今ふたたびの告白
長く国を覆っていた不穏の雲が徐々に晴れつつあった。エルンハルト派の残党が鎮圧され、王都を穏やかな風が吹き抜ける。
アルベルトは書斎の椅子に深く身を預け、久方ぶりに大きく息を吐いた。机の上には事後処理の報告書が堆く積まれ、天板を覆い隠していた。
「・・・・・・終わったのか」
その呟きには安堵と空虚が入り混じっていた。
ようやく肩の荷が下りた——はずだった。
だが別の影が差す。
リリアとの契約。
護衛としての彼女の任務は、この内乱の終息と共に終わりを迎えるだろう。そうなればもう彼女がこの屋敷に、アルベルトの傍にいる理由はない。胸を締め付ける喪失感にアルベルトは深く息を吐いた。
数日後。
夕日が屋敷を朱に染める頃、アルベルトは書斎にリリアを呼び寄せた。彼女はいつもの変わらぬ凛とした姿で一礼し、静かに立つ。
初めてリリアが屋敷にやってきた日が思い出された。
「・・・・・・・リリア」
少し間を置き、アルベルトは言葉を選ぶように口を開いた。
「夜会での暗殺に端を発した内乱は終息を迎えつつあり、お前の役目もじきに終わるのだろう」
リリアの顔に困惑と哀しみの入り混じる色が浮かぶ。
「お前がこの屋敷に来た日、私は情愛を交わすつもりはないと言ったな」
リリアは答えずただ言葉の続きを待っている。
「あの日の愚かな私を許して欲しい」
アルベルトは深く息を吸い込み心を落ち着けると、リリアの前に片膝をつき彼女に手を差し伸べた。
「リリア、お前を・・・・愛している。この先も私と共に過ごしてはくれないだろうか」
少し震えるその手にリリアは自らの指を重ねた。
「教会にあなたと出向いたあの日より——」
指先にそっと力が籠る。
「お慕い申し上げておりました。アルベルト様」
その微笑みは月光のように穏やかで麗しく、彼女の姿は誰よりも美しく見えた。




