなびかせて、疲れを忘れさせてくれる。


 私は光の無くなったロボットを抱きしめながら、ベンチに横になった瞬間、眠気が私を遅い抗う暇もなくそっと眠りに落ちた。


 ━━━━━━━━━━━━━━━


「ピ」


 何処からが機械音が聞こえてきて、目を覚ます。空は少し赤みがかって、街中は薄暗くなっていた。


「さすがにちょっと寝すぎたかも」


「ピ」


 肯定とも否定とも取れない曖昧な返事をするロボットを横目に、お腹の辺りに違和感を感じた。モヤモヤして気持ち悪いような、ちょっと吐きそうな、変な感じ。


「お腹減った…」


 そこで私はベンチから立って、森に向かう。一応街には向かおうとしたものの、食料は無いとなんとなく判断したから行かない事にした。


 夕暮れの森の中は街中よりももっと薄暗くて、所々葉の隙間から入ってきたであろう光が多少適当な所を照らしている程度だった。そして森に入ってから背中の方に視線を感じていた、ロボットでは無い別の何かの視線を。けどここは森だし、そりゃ動物の一匹程度いるだろう、ということで無視することにした。


 そしてそこから更に歩いていると、機械が急に何処かに飛んで行ってしまった。最初は見守っていたものの、距離が離れていくに連れて何かに押しつぶされそうな予感がして、慌てて追いかける。


 機械と徐々に距離を詰めながら、生い茂る木々の間を抜ける。そしてそこにいたのは、私よりも幼そうな、白髪が特徴的な少女だった。

これはカクヨムで投稿しているものを1日遅れで投稿してるものになります。

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