次の世代
子供について思いを馳せるとみせかけてイチャイチャしてるだけ。
ある日の政務の合間、何気ない席で問われた。
「侯爵殿はそろそろ世継ぎの事をお考えで?」
「まだ公務が道半ばでな」
アルベルトは一言だけ答えてその場をやり過ごした。
屋敷に戻る馬車の中、ふとそのやり取りが思い出されアルベルトは考える。新しい命が生まれるということ。
最初にリリアの顔が浮かび、孤児院で出会った子供達の笑顔が想い出された。
リリアに似た子がいたら・・・・・・無邪気で、よく笑うのだろうか?
自分に似た子なら・・・・・・・不器用で口数が少ないかもしれない。
そう考えて思わず微笑が漏れた。
だが、そこにかつての自分が重なり胸が重くなる。
あの日消えた母の温もり。遠ざかっていった父の背中。同じ想いを子に味わわせてしまう日が来るのではないか。
暗く沈みかけた思考の底でリリアがその手を掴んだ。
「どんな苦難が訪れようと私がお側におります」
強い意志で紡がれた言葉がアルベルトを引き上げる。
未来のことはわからない。だがリリアと共にあれば乗り越えられるように思えた。
その夜、アルベルトはリリアに尋ねた。
「子供を欲しいと思うか?」
「子供・・・・ですか・・・・・」
リリアは真剣に考え込む。
脳裏に浮かぶのはあの日子供達に戸惑いながらも優しい眼差しで見守るアルベルトの姿。
もし子供ができたら——
その姿を毎日見られる!?
リリアは興奮のあまり口元を押さえた。
「まだ・・・・・・・心の準備が・・・・・・」
その様子にアルベルトは考える。
出産がリリアに大きな負担をもたらすかもしれない。それを乗り越えたとして、今までと生活が変化することは避けられない。心の準備は十分に整えておくべきだろう。
「そうか」
少し浅はかだったかと自省し、アルベルトは静かに首肯した。
「アルベルト様はいかがお考えですか?」
何度も鼻から血が溢れてきていないか指で確かめながらリリアが問い返す。
「私は——」
アルベルトは慎重に言葉を紡いだ。
「リリアとの子が生まれてきてくれたら嬉しい」
言葉を切るとリリアの前髪を払い、瞳を真っ直ぐ見つめた。
「しかし、そう急ぐことではあるまい。今はまだ、二人の時間を楽しむのも良いだろう」
リリアの顔から感情の全てがスッと消えた。
気づいた時には唇を塞がれていた。短い息継ぎの間に何度も口付けが重ねられる。ようやく離れた頃には流石のリリアも息を切らしていた。
「たっぷり楽しみましょう」
リリアはアルベルトの首に強く腕を巻き付けると、頬を紅潮させ満面の笑みを浮かべた。
胸焦がれる影でのリリアの決心が実を結んでいる様子とエピローグでチラ見せするに留まったリリアのヤバさが書けて満足。




