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日影のリリア  作者: 篠原
本編
25/30

今ふたたびの告白

長く国を覆っていた不穏の雲が徐々に晴れつつあった。エルンハルト派の残党が鎮圧され、王都を穏やかな風が吹き抜ける。


アルベルトは書斎の椅子に深く身を預け、久方ぶりに大きく息を吐いた。机の上には事後処理の報告書が堆く積まれ、天板を覆い隠していた。


「・・・・・・終わったのか」

その呟きには安堵と空虚が入り混じっていた。

ようやく肩の荷が下りた——はずだった。

だが別の影が差す。


リリアとの契約。


護衛としての彼女の任務は、この内乱の終息と共に終わりを迎えるだろう。そうなればもう彼女がこの屋敷に、アルベルトの傍にいる理由はない。胸を締め付ける喪失感にアルベルトは深く息を吐いた。


数日後。

夕日が屋敷を朱に染める頃、アルベルトは書斎にリリアを呼び寄せた。彼女はいつもの変わらぬ凛とした姿で一礼し、静かに立つ。

初めてリリアが屋敷にやってきた日が思い出された。

「・・・・・・・リリア」

少し間を置き、アルベルトは言葉を選ぶように口を開いた。

「夜会での暗殺に端を発した内乱は終息を迎えつつあり、お前の役目もじきに終わるのだろう」

リリアの顔に困惑と哀しみの入り混じる色が浮かぶ。

「お前がこの屋敷に来た日、私は情愛を交わすつもりはないと言ったな」

リリアは答えずただ言葉の続きを待っている。

「あの日の愚かな私を許して欲しい」

アルベルトは深く息を吸い込み心を落ち着けると、リリアの前に片膝をつき彼女に手を差し伸べた。

「リリア、お前を・・・・愛している。この先も私と共に過ごしてはくれないだろうか」


少し震えるその手にリリアは自らの指を重ねた。


「教会にあなたと出向いたあの日より——」

指先にそっと力が籠る。

「お慕い申し上げておりました。アルベルト様」

その微笑みは月光のように穏やかで麗しく、彼女の姿は誰よりも美しく見えた。

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