糸は切れて エピローグ
告白から幾日か後。
屋敷を訪れたアルベルトは応接室でレオン・カスパールと向かい合っていた。窓から初夏を思わせる強い日差しが差し込み、庭の噴水の水音が涼やかに響いている。
「そうか。ついに、真の意味で夫婦になったわけだ」
ことの顛末を聞き終えたレオンは感慨深げに呟く。しかし次の瞬間、俯いたかと思えば肩を震わせ、堪えきれずに笑い出した。
「いやはや、侯爵様も随分と人間らしくなったものだ」
「・・・・・・人をからかうな」
眉を顰めるアルベルトにレオンはさらに笑いを大きくする。ようやく笑いが落ち着くと、深く息をついて真顔に戻った。
「安心しろ。端からリリアを君から引きはがすつもりなど毛頭ない」
「・・・・・・そうなのか?」
思わず問い返すアルベルトにレオンは口の端を上げて言う。
「そのつもりなら、名前で呼べなどと促すわけがないだろう」
「・・・・・気に入った頃にその手から取り上げるのが、お前の趣味かと思ったが」
「ひどいな。そこまで悪趣味じゃないさ」
「それはどうだかな」
日頃の行いの数々を思い浮かべアルベルトは肩を竦めた。
談笑の最中に扉が叩かれた。
「そろそろ旦那様をお返しいただきたいのですが」
静かな声と共にリリアが部屋に入ってくる。アルベルトの背後に立ち、ソファ越しに彼の肩へ左手を添えた。その指にはめられた指輪が光を受けてきらりと輝く。
「これはこれは・・・・・・」
レオンは唇を舐め、面白そうに目を細めた。
「失礼しました、ヴァルグレイ夫人」
芝居がかった口調で一礼すると、レオンは立ち上がりドアを開けて二人に退席を促す。
すれ違いざま、彼はアルベルトに小声で囁いた。
「気をつけろ。あれは手強いぞ」
「百も承知だ」
アルベルトは口の端を上げ、にやりと笑って返した。
一連の物語としてはこれで終わりです。
色々裏のあった契約婚が真実に変わる、そんな物語を納得いく形で書けたと思います。
リリア、アルベルト、レオンを少しでも好きになってもらえていれば幸いです。
物語のその後として2人の甘い話や番外編をいくつか用意しているでそちらもお楽しみいただけたらと思います。
読んでくださりありがとうございました。




